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生誕!

 智が女神セオーティタの依頼を受け入れ、実際に転生を決意した後、とある家に新たな命が芽吹いた。


「んぎゃぁぁ! んぎぁぁ!」

「奥様! 生まれましたよ。元気な男の子です!」


 出産の経験がある使用人が手伝ってくれたことにより、無事に子供が生まれた。この世界では基本的に助産師などはおらず、貴族の出産は経験のある使用人に手伝ってもらうのが普通である。平民たちは、近所の出産経験者に手伝ってもらうのが一般的だ。そして部屋の外で待っていた者たちも続々と入ってきた。


「やったな、でかしたぞ! アンネ! 本当によくやってくれた! お疲れ様」

「いいえ。あなた、私は貴族の妻として当然のお仕事をしたまでですわ。無事に生まれてきてくれてよかった」


 そう。この日ある貴族家に男の子が誕生した。家名はベッケラート男爵家。爵位はそれほど高いわけではないものの、この国はかなりの大国なので貴族の爵位の種類も多い。高位貴族は大公家から下位貴族は騎士爵家までかなりある。そんな中での男爵家だ。下位貴族でもそこそこの地位といえる。しかもいろんな功績も残し、古くから王家に仕えている。

 そんな家にこの日、待望の第一子が誕生したのだ。


「そんなことはないよ、アンネ。貴族は子孫を残すことが義務みたいなものではあっても、それが簡単なことかどうかは別問題だろ? 君はよくやってくれたよ。ありがとう」

「あなた……。そうですね。ではこの子を立派な貴族に育て上げましょう!」

「ああ、そうだな」


 こうして、新たに歴史ある男爵家に長男として生まれた男の子は貴族嫡子としての教育が施され、成長していくのだった。



「ただこれからどういう風に育てていくかが問題だな」

「? 普通に元気な男の子で立派で賢い子に育てればよいのではなくて?」

「その方針自体は何も間違っていない。優秀な子に育てるのはわれらの当然の義務だ。悩みはほかにある。ほかの家でも最初は少し迷うが、様子を見て決めるらしいのだ……」

「それはどういった悩みですの?」

「ああ、それがだな……」


 その後この家の主であり、現ベッケラート男爵であるエトヴィンは妻に悩みの内容を説明した。その内容とはこの国の、いやこの世界の貴族ならだれもが考えること。それは子供を文官として育てるか、騎士、つまり武官として育てるか、というものである。ただ、それだけならば別に大きくなるまで育てて得意な方を学ばせればいいのではないかと思うだろう。しかし、ここからが悩みの本番と言える。文官は勉学を真剣にさせれば誰でもなれるものであるため、そこまで深く悩むほどのものでもない。当然、さぼったりすれば慣れないこともあるが、そこは本人次第といったところだ。

 問題なのは武官の方で、種類がかなりあるのである。魔法騎士、騎士、魔法師、そして竜魔導師。どれも生半可な努力でなれるものではないが、その中でも竜魔導師は別格と言える。端的に言えば、竜に認められた者しかなることができない、正真正銘の最強職である。貴族は皆、一度は憧れるのだ。


「そんなこと今はまだわかりようもありませんわ。確か魔法属性の適正判断の儀式は6歳からでしたよね? そしてその時に竜に認められるかも決まると」


 この世界の魔法には属性という概念が存在し、それぞれ炎、水、風、雷、氷、大地とある。これらが、自然属性と呼ばれている。ほかには特殊属性と呼ばれるものが有り、その中の派生に無属性といわれるものがある。これはいろんな種類の魔法、例えば身体強化、回復、結界、転移など様々なものがある。

 そしてもう一つの派生が上位属性と言われるものである。それは竜に認められずとも強力な力を発揮する属性、光と闇である。そして竜は特殊属性以外の属性に力を与える、といわれている。これは竜には身体強化などを専門に使う者はいないからだ。どんな魔法が使えるようになるかは人それぞれである。


