表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/168

ドゥンケルハイト王国戦 決戦開幕

 一時間ほど念密に会議を重ねた結果決まった事。


 それは、


1.僕とアレックスは別働隊として動く


2.グスタフとダミアンは指揮を執る


3.他の幹部はそれぞれの部隊の指揮


 と言った感じだ。そして新兵器がいくつか散見されているみたいだけどそれに関しては見つけ次第、特大魔法を叩き込むか、魔装砲の集中砲火で対処する。



 ざっくりまとめるとこんな感じだね。シンプルでわかりやすいからとても良い作戦だと思う。



 こうして作戦会議を終えた数時間後、敵の部隊に動きがあった。敵部隊は到着直後は陣地を構築し直すためか、一旦停止して何も動きがなかったんだけど、あれはどう見ても作戦行動を取ろうとしている予兆だ。

 ついに開戦だ。


「さてと、いっちょやりますか」


 僕は独り言を口にした。何か意味があるわけではない。強いて言うならば、それは初めて人間と本気で戦うことに対する、一種の緊張ほぐしのようなものかもしれない。


(よくよく考えると悪魔や天使といった人と似た存在とは何度も戦ったけど、人間と本気で殺し合いをするのは初めてかもね)


 だけどそこまで考えても、不思議と恐怖や不安といったものは感じなかった。おそらくだけど、前の大戦での経験が僕の中ですごく大きかったんだろうな。

 いくら人類に牙を向く連中の討伐だって言ったって、結局のところ人に似た生物を殺していくわけだからね。あそこでやらなければやられるという状況を経験したのが大きいのだろう。

 そして今もまた、僕らに対して害をなそうとする連中が目の前にいるわけで、これに対処しなければ自分だけでなく、下手をすれば家族や友人にまで被害が及ぶということを理解しているから、相手に対してそこまで遠慮する気持ちがないのかもしれない。


 本来なら人を殺すことに躊躇いがないというのはいけないことだ。でも躊躇いがないからこそ、大切なものをちゃんと守れる。

 やはり僕の中でこれが1番大きいのだと思う。結局のところ大切なものをちゃんと守りたいのだ。


 なので今回の戦いも僕は真剣に全力で手加減なしで行くつもりだ。

 


 そこまで考えたところで、ようやく僕の今回のパートナーが来た。


「公爵より遅いご到着とは随分と余裕なようで何より何より」

「おっと、これは失礼しました。アフトクラトリア閣下。少し仮眠をとっていたもので。しかしこれでもだいぶ早めに起きて準備をした方なのですよ?」

「自分が早く行動していると思っていても、物事の流れがそれ以上の速さで進んでいるなんてことはいくらでもあるよ」

「おっとこれは手厳しい」

「まぁ、冗談はこのくらいにしてそろそろ戦闘準備に入ろうか」

「えぇ、そうですね」


 僕らの目の前には物々しい数の魔装砲がまばらではあるけど並べられている。

 正直ああいうふうに並べられるのが1番面倒だ。綺麗に整列されていたらその場所に何発か魔法や魔装砲を叩き込めば終わりだけど、ああやって少し場所や間隔をずらしながら並べられると一斉に潰すってことができない。

 敵には相当優秀な指揮官がいるんだろう。そして何よりヤバそうなのが……


(何あの、魔装砲? なのかな? いやこの世界で大砲の形してる兵器と言えばまだ魔装砲だけだろうから間違い無いんだろうけど、それにしてもあの砲塔デカすぎない? 50センチはありそうだな)


 思わず陸上版大艦巨砲主義かよ! って叫びそうになった。いやでも、普通に考えてみれば当たり前のことなのかもしれない。

 その時代で1番主力として扱われている兵器があったとする。そしてサイズを巨大にすればするほど威力が増すとする。そりゃみんなデカさに頼りたくなるってもんだよ。ロマンもあるしね。


 ただ僕が今1番危惧していることは、これが海上兵器ではなく陸上兵器だということ。だってそうでしょ? 戦車は現代でも使われているけど、戦艦は空母とミサイルという新しい主力の登場で出番をなくした。

 あの魔装砲が海上で使われるものならいずれ出てくる新技術の影に埋もれて無くなる可能性があったけど、あれは陸上で使われるものだ。しかもご丁寧に台車まで装着されてて移動までできる。実用性の高さもピカイチだ。


(これは……ホント油断できないね)


 いずれ自分たちの兵器の改修も真剣に考えないといけないかもしれない。いや、いずれと言わずにこの戦いが終わったら他の戦場での戦闘に向けて、早速改修案を計画しよう。


 そうやって新たな目標を掲げていたまさにその時、敵の魔装砲部隊が一斉にかましてきた。


 ドドドドドンッ!!


