実技試験、団体模擬戦!
初登校から早くも一か月が過ぎようとしていた。ここ最近はなかなかに忙しかった。まず必修授業が魔法学基礎、歴史、算術、国内・世界地理、法学基礎といったもので、必修だけでかなりのものだ。
ちなみに二週間たった時点で必修授業はさっそく第一回小試験が行われた。かなり良かったと思う。地理と法学基礎以外は満点だった。地理に関しては97点、法学基礎が難しく91点。ツェーザルは算術が苦手みたいで82点くらいかな。それ以外は僕と似たようなもんだった。エレオノーレは歴史が苦手みたいで87点。それ以外は以下同文。
まぁ苦手と言っても80以上取ってるんだ。知識をちゃんと習得すると言う意味では問題ないどころか、十分すぎると思う。抜かれないように頑張らないとな。
他のみんなは結構苦手科目とかが目立ち、なぜか上位三位までは僕ら三人が独占してる。そして気になるグスタフは4位だった。すごいけど本人はエレオノーレに負けたことが相当悔しかったのか、試験返し終了後速攻で寮に戻ってしまった。
「それにしてもアレン、君は本当にすごいね。地理と法学で2つとも90点台とは、正直言って意味が分らないんだけど」
「そうですわ。わたくしもツェーザルさんもその二つは80点台に乗っかるので精一杯でしたのに。どうやってそんなに勉強時間を取れましたの?」
「そんなに特別なことはしてないよ。僕はそこそこ記憶力が良いみたいでさ、それのおかげかな。それ以外に関しては寮で相当勉強してたから、問題なかったかな。二人も苦手科目以外そんな感じでしょ?」
「そうだね。算術はあまり好きではないね。でも必要な知識だからやっているって感じだ。法学は単純に難しすぎたし、地理に関しては覚えることが多すぎる」
「そうですわね。わたくしも歴史はあまり得意ではないですけど、必要な知識ですから。それ以外はツェーザルさんと似たような感じですわ」
「そうだね。まあ、とりあえず最初の山場は通り越したんだ。あとは一週間後の一か月たった時点での選択科目の小試験だね」
そう。一難去ってまた一難とはまさにこのこと。せっかく必修の一回目小試験が終わったと思ったら、今度は選択科目だ。ちなみに僕が選んだのは、魔法具学、魔法学応用、剣術、軍略学、応用礼儀作法だ。かなり多いと思った人もいるだろうが当然だ。僕は受けられるだけ受けているからだ。魔法具学は楽しそうだったからね。
選択科目はほかにもたくさんある。ただ一年で学べる単位数に決まりがあり、他の応用法学や上級地理、上級歴史学などは限度を超えているため受けられない。
なので他は二年生に回す必要があるので、学びたい人は卒業資格を取得しても二年生になってから授業を受けに来る感じだ。僕は応用法学と上級地理、応用軍略学、この三つは受けに来ようと思っている。単位は勝手に取れるけど、知識は勝手に増えないから。ほかの選択科目は受けないつもりだ。
歴史とかも興味ある人に解明などを任すよ。僕にはこれが限界だ。それに勉強だけにかまけていられないからね。訓練もあるし、貴族としての仕事も少しずつやらないといけない。
「そうですわね。必修は高得点をとって当たり前みたいな風潮がありますものね。問題はより難しい選択科目ですわ」
「そうだね。次が本当の勝負だよ。あれからしっかり必修の範囲も復習したし、残るは本当に選択だ」
「そうだよね。必修は家でもやってた知識だから結構簡単だけど、選択科目はほとんどが未知の知識だからね。まあ剣術とかの例外を除いてだけど」
「確かに、剣術だけでもある程度、既習している科目があるのはありがたいよね」
「私でいうと、応用舞踏などでしょうか」
「そういうことだね。多分受けた感じ魔法学応用も大丈夫そうだけど、他がね……」
とまあ、大体試験はこんな感じだ。この後、剣術は僕とツェーザルが独走状態だった。ただツェーザルとの一騎打ち試験では僕が勝って1位はもらった。ツェーザルが2位だ。
そして今は剣術やほかの選択科目もかなりの好成績を収め順調に進み、最終試験の魔法学応用の試験の真っ最中だ。
魔法学応用の担当教授がしゃべっている。
「というわけでこの科目の試験は団体模擬戦です」
そう先生が言ったとたん、みんなざわつき始めた。かくいう僕もそうだ、まさか個人試験だと思ってたのに団体しけだとは。しかも団体での模擬戦ってことは、チームワークとかそういうのも求めてるってことかな? よくわからないけど、とにかく僕は一緒になった人とはしっかり連携をとろう!
