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バサルス王国 降伏

 まずは敵の竜魔導師を一掃する。そう目標を立てた一行は早速行動を開始した。


 まずはディルクが数名の超一流魔法師を従えながら、ターゲットにした敵の竜魔導師のところに突っ込んでいく。

 当然、敵もとんでもない速さで近づいてくる気配があれば気づくので、すぐにディルクたちを視認した。


「チィッ! 早速俺たちを狙ってきやがったか! 仕方ねぇ! やってやるよ!」


 敵はすでに戦闘態勢で待ち構えている。それに対してディルクは至って冷静に指示を出していく。


「総員戦闘態勢に移れ! 手早く片付ける!」

「「はは!」」


 そして、


「攻撃開始!」

「『破壊風(はかいふう)』!」

「『貫水砲(かんすいほう)』!」


 まず2名の魔法師が敵を取り囲むように伝説級の魔法を放った。ディルクはいきなり飛ばしてるな〜と思った。

 と言うのも魔法師は竜魔導師と違って魔力量も少ないし、それに何よりも不利なのが、竜に力を供給してもらえないことだ。つまり魔力を使い切ったらただの人になるということ。それでも彼らは初っ端から全開で魔力を惜しみなく使い、敵を撃滅することを選んだ。


 そしてそれは実際にいい判断だった。流石に敵の竜魔導師も魔法師がいきなり伝説級の魔法を連発してくるとは思っていなかったようで、迎撃魔法を発動する余裕がなかったようだ。なので相手は大地属性の防御魔法を発動し、それで何とか防ぎ切った。


「はぁはぁ、いきなりスゲェの撃ってくるじゃねぇか! そんじゃあ、お返しだ! 『激土槍(げきどそう)』!」


 今度はバサルス王国側の竜魔導師が伝説級魔法を放ってきた。相手が唱えた攻撃名の通り、本当に大地が激怒しているかのように、数百本程の土の槍がディルクたちに飛来した。

 そして先ほど敵の竜魔導師に攻撃した魔法師2人がディルクの前に飛び出し、上級の結界魔法を2人で2枚張った。

 そしてその内の1人が口を開く。


「ベッケラート伯爵! 我々が援護します! 貴方様はそのままやつを討ち取ってくださいませ!」

「……!! よし、分かった!」


 優秀な魔法師2人の援護を受け、ディルクは敵の竜魔導師に突っ込む。


「あぁ、クソ! ふざけんじゃねぇぞ! 三人がかりとかありかよ! 『土刃(どじん)』!」

「悪いな、こっちも負けられないんだよ。まぁ、夜中に相手が準備もしていない状態で襲ったりはしないから安心しろ!」


 ディルクはそう言うと、大地の伝説級魔法、『大地(だいち)咆哮(ほうこう)』と呼ばれる局地的に地鳴りを起こす魔法を使った。

 そして敵がバランスを崩したところで、身体強化を発動し、敵の魔法をかわして一気に詰め寄った。


「クソ! ドゥンケルハイト王国が夜襲を行ったなんて報告を聞いた時からこうなる予感しかしてなかったんだよ!」

「そう思うのなら、同盟を切れば良かったんじゃないか?」

「俺はそんな指揮権持ってねぇし、どうしようもないんだよ! あぁクソ! 何もかもがとばっちりだ、クソッタレ!」


 男はそう言うと、『螺旋岩(らせんがん)』と呼ばれる巨大な岩を回転させて相手にぶつける帝王級魔法を放ってきた。シンプルだが、破壊力は凄まじい。しかも岩の数も20個と、まさに帝王級の名に恥じない強さの魔法だ。


 しかし強化魔法によって底上げした身体能力で全てをかわしていき、いよいよディルクは男の目の前にまで迫った。


「確かにお前とお前の国はその作戦に直接関わっていないのかもしれない。しかしどのみちお前たちが"侵略者"であることには変わりない! つまりは夜襲云々に関係なく、お前たちも排除対象だ!『嵐風斬(らんふうざん)』!」

「あぁ、そりゃそうだろうよ! んなことぁ分かってるよ! だから俺だって必死に戦ってんだ! そう言うわけだからよ、死んでくれや! 『斬岩(ざんがん)』!」


 ディルクの風を剣に纏わせた一撃と、男の岩を剣に纏わせた一撃がぶつかり合い、とてつもない衝撃波を生み出した。

 そして、


 ザシュッ!!


