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禁じられた魔法の圧倒的暴力

遅くなりました、すみません!

 フックス公国に続き、バサルス王国までもが陥落したのと同時期、六国同盟の盟主国であるドゥンケルハイト王国とそれに相対するアンドレアス王国の戦場も動きが見え始めていた。


 

アンドレアス王国国境砦ーーー


 僕は今、砦の城壁から戦場を眺めている。巨大魔装砲は全て破壊したと思うし、通常の魔装砲も幾つか破壊した。更に何人かの強い魔法師や魔法騎士とも対峙した。


 彼らは竜魔導師ではないことを考えれば、物凄く強かったと思う。魔力量は通常の魔法師などに比べれば、数倍上だったと思う。戦う相手が僕だったからたまたま勝てただけで、もしアンドレアス王国の師団の魔法師が戦っていたら数十人単位であの世に送られていただろうな。

 他の人が当たらなくて心底良かったと思ってるよ。流石は武力を売りにしている大国の師団員だ。


 ちなみにアレックスと敵の竜魔導師の戦闘はいまだに続いているようだ。続いていると分かっているなら何で参加しないんだと思われそうだが、それを避ける理由はもちろんある。1番の理由がアレックスが僕の参戦を嫌がりそうだからだ。彼は戦闘狂で戦うことしか頭にない。僕らに従っているのは単にグスタフと互いを認め合ったのと、後は僕らが彼に戦闘の場を提供しているからに過ぎない

 なのでそれを邪魔すると面倒なことになる予感がするし、逃げ出されたりしたら僕らにとっても損失だ。だから今は好きにさせる。


 そんなことを考えていると、敵の部隊に何やら動きがあった。上から見ているのでよく分かる。


(ん? あれは……まさか!!)



「魔法が使える者以外は総員退避!!」


 僕は臨時の戦闘員であるにも関わらず、思わずこの場の指揮系統を無視して反射的に指示を出していた。


 そして僕の指示であったことから、部隊の団員たちは速やかに退避した。そして残っている魔法を使える人全員に全力で結界魔法を張るように指示を出した。


 そしてグスタフたちも僕の様子を見て、只事ではないと判断したのだろう。素直に僕の指示に従ってくれた。

 その数秒後、


 ズドーンッ!! ズドーンッ!!


 敵部隊のはるか後方にて待機していたのであろう巨大魔装砲が2門発射された。


 ドガーンッ、ドガーンッ!


 とてつもない轟音と共に飛来してくる砲弾を僕らは結界で必死に防いだ。まさかあんな遠くにまだ2門も隠していたとはね。しかも余裕で届くって言うね……は? だよホントに。

 まぁ、でもあれだけの口径ならこの距離も届くか……なんて出鱈目なんだ。陸上版大艦巨砲主義、マジでシャレになってないよこれ。


 第二次世界大戦時にナチスドイツが造ったグスタフ・ドーラみたいじゃないか……まぁあれは80センチの砲塔だからもっと次元の違う話なんだけどさ……。

 だって世界最大の戦艦大和の倍近い口径だからね。


 取り敢えず、余計なことを考えている間に何とか持ち堪えて砲弾を弾くことに成功したみたいだ。

 僕はひとまず安心して周りを見渡した。だがそのせいで思い知ることとなる。戦争において圧倒的力を持つ兵器が人々に与える恐怖の凄まじさを、強烈さを……



「何、だ? 今のは。魔装砲か……? いや、それにしては……」

「いえ、魔装砲で間違い無いでしょう。しかし一体何なのですか……あの馬鹿げた威力は……」

「たかだか人間との争い、自分たちは悪魔や天使と戦ってきた。というように、戦争というものを軽く見ていたのだろう。こちらには魔装砲もあるし、負けることなどあり得ないとどこかで思っていたということだな。あまりにも軽率だった……」


 まずいな、かなり士気が落ちている。しかも司令部にもその雰囲気が漂っている。

 これは早々に決着をつけないとヤバいかもね。そんなふうに考えていると、


「今あれこれ言っていても仕方がない。とにかくあの魔装砲を破壊して現状を変える。そして早いところ、ドゥンケルハイト王国側の責任者を講和会議の場に引き摺り出すのだ」


 グスタフがそんなことを言い出した。おそらく彼も現状がかなり悪いことを認識していたのだろう。あの距離からあんなバカみたいな威力の砲弾を叩き込まれまくったらひとたまりもないからね。


「異論はないようだな。それでは各員、配置に……」

「お待ちください、ベーレンドルフ閣下」


 グスタフがそこまで言った時、ダミアンが突然口を開いた。そしてそれとほぼ同時に僕は強烈な悪寒を覚えた。ダミアンたちも感じたようだ。

 他の師団員たちも優秀な者たちはすぐに気づいたようだ。


 この、悍ましいほどの魔力量……帝王級……いや、災厄級? いや違う!! これは!? 