「驚くかもしれませんが、これは至極まっとうな試験方法です。そもそもあなた方が目指しているのは師団員、つまりは集団で戦う者の一員です。それなのに個人の力ばかり伸ばしていては大事な時に連携をとれません。もちろん個々人の力も重要です。ある程度一定の力に達した物からすれば、力のないものをいくら用意してきても、森などで自分にたかってくる虫を叩き落とすような感覚でしょう。ならどうすればいいか、答えは簡単です。どちらも鍛えられる教育方法をとればいいのです。それがこの団体模擬戦です」
なるほど、ド正論だな。竜魔導師や上位の魔法、魔法騎士、騎士でも異常な力を持つものとかそういったものからすれば一般兵がいくら集まろうが片手間で掃除完了ってことになるだろう。だが一人だけが強くて周りと連携をとらないのも敵の策略などにはめられて自滅するだけ。
当たり前のことだけど、考えてみると結構難しいな。
「そういうわけで、全員の力を発揮してもらうため、剣術もありとします。理由は剣術にも身体強化や転移、結界などを使って戦う者がいるからです。ではこれから班決めを開始します。呼ばれたものから前に来なさい」
そうして、先生に呼ばれるままに入った班には知り合い0! ははは、結構絶望的。あれから何人か友達はできたんだ。僕が結構有名だったってのもあるだろうけど、それを抜きにしても僕のことを認めて下級貴族だとかで侮らず仲良くしてくれる子も何人かいたんだ。ちなみになぜか女の子が多いのだけど理由は知らん。とりあえず仲良くしてくれるならだれでもOK! けどその彼らまでもいない。
全くの初対面だ。でもなんとかしなきゃ! そう考えていると、
「あ、あの、アレン君だよね?」
何と話しかけてくれる子がいました! もう神、君マジで神! 大好き! ってふざけるのもここまでにしてまじめにやろう。
「うん。そうだよ。よろしくね!」
「う、うん! よかった~。僕実は剣術は無属性魔法が結構使えるから得意なんだけど、それ以外は水しかまともに戦闘で使えなくて……」
「そうなの?」
「うん。だからこの試験乗り越えられるか心配だったんだ……でもなんとかしないと、僕一人でも頑張らないとって思ってたんだけど、やっぱり不安で……心強い人が味方になってくれてよかった」
「そうだったんだね。僕も頑張るから一緒に頑張ろうね!」
「うん! 僕カール、カール・ブラント。ブラント男爵家の長男なんだ。よろしくね」
「うん! 僕はアレン、アレン・ベッケラート。ベッケラート男爵家の長男。よろしく!」
そうやって自己紹介していると、他のメンバーがおどおどしながらこっちを見ている。二人組だ。
「えっと、君たちのお名前を聞いても?」
「あ、えっと僕はダミアンです」
「し、失礼しました! わたくしはベティーナです。ベティーナ・クリューガーです。クリューガー騎士爵家の次女です」
ああ、なるほどびくびくしていた理由がわかった気がする。というかまだエレオノーレ以外にも子爵以下の爵位の家の子がいたんだ。まあ、そんなことよりも、大方僕は騎士爵とはいえ爵位持ちだし、カールは男爵家で本来なら平民のダミアンと最下級貴族の息女だと会話に入れないだろうからどうすればいいかわからなかった、といったところだろう。
「そっか、二人ともよろしくね! 一緒に試験頑張ろう!」
「そうだよ。僕と君たちが仲良くできたように、君たちと身分関係なく接してくれる人は必ずいるから、肩の力を抜いて、ね?」
カールは優しいな。初めて見た瞬間は気弱そうな子だと思ったけど、よく考えてみれば本当に気弱な子なら、即行で話しかけてきたりしないもんね。ただ優しいだけなんだ。いい子過ぎる!……
