表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/168

吹雪卿 アダムス

遅くなりました! すみません!

 

 バキンッ! ドガーンッ! シュドーンッ!


 氷の竜王と百獣の将軍の激戦が続けば続くほど、周辺の景色は絶望へと変わっていく。だがそんな様子を当然許容できない人間もいるわけで……





(クソッ!! これ以上戦闘が長引いたら街が壊滅しちゃうじゃないか!)


 僕はこの街を助けにきたのに、今だにアードラー大公にも面会できず、しかも僕自身の攻撃によって破壊されている場所もたくさんある。完全に本末転倒なことになってしまっている。


 なんとかしてこれ以上の損害を抑えなければ、今後国の体力がどんどんと奪われて行って強敵と戦えなくなる。僕たち幹部が強敵と戦うにしても敵はそれだけじゃない。雑兵たちも相手にするのであれば確実に師団を動かす必要がある。


 そう言う意味でもやはりこれ以上の損失は避けたい。特に大公領のような巨大領地を疲弊なんてさせてしまえば、国家にとってとんでもない大打撃だ。


 既に疲弊の色が見え始めている状況。何か手を打たなければいけない。


「自分の全力だけで勝てると思っていたけれど、やはり君たちの力が必要なようだ」

『やれやれ、いつも言っておるだろう。初めからそうすればいいのだ。我らは主人に従うまで。何も遠慮することも意地を張ることもない』

「ありがとう」


 僕がそうやってルシファーたちと会話していると、アダムスが話しかけてきた。


「む? 何を1人で会話しているのかと思えば、成る程。竜を顕現させるわけだな。良いだろう。私も久しぶりに本気を出すとしよう」


 そう言ってアダムスは強烈な覇気を放ち始めた。正しく英竜闘気だ。しかもこれは……


「超位竜、か……」

「ご名答。氷と風の超位竜だ。そして教祖様からはこの力を認められ、吹雪卿を名乗る事を許された。せいぜい楽しませてくれよ?」

「成る程、なかなか凄そうだ。だけど僕も負けてないからね」


 彼が話し終わったあと、僕は英竜闘気を一気解放した。すると流石に彼の顔色も真剣味を帯びてきた。


「これは……成る程。本物だな」


 彼のその言葉の後に、僕らは一定の距離を保って互いに静止した。これから本当の決着をつける戦いが始まると確信したからだ。



 僕の傍にはルシファーとラー。今回は彼らに手伝ってもらう。そして先ほどの化身の魔法。これらの戦略で対抗する。

 対するアダムスはさっきの竜王の化身と氷と風の超位竜のメンツ。


 因みに何故ブイやインドラやポセイドンたちも顕現させないのかと言うと理由は単純。他にもアダムス級の怪物が潜んでいる可能性があるからだ。

 まぁ、こうやってアダムスに気を取られているにも関わらず、そう言った連中が攻撃してこないとなると新手がいる可能性は低いっちゃ低いんだけどね。でも警戒するに越したことはない。


 無駄に体力と魔力を消費して、満身創痍のところを一撃でやられましたなんてことになれば、マジで笑えない。そう言った理由から竜は全員顕現させない。



「次で決める!」

「ふん、良かろう。かかってくるがいい!」


 まずは僕の熱線砲魔法と化身魔法の炎で先制攻撃する。威力はどちらとも伝説級だ。それに対してアダムスも対抗してくる。アダムスは竜に指示を出してブレス攻撃を放ってきた。


 そしてそれらの攻撃がぶつかり合い、凄まじい衝撃波と爆発を生み出す。そこから間髪入れずにルシファーとラーにブレスを撃つ指示をする。


『邪魔な土煙ごと消してやろう! 黒帝覇(こくていは)!』

『俺の炎を喰らいやがれ! 竜炎砲(りゅうえんほう)!』


 2人の攻撃がアダムスと彼の竜たちに向かっていく。ルシファーの攻撃は漆黒の闇であらゆるものを引き摺り込み、消してしまう波動を放つ攻撃である。闇属性特有の力だ。しかもただ吸い込むだけではなく、闇そのものがとてつもない物理的破壊能力を有している。

 まさに破壊のためだけに生まれた力のようだ。ラーの攻撃に関しては炎属性の真骨頂である範囲攻撃を行うシンプルなものだ。だが普通の魔法と違うのはそれが神位竜の魔力で放たれるものであると言うこと。威力は折り紙つきだ。


 こうした攻撃がもろにアダムスたちに直撃した。普通ならば死んでいる攻撃、であるはずなのだが……


「ふむ、そっちの闇の竜の方はなかなかの攻撃だった。魔力の使い方なども熟練の技を感じさせる。しかし炎属性の方はいささか練度不足を感じるな」

「……!」


 まさかあれを平然と耐えてくるとは思わなかった。ルシファーの攻撃は幾ばくかダメージを与えたみたいだけど、それでも芳しくないようだ。

 というよりも凄まじい速さで回復していっている。あれは回復魔法かな? アイツは回復も得意なのか……厄介だな。

 だけどそれよりも……


「練度、か……」

「ふん、悪魔や天使どもを葬ってきた貴様が1番分かっているのだろう? いくら相手が格上であろうが練度さえ上がれば対抗できると。ならば元の能力が高い上で熟練度も上げればどうなるか? まぁ皆まで言わずともわかるよな?」