「その通りなんだがな……。それに幼いころから魔法を教えれば使えないこともない。才があればな。それさえあれば魔法関連の職には確実につける。ただ……」

「竜魔導師は別ということですね。でもやはり今考えても仕方のないことですわ。わたくしもものすごく興味はありますけど」

「それもそうか。ならばとりあえずは6歳になってくれるまで頑張って育てなければな」

「ええ。まずはそこからですわ」


 そこで二人の話し合いは終わった、と思われたその時、


「ドンドン!!」

「なんだいきなり騒がしい。誰だ~?」

「私だ! エーヴァルトだ! 生まれたんだって!?」

「エーヴァルトか。来てくれたんだな。ありがとう」

「いいってことよ! というよりも、報告があるんだ! 何とうちも生まれたぞ!」

「なんだって!? すごいじゃないか!」

「まあ! それはものすごい朗報ですわ! ではわたくしたちの子とそちらのお子さん、同世代ね。今日はなんて素敵な日なんでしょう。ねえあなた?」


 そう。今日はほんとにめでたい日である。エトヴィンとしても、まさか仲良くしている知り合いの貴族も同時に出産とは思っていなかったため、今日は本当に記念すべき日と言える。故に、エトヴィンは宴を開くことを決める。


「そうだな。こんなにめでたい日はない! 今日は盛大に祝うぞ! 20年物のヴァレナがあったはずだ! ほかにもおいしい酒はある。たくさん食べて、飲んで、楽しもう!」

「いいなそれ! 俺もいくつか上物を持ってくるぜ! ただ……」

「ええ。わたくしは体調のことも考えて、度数がすごく弱いお酒少しだけいただきますわ。あまり飲まない方がいいかもしれませんけど、飲食が全くできないほど体調が悪いわけではないですから」


 実はアンネもエトヴィンも大のお酒好きである。ほんとはもっと安静にしておいた方がいいのだろうが、この世界の女性は出産の後もすぐにテキパキ動き始めたりする。

 回復魔法があるのもあるだろうが、魔力の影響か女性自身がものすごく丈夫という面もある。そしてそんな中でもアンネはエトヴィンとともに魔法の才にとても恵まれていた。

 エトヴィンは普通よりも多い魔法属性適正と優れた記憶力による幅広い魔法の知識、それなりに多い魔力量。

 アンネは記憶力はエトヴィンほどではないがかなりの魔力量を保有しており、魔力に関してはエトヴィンの上をいく。そんな二人だからこそ怪我などはどうしようもないが、体が頑丈すぎるためか病気などとは基本無縁だ。



「そうかでは後で念のために回復魔法もかけてもらっておくんだ」

「ええ。承知いたしましたわ」

「よし! では準備のため俺はいったん帰るぞ」

「ああ。わざわざありがとうな」

「気にするな」


 ちなみにエーヴァルトの家はベッケラート男爵家と同じ爵位だ。本名はエーヴァルト・アデナウアー男爵である。ベッケラート家と同じで爵位こそ高くはないが、エトヴィンやエーヴァルトが治めている地域はほとんどが準男爵領や騎士爵領だ。

 なのでここら辺では彼らが一番格上となり、そこそこの領地を共に切磋琢磨しながら治めている。今日は突然の訪問のため、近場の宿屋を紹介して泊まってもらっていた。

 だがそこであちらの奥方にも陣痛が来たようで、同時に出産するという、なんとも奇跡的なことが起こってしまったのだ。


「さあ、アンネ。我々の生活はこれから忙しくなるぞ。だが二人でなら乗り越えられる。優秀な使用人たちも常にいてくれる。共に頑張っていこうな」

「わたくしは貴方の行くところならどこへでもお供いたしますわ。そしてこれからもあなたの傍で支えとなれるよう努力する所存ですわ」

「ああ。これからもよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます。そうですわ、この子の名前も決めなければいけませんわね。舞い上がってしまって頭から抜けていました。全く……出産初日から何をやっているのかしらわたくしは」

「いや、そう落ち込む必要はない。名前は既に決めてある。女の子だった場合も決めていたが、今回は男の子だからな。あの名前で決まりだ」

「なんと! どんな名前ですの?」

「ああ。名前は……アレン。アレン・ベッケラートだ!」


 かくして、ベッケラート男爵家の忙しい日々は始まった。

少し両親の話を深く書きすぎましたが、これからまた主人公の登場です。面白いと思ってくださった方はブックマーク、評価をしていて抱けると大変うれしいです。これからも頑張りますので、よろしくお願い申し上げます。

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