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新たな課題

 僕たちは大公閣下と話をした後、色々指示を出して師団員を可能な限り効率よく動かした。これによりまだ数名残っていた魔天教の戦闘員も全て殲滅され、無事にアードラー大公領の一件は閉幕した。


 今は大公家の屋敷の一室でゆっくりとお茶を飲みながら今後の話をしている。


「まずは今回の一件、貴殿らの協力無しには乗り越えられなかった。大公領を代表して礼を言う」


 そう言ってアードラー大公は頭を下げた。僕は慌てて顔を上げてもらうよう言った。


「閣下、顔をお上げください。私どもは何も特別なことはしておりません。貴族として以前にいち師団員としてお国のために動いたまでです」


 しかしそう言ったは良いものの、本当は身分が上の人からの礼や親切心というのはちゃんと受け取るのが礼儀だ。

 ここはアードラー大公の顔も立てて、


「しかし、お気持ちは確かに頂戴いたしました」


 俺の一連の返事にアードラー大公は感心したような表情を浮かべた後、また礼を言ってきた。


「本当にありがとう」


 つくづく思う。この国の貴族方は本当にいいお方ばかりだなと。


「では早速で申し訳ないんだが、今後の我が領について話をしたい。恐らくアフトクラトリア公や皆の協力を要請することがたくさんあるだろう。それほどまでに我が領地は破壊の限りを尽くされてしまった。散ってしまった罪なき命も凄まじい数に登るだろう。復興にはとにかく人手と資金が要る。そして何より君たち英雄の"言葉"が今の大公領民には必要だ。どうか手を貸して欲しい」


 アードラー大公はものすごく誠実で真剣な目をして力強くそう言った。元々言われる前からそのつもりだったけど、ここまで言われるとより気が引き締まるというものだし、よりこの領地のために頑張りたいと思える。 ぜひ協力させてもらおう。


「勿論でございます、アードラー閣下。隣にいるアデナウアー卿含め、私どもは全力で大公領の復興に尽力させていただきたいと思っております」


 僕がそう言うと、アードラー大公は深く頭を下げた。本当は王族がこんなに頭を下げたらダメなんだけどな……でもそれほどまでに追い詰められているのだろうし、そんな野暮なことは言うつもりもないから黙ってその感謝を受け取った。


「では私は今後、すぐに協力を得られそうな者に手当たり次第声をかけていきます。特にベーレンドルフ卿あたりは連絡が届き次第、すぐさま動いてくれることでしょう」

「分かった。私もできる限りこんなにしている家族から順に声をかけていきたいと思う」

「ええ、それが良いかと思います。そして次にすべきことですが、兎にも角にも先ずは王宮へ向かわねばなりません」


 今回の件の報告に行かないといけないからね。アードラー大公にもついてきてもらう必要がある。


「そうだな。では私の方では屋敷のことや最低限の執務を任せられる人材を選ぶとしよう」

「分かりました。私の方では私とアデナウアー卿以外で部隊を任せられる者の選別を行って参ります」

「承知した」


 


 こうしてあらかたの方針が決まってからは、僕たちはそれぞれ別行動をして、それぞれが今やらなければいけないことをこなしていく。

 更に数時間後、みんな疲れているだろうということで、夕食を取り今日はもう休むこととなった。




 次の日の朝、この日はかなりの急ぎで王都に向かう予定だ。陛下もバルツァー卿も待っているだろうからね。


「ではアードラー閣下、参りましょう」

「うむ」


 僕らは馬車に乗り込み、急ぎ王都を目指した。途中で何人かの敵残党と遭遇したけど、全て別働隊として動いていたツェーザルとその部隊の手によって撃破された。


 順調に王都への道のりを進み続けること数日。ついに到着した。門番は初めは警戒していたけど、普通の商団ならあり得ないほどの人数だったのと、アードラー大公家と近衛師団の紋章が付いた馬車を見てすぐに警戒態勢を解いた。



 王都の門を抜けて、都内に入った僕たちは休むことなく直ちに王宮へ向かった。

 城門の前に来ると、門兵たちは慣れた様子で素早く手続きを済ませ、中に入れてくれた。


 そしてその流れで謁見の間へと通される。玉座にはすでに陛下が座っておいでで、その横にバルツァー卿も待機している。階段下の最初の立ち位置にはボーゼ大公にバーデン大公

がおり、それに続くようにグスタフや他の貴族も並んでいる。こうして準備万端、とまではいかないがそこそこの準備をされた状態で僕たちは謁見に臨んだ。



 まずは陛下が1番最初に口を開く。


「まずはアフトクラトリア公にアデナウアー子爵よ。此度の遠征、誠にご苦労であったな」


 陛下がそう労いの言葉をかけてくださったので、素直にそれを受け取る。今回は本当に死にかけたんだ。少しくらい図々しくしてもバチは当たらないだろう。

 

「お心遣い感謝申し上げます」

「うむ。では早速だが、報告を頼む」

「御意」


 そこからは大公領で起きた一連の出来事を詳細に陛下に話した。初めは平静を保って聞いてらっしゃったけど、途中からは深刻な表情を隠せていなかった。

 そりゃそうだ、自分で言うのもなんだけど、僕が本気で戦って危なかった相手だ。正直、あの連中はヤバい……

 あんなのがまだ5人もいるんだ。気を引き締めてかからないと、本当に死ぬかもしれない。


 

 今回の戦いで新たな課題が見つかった。それは、僕も含めてみんなのスキルアップと装備の充実性だ。僕も今回を機に武器を新調しようと思う。


 ただやはり武器に頼っているだけではダメだと思うので、これからは今まで以上にみんなには訓練に励んでもらおうと思っている。なんなら重要事項以外の書類仕事や雑務は全て代官に任せて、毎日訓練だけに集中してもらってもいいぐらいだ。


 正直そこまでしても、あいつらに真っ向から立ち向かえるかは微妙なところだけどね。でもやらないよりかは何倍もマシだろう。前世で誰かが言ってたっけな? やらなくてする後悔よりもやってみてする後悔の方がいいって。

 本当にその通りだと思う。だから、みんなにはこれから僕と一緒に全力で訓練に打ち込んでもらう。


 師団の皆にもそのように伝える。今日からは1日の仕事の大半を戦闘訓練に費やすようにって。そこまでしても勝てなければそれはその時だ。



 とまぁ、そんなことを考えながら陛下との話を進めていって、あらかた報告し終えたら解散となった。

 ちなみに2日後に僕とツェーザルは王宮に呼ばれる予定だ。報酬のためらしい。僕はもうお金や勲章などの報酬をもらうぐらいしか無いだろうから、ツァーザルがどうなるのか非常に楽しみだ。

 もしかすると陞爵されたりして。あり得るな。今回のツェーザルの活躍は相当なものだったし。


 まぁ、なんにせよ今考えても仕方ないな。取り敢えず、今日はもう屋敷に帰って寝よう。




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