 これが数百年生き続けた竜魔導師の力……。正直天使や悪魔たちなんて霞んで見える。彼らは潜在能力はすごいものがあるけど、いかんせん己の才能に頼りすぎだった。

 強かった。確かに強かったけど、それでも才能に更に磨きをかけた努力家の方が強いのが当たり前だろう。


 僕の竜や僕たちは日々訓練を積んでいるとはいえ、やっぱりまだまだ経験が少ない。大きな戦いを何度も経験しているからそれなりに成長できてはいるけど、何百年も修練を重ねている人にはまだ練度の面では追いつけない。

 


(今回はかなりゴリ押しで行く必要があるかもね……)


 こんな屈辱的な戦法を取らされたの初めてだ。まぁ仕方ない。やるしかないんだ。


「僕だって修行をサボってたわけじゃないんだ! あまり油断をしないことをお勧めするよ! 喰らえ! 『火炎爆裂熱波(かえんばくれつねっぱ)』!」

「ははは! せいぜい楽しませてくれ! 『冷気爆裂冰波(れいきばくれつひょうは)』!」


 僕とアダムスの災厄級魔法がぶつかり合う。すでにこの辺りは更地状態なので今は周囲の被害とか考えずに行く。

 途轍もない熱波と冷気がぶつかり合いこの空間一帯を消し飛ばす勢いだ。


「さぁ、ルシファー! ラー! 君たちの力を存分に振るってくれ!」


 ラーに関しては経験の度合いで相手の竜に勝てるかどうか不安が残るけど、彼だって今まで授業をサボってきたわけじゃないし、僕と一緒にさまざまな戦場を経験してる。だから大丈夫だと思ってる。


『心得た! では早速暴れるとしよう!』


 ルシファーはそう言うと姿を消し、相手の竜の目の前に突如姿を現した。そしてアダムスの竜は全くといっていいほど反応できていなかった。流石にこの様子にはアダムスも軽く目を見開いていた。


『貴様の竜は確かに数百年の時を経て強くなったのだろう。だが古代竜である我からすればまだまだヒヨッコのようなもの。あまり図に乗るでないわ! 『漆黒爪(しっこくそう)』!」


 ルシファーの一撃はアダムスの風の竜に重大なダメージを与えるのに十分な重さだった。胸から止まる気配など見せずに血が流れ続けている。そして何よりも恐ろしいのが……


「そんな一撃、私の竜であればすぐに回復……何!?」

『我の爪は生命力をも奪い取る。いくら貴様の竜が強かろうとも、我の魔力を纏った攻撃をもろに喰らえばただでは済まん』

「おのれ……!」

『ほれ、よそ見などしていて良いのか?』

「っ!?」


 アダムスがルシファーに気を取られている間に僕は雷と炎と大地の強化魔法、そして身体強化魔法を纏ってアダムスに接近していた。その流れでラーも僕の妨害に出ようとしていた敵の氷の竜に対して炎のブレスを放ち妨害した。

 アダムスの竜が一旦動きを止めたその隙を見逃さず僕はアダムスに接近した。


「ははは! 流石だアレンアフトクラトリア公爵! 貴殿は本物のようだ! だが私も負けん! 負けられんのだ!」


 アダムスはそう言うと氷と風の強化魔法を体に纏い、結界魔法と身体強化も掛けて反撃してきた。


「『冰刃烈風斬(ひょうじんれっぷうざん)』!」


 氷の刃に小さめの竜巻が巻き付いたような斬撃を放ってきたので、僕はそれを普通の斬撃で弾き返し、こっちも同じように斬撃をお見舞いする。


「『天地崩滅斬(てんちほうめつざん)』!」


 雷が地面を撃って激しい閃光を撒き散らしながら大地属性で強化された剣からは炎が噴き出し、アダムスの斬撃に対抗する。


 僕らの中心で激しく攻撃がぶつかり合い、爆発した。僕はものすごい衝撃を受けて後ろへ吹っ飛ばされた。そして巨大な岩にでも叩きつけられたのであろう。腕の骨が折れた音と共に頭を激しく打って意識が底で途絶えた。


 僕は身体中に激痛を感じながらも目が覚めた。そして正面を見ると、雷に体を打たれて煙を上げ、左肩から右脇腹にかけて炎で焼かれ抉れた斬撃痕が確認できた。


「幹部でここまで強いなんてな……正直今回は死ぬことも覚悟した……」

『強敵であったのは間違いないな。だがお主は勝利した。胸を張れ』


 ルシファー達はいつの間にか僕の体内に戻っていたのだろう。心の中から声を掛けてくれた。


「うん」


 "前途多難だな"


 そんなことを考えながら僕は満身創痍の体を引きずりながら部隊と合流するため足を動かした。


 







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