裏話 驚愕の成績!
学園の入学式が終わり、あれから早3か月。今はとある人物が自室にて、驚愕の事実に言葉もなくなる勢いで驚いている。
その人物とは、アンドレアス王その人である。いったい何に驚いているかというと、
「アレンめ、なんじゃこのふざけた成績は……ほとんどの教科が満点かそれに近い点数で、そうではなかったとしても80点台後半から90点前半とは。前々から賢い子供だとは思っておったが、ここまでとはの。あれから余裕で主席を維持しておるのも納得だ」
「おっしゃる通りでございますね。この成績はすさまじい……比較的取れていない80~90点台の教科も学年平均が70点台前半から中盤にかけてがほとんど。まさに断トツの成績ですね」
「だが、それだけではない。あのものに追随している者の成績も低下するところを知らんからの。まるでアレンを追いかけているような感じだ。実際、アレンの幼馴染であるツェーザルもぎりぎりではあるが次席を維持し続けておる。ここから下がとても熾烈じゃな。ブラームス準男爵家の次女エレオノーレ、グスタフはベーレンドルフ公爵家の息子か。ほかにもブラント男爵家の長男カールにクリューガー騎士爵家の次女、ベティーナ。平民の家の子のダミアン。この者たちの成績争いが激しいな。ツェーザルもその中にいるから気が抜けん。少しだけ飛び出ているのがアレンという構図だな」
「これほどまでに成績頂点の者たちの成績争いが激しいのは学園始まって以来片手で数えられる程度では?」
「ああ、だがこれは喜ぶべきことだ。我が国は平民だろうが、貴族だろうが、王族だろうが、常に優秀な者を求めている。家を継ぐだけの出来損ないはいらんからの。わしの息子も今は卒業資格のある二年生だが、ずっと精進してくれておるよ」
「何とも素晴らしきことです。これからもしばらくは王国も安泰のようですね」
あの小試験から2か月たったわけだが、それからというもの、特等教室1のメンツは常に熾烈な成績争いをしている。はっきり言ってほかのクラスは全くと言っていいほどついていけてない。
なぜならその学年成績上位陣に追随しているのも特等教室1のメンツだからだ。間に入りこめているほかのクラスのメンツは本当に数えるほど。
おそらくアレンやほかの上位陣の姿を見て特1教室のメンバーも触発されているのだろう。
「とにかく定期的に結果が出たら報告してくれ。何か進展があった時もだ」
「あ、でしたらこの報告が、最近学園がまとめて送ってきたものです。ほかの者の成績も含め小試験の結果発表はすでにしてありますが、教員用に正確にまとめ終ったのはつい数日前だったようで。かなり忙しかったみたいです」
「ふむ。どれどれ……何ぃーーーーー! この世代だけで竜魔導師候補3人!? アレンとツェーザルだけではなかったのか?」
「どうやらグスタフ様も炎の上位竜に認められていたそうです。実技試験の時の監督役の教員が感知魔法で視認したと」
「よりによってあの家の息子がか……我ら側についてくれそうにないのう。ほかの国はどうか知らんがうちの貴族連中は仕事以外ではほんとにまとまりを見せんからのう」
「いえ、それがどうやら最近はよくアレン様やほかにもアレン様と仲のいいご友人の方々ともそれなりにいい関係が築けているいるそうです。もしかしたらグスタフ様の中だけで何か心変わりのきっかけのようなものがあったのかもしれません」
「思い浮かぶのは……やはりアレンか」
「わたくしもそう思います」
全くどこまでもすごいものだ。あの狂犬貴族の息子を、しかも一番洗脳教育を受けていそうな長男を手なずけるとは、もはや人心掌握の力ではあ奴にとっくの昔に負けているかもな。
だが、それは悲しむべきことではない。むしろ喜ばしいことだ。このご時世、悪魔や天使が暴れだしているのだから人類は協力し合うべきなのだ。
「報告はしかと受け取った。これからもその調子で頼む」
「かしこまりました」
アンドレアス王が報告を受けていたのと同時刻、国立師団員育成学園の職員室にて。
「いやはや全く、今年は粒ぞろいの生徒が多い、どころか多すぎますな!」
「そうですね。成績上位陣の生徒たちの成績が規格外なだけで、他の生徒たちもかなり彼らに引っ張られて成績を上げてきていますよ」
「そうだな。あの上位陣の中で唯一主席に追いすがりそうで、ずっと次席を維持し続けておるツェーザル・アデナウアーも気を抜けば一発で三位以下に足をすくわれるだろう。グスタフ様の成績もそれだけすさまじいのだ。ふつう入りたての生徒が応用ばかりで難しい選択科目であれだけバンバン80後半や90点台をたたき出すなんて不可能に近いからな」
「然り、どれだけお家で受けた教育が良かろうとも、そこで培える知識はせいぜい一般的な必修科目の基礎知識、あるいは優秀な家で剣術や魔法の腕を磨いておる者がそれらに該当する科目で点を取れるくらいだ。いきなり応用法学や軍略学など初見の教科でたたき出す点数ではないな」
「まあ、なんにせよ優秀な生徒が入ってくれるのは大歓迎だ。君たちもわかってるだろうけど、試験では常に感知魔法を発動させている我らの目をごまかして不正をするなんて不可能だ。つまりそれが示す答えはただ一つ。彼らが純粋に優秀だということ。だったら僕たちのすることは一つだけだ。その頑張りに報いて最高の教育を施してあげることだ」
学園長たるその人の言葉に異論を唱える者はいない。皆答えは最初から分かっていたのだ。
「では引き続き彼らを全力で支援していくように! 以上、解散!」
こうして、アレンたちの知らないところでいろんな人たちに自分たちがすごいことを認められ、期待されていたのだった。ただ彼らはこのことを知らない。
故に彼らはただ必死にライバルに負けないように努力し続け、いつしか学園史上最高の世代といわれるようになる。
今回は小試験が終わった後の裏話です。完全な番外編というわけではないですが、お楽しみいただけたら嬉しいです。




