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動揺

 敵はこれだけ自分たちの作戦が失敗してるのにも関わらず、まだ碌に情報収集をする気配もないらしい。


 余裕を持てるだけの戦力をまだ残しているのか、それともただの馬鹿なのか……真偽のほどはわからないけど、おそらく前者だろうな。



 

 王都を出てから数日が経った。あと数日でフェルザー侯爵領に着く予定だ。この間の男爵領と子爵領は上級貴族の領地ではないので王都から遠かった。

 でも今回は侯爵領なのですぐに着く。馬車は良いものを用意されているけど、やっぱり早く目的地に着くのはありがたい。前世の車を知っている以上、どうしても乗り心地を比較してしまって長距離移動は苦痛に感じるのだ。



 とまぁ、そんなことを考えながらさらに数日馬車に揺られ、ようやく侯爵領に着いた。


 現状、特に被害はなさそうだ。だがここまで大軍で近づいたんだ。バレてる可能性も考慮しなければならない。まぁ、定期的に入っていた密偵からの報告によると、魔天教は最近、拠点から全く出てないようだけどね。

 なぜかはわからない。本当はとてつもない最終兵器を直前で見せつけてくるのかもしれない。




 ひとまずすべき事はフェルザー侯爵に挨拶をしに行く事だ。そして奇襲作戦の部隊のみんなにはひと塊で宿屋を取ってもらって休んでもらうことにしよう。

 覆面で何名かの師団員に交代で侯爵領の出入り口となる場所を警備してもらうことにする。そしてそこから少し領地の中程にある宿屋で領地の防衛部隊のみんなに泊まってもらうことにした。


 それらの指示を手短に部隊に出して、すぐに僕は侯爵邸に向かった。僕の他には今回、コルネリウスさんとカール、グスタフが付いてきている。ダミアンとツェーザル、父上には王都防衛をお願いした。


 


 10数分ほど身体強化で走っているとすぐに侯爵邸が見えてきた。結構でかい。そんな感想を抱きながら僕は館の門の前まで来た。

 すると超絶という形容詞がつくほど警戒している門番に止められた。


「すみません、貴族の方とお見受けしますが、今はお入りいただけ……」


 そこまで言って、門番は僕の胸元に目が行った。そして目を見開き、すぐに下がって道を開けた。

 おそらく家紋を見て僕が誰だか分かったのだろう。本来家紋は他家と被らないように複雑なデザインになっているので、素人には一切わからないんだけど、僕の家紋はかなり有名らしく、国中に知れ渡っているらしい。

 

 そしてこの私兵も例外ではなかったようだ。すぐに彼の厚意に甘えて入らせてもらう。館に入るとすぐに執事の人が寄ってきて、この人も同じ様に僕の家紋を見るとハッと気付いたような態度をとった。

 そしてコルネリウスさんやグスタフにカールといった面々も家紋が有名なため、すぐに分かったようだ。




 数分後、フェルザー侯爵が自ら出迎えにきてくれた。


「これはこれは、アーベントロート卿。アフトクラトリア閣下にベーレンドルフ閣下も。それにブラント卿まで……我が領のためにここまでのご尽力をいただき、感謝いたします。早速ですが、執務室にご案内いたします」

「ありがとう。よろしく頼みますぞ」


 コルネリウスさんが代表してフェルザー侯爵に答えて、僕らは執務室の方に案内される。

 

 そして部屋についてから早速本題に入った。


「今回は我が領のために動いてくださって本当にありがとうございます。正直領内の師団員たちだけでは戦力不足だったので、討伐隊を組もうにも組めない状況でした」


 フェルザー卿がそのように言うが、それは仕方ない事だと思う。逆に一領だけで竜魔導師で編成されている敵と戦える方が異常だ


 コルネリウスさんもそのように思ったみたいで、フェルザー侯爵に大丈夫だと言う旨を伝えた。


「お礼など不要ですよ、フェルザー卿。困った時はお互い様です。私だって普段から貴殿の領地の食糧に助けられているのですから」

「そう言っていただけるとありがたい限りです」


 


 そんな感じで一通りやり取りをした後に今後の作戦展開などを話し合い、互いに情報を共有しあったところで今日はお開きとなり、早めに休むこととなった。





 翌日、僕たちはすぐに出撃の準備を整えた。普通なら敵拠点までここまで近づけば、察知されて大反撃を喰らうものだけど、気づかれていないのなら遠慮する必要はない。

 このまま猛進して敵を包囲殲滅するだけだ。もはや僕たちの国にこれ以上大規模な戦争をする余力はない。さっさと敵を倒し、決着をつけるのがいいだろう。




 侯爵領を出て再び進撃を始めてから数時間、ついに目的の場所までやってきた。するとちょうど敵が見張りの交代か何かなのか、拠点を出入りしている場面に遭遇した。

 敵もこちらに気付き相当驚いている様子だ。この感じだと本当に気づいてなかったんだな……ただの馬鹿だろこいつら。


 いや、上層部は賢くて強い奴もいるかもしれない。油断は大敵だ。気を引き締めていこう。

 取り敢えず、全兵に突撃命令を出す。次の瞬間には僕の後ろにいた部隊の人間が、全員耳をつんざくような雄叫びを上げながら敵拠点に突進していった。


 敵の見張りもすぐさま竜を召喚して応戦してきた。やはり戦力の差は歴然。敵は少数でも圧倒的火力を誇るので、警戒が薄くても大丈夫なんだろう。


 氷の竜を召喚した男と風の竜を召喚した男が氷と風を混ぜた突風を突撃部隊に向けて放ってきた。凄まじい勢いで味方が屠られていく。

 そこで僕は一度師団員たちの前に結界を張った。そして団員たちも心得たもので、すぐに後続の支援だと気付き、足を止めた。そして敵の攻撃が止むのを待ってから僕が結界を解いたと同時に再度突撃する。


 この一連の連携と、団員たちの天をも穿たんとでも言うような苛烈な士気の高さに敵は一瞬怯んだ。それだけで十分だ。一斉に発砲された魔法銃の弾丸の雨に敵の見張りはなす術もなく蜂の巣にされた。

 元々高威力な武器の攻撃なだけに、敵の死体はもはや人間なのかも分からないくらいに原形をとどめていなかった。


 そして団員たちの敵を憐れんでやる様子もない、まるで今までの恨みを晴らしたかのような態度は、アンドレアス王国民の敵に対する深い怒りが表現されているようだった。


 "容赦なき断罪"


 先ほどの反撃はそのような印象を受けた。まぁ、自業自得だろうとは僕も思う。


 因果応報


 やったことは全て返ってくるんだ。良い行いをすれば良いことが返ってくるし、悪いことをすれば、悪いことが返ってくる。当たり前のことだ。



 見張りを倒して早速敵拠点の中に侵入する。次々に敵の構成員と思われる人物と遭遇するが、全て上位幹部の魔法攻撃や相手の迎撃態勢が整う前の魔法銃での攻撃によって沈んでいく。


 出だしは順調だ。だけど、いつ強い敵が出てくるかわからない。特に六大聖人はまだ3人残っているんだ。油断は一切できない。



 僕たちは未だ奇襲への対応が出来ていない敵陣地をものすごい勢いで進撃していく。この先に待ち構えているであろう敵の幹部と大将を早々に討ち取り、平和な世界を取り戻すために。



 

 

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