「そうそう。少なくとも僕は身分で他人を区別したりしない。というよりむしろ、そういうことをする人たちは嫌いかな」
そういうと、二人はとても驚いた顔をした。カールは優しく彼らに微笑みながらも僕の言葉にうなずいてくれている。
「は、はい。よろしくお願いします」
「わたくしも、よろしくお願いします」
「うん! よろしく! じゃあ、まずはみんなの正確な戦闘能力の情報共有と行こうか」
「そうだね、お互いの能力もろくにわかってない状態じゃ連携なんてとれっこないよ」
「わかりました! 俺、あいや、僕は……」
「普通に話してくれていいよ。僕たちは同い年なんだし、僕やカールが身分を気にしないって言ってるんだから、気楽に気楽に」
「う、うん。じゃあ、俺は適性が大地と無属性に関しては結界と回復だけだよ」
へー! 結界が使えるなんてすごい! 結界魔法と転移魔法に関しては空間系ですごく難しい部類に入るんだ。無属性の中にも明確な序列はあるからね。
「すごいじゃん! 結界が使えるなんてすごい才能だよ! しかも大地魔法と合わされば捕縛もしやすいんじゃない?」
お、さすがカールも特等教室の生徒だ。魔法の知識がものすごい。普通一般的な知識しか持たない者ならその回答はすぐ出ない。めちゃくちゃ勉強したんだろうな。僕は光と風以外全部使えるけど水は戦闘ではあまり役に立たないし、回復もアンナほどの力はない。みんなそれぞれ得意分野が違うから結構いい連携が取れそうだ
「わたくしは、無属性は回復魔法ですね。自然属性は風です」
「なるほど結構ばらけてて連携が組みやすいかもね」
「そうだね。僕はみんなもう知ってると思うけど、水に適性があって、無属性に関してはアレンには初めていうね。身体強化と回復、結界かな。アレンは?」
「すごいねカール……」
カールは普通に強かった。多分その辺の騎士より強い。
「えっと僕は適性が炎、氷、雷、大地、闇で、無属性は全部使える。でも、回復に関しては戦闘中に役立つほどではないかな」
と、言い終わった後、みんな絶句してフリーズしていた。それぞれの顔に再生マークがついてて、それを押さないと動かなさそうなくらいに見事にフリーズしている。
そりゃそうか、どうせ隠すのは無理だしと思っていったけどさすがに迂闊すぎた?
「ア、アレン、それって本当?」
と聞かれたので、真剣な顔で、
「本当だよ。それと隠すのは無理だろうから今言っておくね。僕は竜に認められてるんだ」
「う、うそ。いくらなんでもすごすぎない?」
「ちなみに何体の竜が降臨したんだ?」
「わたくしも気になりますわ」
「適性属性全部にだよ」
「「「……」」」
もはや言葉がなくなりましたね。
「と、とりあえず、実際に試験が始まれば魔法は使うし、すぐに信じてもらえると思う」
「はあ~、わかったよ。君がとにかく規格外だってことがね」
「だな」
「ですわね」
何でそこ全会一致なの? まあいいけど。そうやって情報共有が終わった後すぐに試験が開始した。
「それでは、団体模擬戦始めます! 別に1班も倒せなかったところを成績なしにするなどとは言いませんが、怠けていたり、連携が全く取れていなかった班はかなりほかの班の人と成績に差が出ると思っておきなさい。以上! 初め! ピーーーーー!」
笛が鳴ったので、試験開始だ。
じゃあ、いっちょ頑張りますか! せっかく班のメンバーにも恵まれたんだ! 絶対に負けられない!
今回も2パートくらいに分けると思います。楽しんでくださるとうれしいです。