「ダミアン、グスタフ!」

「ああ!」

「分かっている!」


 僕たちは思わず普段の口調に戻ってしまった。それはそうだ。何せ、ドゥンケルハイト王国の陣地の方から禁忌級に相当する魔力を検知したのだから……


「総員、撤退!! 今すぐ砦から出て国内に戻れ! この場にいれば死ぬぞ!」


 ダミアンの素早くも鬼気迫る指示に団員たちはビビりながらもすぐさま撤退の準備を始めた。


「奴ら、血迷ったか!」

「本気で後のことは考えていないようだね。というよりも……」

「ああ、どうしてもこの場で我らアンドレアス王国の師団の数を減らしたいらしい」

「全く……」


 2人はあり得ないという顔をしている。それもその筈、禁忌級魔法というのは存在はしているが、絶対に使ってはならない魔法とされている。

 僕らが戦闘で基本的に伝説級か帝王級までしか使わないのもそれが理由だ。使っても災厄級までだが、それも凄まじい被害を周囲に撒き散らす。実際、今までの戦いで何度か災厄級の魔法が使用された記録はあるが、そのどれもが地形を変えたり、気候を変えてしまったりするレベルだった。

 最強の魔法でなくてもそこまでできるということだ。それがこの世に存在する魔法で最強のものとなれば……考えるだけで恐ろしい。

 

 帝国は禁忌級魔法に手を出して自滅したのだからね。だがあれは悪魔と天使の封印を解くだけという、直接的な攻撃能力は持たなかったから、まだ人類は均衡を保てた。帝国を除いてね。しかし攻撃能力を持つ禁忌級魔法は世界にとてつもない影響を及ぼす。

 それも悪い方向に。分かっている情報の中で特に脅威的なのが、まず禁忌魔法で攻撃が行われるとする。その後一気に辺り一体の魔力濃度が人間には耐えられないレベルにまで上昇する。これにより病死する人が続出するというものだ。



 とまぁ、そんなことを考えている間にも、敵は着々とこちらを攻撃する準備を整えているようだ。大量の魔法師たちを導入して詠唱をさせているのだろう。魔力に関しては今回使う禁忌級魔法と同じ属性の者たちを主軸に詠唱させ、それに周りの人間が魔力を供給していくと言う感じだろう

 今にも巨大な魔法陣が構築されつつある。アレを撃たれるのはまずい。直ぐに妨害しなければ……


「ベーレンドルフ卿、アードラースヘルム卿、三人同時に一斉攻撃であの魔法師の団体に攻撃を叩き込みもう!」

「了解した」

「承知しました!」


 僕は2人に指示を出し、敵魔法の妨害行動に出た。僕はルシファーに思いっきり魔力を供給してもらって闇魔法の発動準備を整える。


(ふぅ〜。ようやく出番か)

(そうだよ、ルシファー。お久しぶりに出番ですよ。助力頼むよ)

(勿論だ。任せておくが良い)


 それじゃあ、久しぶりにあの魔法の出番だね。僕は万有引力の魔法を放った。グスタフは火焔豪波と言う魔法、ダミアンはシンプルに剣に身体強化と大地属性の強化魔法を纏い、攻撃を放った。


 三人同時の一斉攻撃が敵の魔法師集団の真ん中へと向かっていく。

 

 よし、仕留めた!


 そう思った時だった……




 ブォンッ! シュイーンッ!


 不思議な音と共に魔法陣が大きく広がり、輝き出した。そして同時に僕たちの魔法も弾かれた。つまり、


「クソ! 失敗か……」


 いつものグスタフからは想像もつかないほど汚い言葉が出てきた。しかし僕も同じ気持ちだ。


「完全にやられたね……」

「畜生!……」


 僕らが悲嘆に暮れていたまさにその時、敵の禁忌級魔法が発動された。

 アレは……魔法文献にも載っている闇魔法。


 "終焉招(しゅうえんまねき)鎮魂歌(ちんこんか)"


 最悪の禁呪だ……まずは闇の力で物理的に全てを破壊し、その後生き物の生命力を根こそぎ奪い取り、吸い込んでしまう魔法だ。その上で生物にとって害となる高濃度魔力を辺り一帯に撒き散らす。

 まるで、誰かのこの世に対する恨みや未練、怒りといった物をそのまま体現したかのような魔法。それが今、解き放たれようとしている。


「アレックス! 一旦戻れ!」

「はっ!」


 僕が撤退命令を出すとアレックスは颯爽と戻ってきたので、もう憂いはない。敵の女性竜魔導師もこの状況を理解したようでアレックスが引くと直ぐに自分も撤退していたようだ。そして余波に備えて、彼女は結界を自団の全部隊に結界を張った。


 これで戦場は整った。



 戦場が一気に緊張に包まれると同時に、魔法は完全に発動した。辺りが全て闇夜のように暗くなり、突如として爆音と共に黒い"何か"が全てを破壊しながら迫ってくる。



 僕たちは全力で結界を張り、衝撃に備えた……






 衝撃が収まり、辺りを見回す。大丈夫だ。ダミアンもグスタフもアレックスも無事だ。だがそれ以外の景色を見て、僕は絶句することとなる……

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