「クッソ……! なんつうみっともねぇ最期、だ……」

「お前は強かったよ。ゆっくり休め」


 ディルクは膝から崩れ落ちていく男に向かって、声をかけ、その場から立ち去った。


 

 その後はディルク含め、少数精鋭で敵の竜魔導師を潰していき、魔装砲などの近代兵器も次々と破壊していった。


 そこまで行けばもう師団の基本的戦闘能力の差からジリジリと戦線がアンドレアス王国優位で動き始め、遂には敵の部隊を5割ほどにまで削ることに成功した。


 5割の損失といえば、戦争での作戦行動において全滅という評価を受けるレベルだ。仮に敗北した側の指揮官が有能な人物で、敵が強すぎただけなのであったとしても、実際の被害の数字から指揮官は無能の烙印を押されることは免れないだろう。

 本来ならば、3割の損失で作戦は失敗であり、部隊の立て直しを考えないといけない。しかし今回の戦いではそれを更に超える5割の損失。

 最早、弁明の余地すら与えられないレベルで、バサルス王国の完敗である。


 

 バサルス王国の部隊崩壊が決定的となった日の夜、降伏の為の使者が、バサルス王国側からアンドレアス王国側陣地に来た。使者は初めから勝てるわけないと悟っていたかのように諦めた表情をしており、憔悴しきっていた。

 

 お国の判断ミスに巻き込まれた哀れな者。ディルクはそう思ったが、ここで甘い対応はできないと気を引き締める。そもそもこの場の総指揮権はツェーザル・アデナウアー子爵にあるのだから、自分は今は何も出来ない。

 黙って降伏調印が終わるのを待つだけである。



 そうして緊張が降伏手続きを行う天幕全体を覆っていた中、ようやく全ての行程が終わり、バサルス王国の降伏調印は完了した。


 決められたことは以下の通り。


1.金剛貨100枚の賠償(日本円で100億円)


2.アンドレアス王国との不可侵条約締結


3.バサルス王国は現状の師団構成(兵器を含める)から武力を3割縮小


4.六国同盟の離脱


5.師団の縮小受諾の代わりにニ国間安全保障条約の締結



 

 これらの条件をバサルス王国の使者は受諾した。これにより、今日この瞬間からバサルス王国はアンドレアス王国と同盟国となった。

 そしてバサルス王国の使者は自国の領土占領などをされなくて安心したような顔をしていた。


 しかし彼の安心の笑顔は今後、絶望へと変わることとなる。というのも、バサルス王国の属国であったフックス公国が正式に領土編入の希望申請をしてきたからである。

 ある程度寛大な処置だったとは言え、それでもアンドレアス王国によって不利な条件で講和させられたのだ。この上更に人口まで増えるとなれば大国ではないバサルス王国は一気に貧乏国家へと成り下がる。

 しかし今まで属国としてきた責任もある上に、彼の国が最早国防力を持たないのもまた事実。しかもフックス公国とはとある商取引でかなり利益を上げさせてもらっている。これを手放すのはバサルス王国としては損失がデカすぎる。


 結局、バサルス王国は経済難に陥ることを覚悟でフックス公国を受け入れた。


 これにより、バサルス王国は小国の中ではそこそこな立場を保っていたが、今は完全に貧乏国家まっしぐらである。

 これを境に各地で反乱や暴動が起き、次々と属国たちが完全独立を果たした。

 最早そこにはかつて属国を抱える程度には栄えていた国の面影は一切ない。

 



 


総指揮官のところ、コルネリウスさんとツェーザル入れ替わってしまっていたので、修正しました。混乱された方すみません。

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