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六国同盟崩壊

今回短めです

 

 "ドゥンケルハイト王国との戦争にアンドレアス王国が勝利した"


 その報告はすぐに全戦場に届いた。そしてそれを聞いた各国はあり得ないと戦慄した。


 これだけの国家数、これだけの兵器数、これだけの師団数で攻めてもアンドレアス王国を落とせなかっただなんて……夜襲までして戦ったのに、これはあまりにも予想外すぎる展開だと各国の責任者は思った。

 そして同時に自分たちの未来が明るくないことも察した。勝てば夜襲のことも有耶無耶にできただろうし、報告に書いてある禁忌級魔法の使用に関しても、それらしい大義名分をでっち上げれば、なんとかなる。

 しかし、負ければそうはいかない。徹底的に今回の戦争期間中に行われた残虐行為などが処罰されるだろう。


 大国の一つであるドゥンケルハイト王国ですらアンドレアス王国には敵わなかった。であるならば、彼ら大国にとって有象無象でしかない自分たち小国群が悪あがきしたところで意味はないと言う結論に達し、各国部隊は完全に意気消沈した。それがきっかけで全戦場でアンドレアス王国師団の快進撃が続いた。


 そうして1ヶ月後に残りの3カ国、パープスト皇国とハンデル商国、ゾルダート王国も降伏勧告を受け入れた。バサルス王国、フックス公国、ドゥンケルハイト王国に関しては無条件降伏。その他の国家に関しては、条件付きの降伏となり、その内容は六国同盟の離脱が絶対条件というものであった。

 そしてフックス公国とバサルス王国はアンドレアス王国の傀儡国家として国体を保ち、ドゥンケルハイト王国には莫大な賠償金と同時に師団を4割削減することで、今まで通り国を運営することが許可された。ただし今回の戦争の責任者である王家とその他関連のある貴族家は当主及びその兄弟、姉妹などが死刑判決となり、その子供や妻などは死刑は免れたが厳重な監視下のもと生活することとなった。


 その他の国では賠償金を支払うのと同時に、アンドレアス王国に対して不可侵条約を結ぶこととなった。それだけでなく、アンドレアス王国と貿易を行う際、関税が戦争に参加していない国々よりも2割高くなるという処遇が決定された。

 これを承諾すれば、今まで通り国を運営してもいいという内容だ。これは無条件降伏の国々よりもかなり好条件なので、三国ともすんなりと了承した。

 

 これにて全戦場での戦闘行為が完全に終結した。



ーーーーーーーー


 僕は今、王宮に帰還して客室の一つに案内されている。そして報告書に目を通し、深くため息をついた。


 今回の戦争で約18万人以上が亡くなっている。とんでもない数の死者だ。現代地球に生きている人間ならあれ? 思ったよりも少ない? と思うかも知れないけど、そもそもこの世界には魔物の脅威があるため、都市部以外では人口増加が望めない。故に人類の発展が遅れているんだ。そんなわけで人類の母数も現代地球に比べると、当然だけど少ないんだ。


 だがそれよりも気になるのが、ドゥンケルハイト王家の死刑囚の中に姉妹までがリストに入っていることだ。これにはとても驚いた。驚いたんだけど、よくよく考えれば当然のことかも知れない。

 何故ならドゥンケルハイト王国は世襲制をとっているのは他の国と変わらないけど、女性でも王族、貴族共に継承権があるんだよね。だから言ってしまえば、女王制にもなることができるんだ。今はただの貴族夫人として嫁いでいたとしても、放置している間にその継承権をうまいこと利用して、ドゥンケルハイト王家の人間として返り咲き、反乱を引き起こしかねない。騒動の芽は早めに引っこ抜いておこうということだろうな。


「次から次へと人の命が失われていく……それもあっさりと。これが戦争の恐ろしさということなんだろうな……」


 本来ならば失う必要のない命が次から次へと散っていく。なんと酷い現実なんだろうか……。だからこそ、やはり敵国にはあまり甘い対応はできないな。こんなふざけた地獄を、領土を自分も欲しいからなどというふざけた理由で引き起こしたんだから……


 今回の六国同盟の敗戦で、各国は相当な打撃を受けた上に、今後の世界交流でも支障が出るほどの処遇が施行されることとなった。


 ざまぁ見ろと言いたいところだけど、これらの国々にはその国の上層部の愚かな選択のせいでとばっちりを受けることとなる国民がいるわけなんだよな。

 ほんと、戦争が起きて、負けて、損をするのはいつの時代もどの世界でも国民なんだってつくづく実感するよね。一歩間違えれば自分たちもそれと同じ立場になっていたかも知れない。そう考えると安易に喜べないし、勝ち誇れない。


 自分たちは彼らと同じ道を歩まないよう、細心の注意を払いながら国を運営していこう。"人の振り見て我が振り直せ"、これを心に誓ったのだった。




 

 それにしても今回の件は完全に魔天教の人たちの思う壺だったろうな〜。だって彼らの考えは人間を減らして世界を平和にする、だったと思うから、結果として今回の出来事は彼らに有利な方向に働いてしまったというわけだね。


 でもまぁ、今回の戦争での戦死者達が人類の全てというわけじゃない。一つ一つの国に住んでいる国民達もいるわけだからまだ人類は存続している。

 

 ただその存続もいつまで続くかは分からない。だから気を引き締めていかないとね。結局のところ、僕たち自身の手で六つの国の力を削いでしまったわけだから、今後は彼ら魔天教と対峙した時、とても苦しい戦いを強いられるかも知れない。


 

「不運な出来事っていうのはいつも、余計なタイミングで起こるよね。ほんとに勘弁して欲しいよ」


 僕は自分しかいない部屋で独り言を何度も呟いている。本当にそうしたくなってしまうほど、今の状況は厄介だ。いつまた奴らが現れるか分からないわけだからね。


 

 とにかく、今は戦争での損害をしっかりと修復していかないとね。それがまずやるべきことだ。そして傀儡化した国の統治のことなどについても考えていかないといけない。


(これは自分だけで背負える問題じゃないな。陛下やバルツァー卿とも協議を進めていかなきゃ……)



 こうして僕は胃が痛くなるような思いで寝床についた。珍しく大好きなお酒もお腹に入らないような、それほどの胸糞悪い気分だった。



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