「さぁ僕らも動こうか!」

「ですね! 砦の皆さんにはせいぜい頑張ってもらうとしましょう!」

「ははは、いったい誰の心配をしてるんだい? あそこにいるのはグスタフとダミアンだよ? まともな戦闘で彼らに対抗できる師団は存在しないよ」

「それもそうですね」


 僕とアレックスは早速自身の竜に力を供給してもらい、魔法を使い始めた。


「ではでは挨拶がわりに。『爆雷斬(ばくらいざん)!」


 僕は着弾すると爆発する雷上級魔法を敵陣地後方に叩き込んだ。そこに2、3門ほど魔装砲が並んでいるのが見えたから。アレックスも初めから全開で行くのか、雷の上級魔法をバンバン使いまくっていた。


「いや〜、裏切ってしまってすみませんね〜、ドゥンケルハイト王国の皆さん!」

「心にもない謝罪はしなくてもいいんじゃない?」

「あれま、お気づきでした?」


 そりゃ気づくでしょ、楽しそうに魔法を使いながら謝ってるってどう考えても本気で悪いと思ってない。

 こりゃ本当にしっかりと手綱握っとかなきゃダメだな……


 僕らの攻撃の後にアンドレアス王国側も反撃を開始したようで、けたたましい轟音を響かせながら魔装砲が一斉発射された。さらに砦内から大量の矢が降り注ぎ、城壁からは盾に守られた魔法師たちが遠慮なく魔法を乱発していた。

 それに対し、反撃するようにドゥンケルハイト王国の師団員たちも一斉砲撃を敢行した。


 両者一歩も譲らない激戦。だけどやっぱり砦があるかないかはかなり大きな差であるようで、ジリジリとドゥンケルハイト王国側の砲撃頻度が減っていった。

 その中で一際凄まじい轟音を立てながら攻撃を続けているドゥンケルハイト王国の魔装砲を見かけた。


「あれだね」

「ですね」


 僕とアレックスはその大砲めがけて全力疾走した。


 だが、


 ヒュンッ!


 バキーン!!


「これはこれはご機嫌麗しゅう、ヒルデスハイマー男爵」


 アレックスに突撃してきた女性。ヒルデスハイマー男爵という人物が妨害してきた。


「ほーんとあなたって人は困るわね〜。ただどこかに行くだけなら私も好きにすればとも思ったんだけど、敵に協力までしてるんだったら見過ごせないわ〜」

「何をおっしゃるかと思えばヒルデスハイマー卿、おかしなことをおっしゃいますね? 人も他の生物と同じです。強い者に従う。普通のことです。私は敵将に敗れ、従属の道を選んだ。それだけのことですよ」

「心にも思ってないことを、さもそれっぽくいうのやめていただけるかしら? 本当に腹が立つから! あなたのその薄ら笑いもいつも気に入らなかったわ!」


 なんかいきなり戦いながら口喧嘩し始めたぞ? 僕が完全に空気扱いされてるよ……


「それはそれは、すみませんね。でも元来こういう性格なもので」

「知ってるわよ! その上私よりも強さも爵位も上なんだから本当にあなたが目障りだったわ!」

「私はあなたの小言が耳障りでしたよ?」


 アレックスが余計に怒りを煽るようなことをナチュラルに言うから相手の剣の威力がどんどん増している気がする……


「ええそうね、お互いに相手を疎ましく思ってるんだもの。遠慮なんかいらないわよね? 全力で行かせてもらうわよ!」

「なるほど全力ですか。良いですね! ぜひお願いしますよ!」


 なんか2人で因縁の対決始めちゃったよ……なんかもう良いや。放っておこう。


 僕は目標の魔装砲に向かって走り出した。因縁のライバルとの戦いに夢中になりすぎて僕を忘れていたヒルデスハイマー男爵はしまったという顔をして僕を見ていたけど、時すでに遅し。

 僕は遥か彼方まで走り去っていた。



 そしてその勢いのまま、身体強化と伝説級結界魔法を全身に纏った状態で巨大魔装砲に突進した。

 途中で何人か僕を妨害しようとして飛び出してきたけど、全部吹き飛ばした。

 僕は今、多分スポーツカー並みの速さで移動してる。力を温存するために手抜きとは言え、時速200km以上になるであろう物体が直進してくるのだ。しかも結界も身体強化も纏っているので、生半可な攻撃ではビクともしない。

 結果、妨害を企んだ敵師団員は全員吹っ飛んでいった。


 そして邪魔する人間がいなくなったところで、さらに速度を上げ、目前に迫った魔装砲に全力で突進した。


 轟音を響かせながら、操縦していた隊員たちを根こそぎ吹き飛ばしながら巨大魔装砲は鉄屑と化した。


「よし、まずは一つ目。後大きいのはあそこと、あそこか」

 

 僕は次の目標の確認を行なっていたのだけど、その場にいた敵師団員たちは何が起こったのかわかっていないようだった。故に全く攻撃もされない。それならそれで好都合だ。このまま君たちの切り札を完全に潰させてもらう。



 僕はそう考えて新たな目標に向かって走り出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