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多方面同時作戦

 時は六国同盟が本格的に旧帝国領とアンドレアス王国に侵攻してくるより少し前まで遡る。


 アンドレアス王国王都・応接間にて。


「まさか六カ国同時に宣戦布告してくるとはな。他の国を差し置いての旧帝国領分配案だったので、必ずどこかの国が反発してくるとは思っておったが、まさか連合を組んでくるほどに結束を固めておったとは……」

「しかし陛下、工作員達も不穏な動きは察知していたのでは?」

「ああ、そのようだな。だがその動きの内容までは残念だが掴みきれなかったようだ。秘匿の仕方が巧みであったのであろうよ」

「そうでしたか。ですが彼らが無理をしないでくれて良かった。工作員はとても貴重な人材ですから、もし死なれでもしたら大損害です」


 僕は今、陛下とバルツァー卿とコルネリウスさんと会談をしている。

 今後の動きについて師団の全体的な指揮を担う僕とコルネリウスさんに陛下とバルツァー卿が意見を聞きたいと仰ったのだ。

 

 そして今、陛下とバルツァー卿が話しているのを聞いて、みんなでどうしたものかと天を仰いでいたところだ。


 だがずっとそうしてもいられないので、僕は一つだけ絶対にやらねばならないことを陛下に伝える。


「陛下、状況は良くありません。しかし既に六つの国が戦う気満々です。こうなっては師団の大半の戦力を防衛戦に割かなければなりません」

「しかしそうなっては王都と民達は誰が守るのだ?」

「その疑問はごもっともです。ですので、私が王都に残ります。そしてアーベントロート卿に今回の5カ国方面の迎撃戦線の総指揮をとっていただきます」

「なるほど。して、護衛部隊はどれほど残すつもりなのだ?」

「はい。1500ほどです」

「ふむ、総力戦で王都に残す戦力と考えれば妥当なところだろうな。あい、分かった。そのようにせよ!」

「はは!」


 本当は副団長の僕が戦場に行かないといけないんだろうけど、僕は指揮はできるけどまだまだ経験不足だ。

 ここは真騎士で、強い上に指揮経験も豊富なコルネリウスさんにお願いするのが妥当だろう。



 さて、次はコルネリウスさん以外の誰をどこに派遣するかだけど。

 

 そんなことを考えていた時だった。


 

 コンコン


 ん? こんなタイミングで来客? しかも陛下が会談をしている部屋に来るとなると相当高位な身分だろうけど……誰だろう?


「うむ、入って構わぬぞ」


 陛下が入室許可を出す。そして扉が開け放たれ、現れた人物は……


「失礼致します。陛下、お久しぶりでございます。お呼びと伺い、参上いたしました」

「うむ、取り敢えず座ってくれ」

「はい」


 僕は一瞬思考がフリーズした後、


「父上!?」

「うむ、久しぶりだな。アレン」


 まさか引退した父上がいきなり王宮に現れるとは思っておらず、ビックリしてしまった。

 だけど陛下とお話があるみたいだから取り敢えず黙って僕も話を聞く体勢に入る。


「ベッケラート卿、急に呼び立ててすまんな」

「いえ、陛下お気になさらず」

「そう言ってもらえると助かる。早速だが今回呼び立てたことについて話そう。言うまでもないかもしれんが、連合の宣戦布告についてだ」

「はい、私もディルクから伺っております」

「うむ、それでだ。引退した者に申し訳ないとは思うが、お主にも戦場に出てもらいたい」



 なるほどな、そう言うことか。確かに父上が助力してくれるのなら百人力、いやそれ以上だろう。

 なんせ初めはルシファーは僕の父上では悪魔や天使に勝てないと予想した。

 だけど聖杖を持った途端ルシファーの想像を超えたのだ。父上の魔法に対する研鑽(けんさん)と、聖杖の力が合わさると本当に強い。


 そんな父上が今回出てくれると言うのだ。いくつかの戦場は確実に楽になるだろう。


「かしこまりました、陛下。一度表舞台から退いた私にもう一度活躍の機会をお与えくださり、感謝いたします」

「良い良い。むしろ礼を言うのは余の方だ。今回の話を受け入れてくれて本当に感謝しておるのだ」

「ありがたきお言葉です」


 よし、ならこれで少し作戦を考えやすくなったぞ。

 そう思っていると陛下が僕に声をかけてきた。


「そういうわけだ、アフトクラトリア公。作戦のことについてはお主とアーベントロート侯に任せて良いか?」

「もちろんでございます」

「うむ、では余は執務が残っておるのでな。あとは任せる」


 陛下がそう言って立ち上がったので僕らも立ち上がって返事をする。


「「「御意!!!」」」


 僕とコルネリウスさんと父上が一斉に返事をしたあと、陛下とバルツァー卿は部屋を後にした。



 その後僕らはいろいろ話し合い、方針を決定していく。

 決まった内容としては以下の通りだ。


1.小国の一つ、バサルス王国に対しては大隊長であるツェーザルを司令官とし、副官に分隊長のディルクが就く(ディルクは学園での成績が優秀だったので分隊長から入団出来た)。この国は小国軍の中ではかなり国力がある国。しかし強さはド平均なのでツェーザルとディルクを派遣して一気に潰す作戦。部隊動員数は3万4千 内、竜魔導師は5名


2.同じく小国で、バサルス王国の属国のフックス公国についてはこちらも大隊長であるカールを司令官とし、副官に竜魔導師の中隊長2名が就く。部隊動員数は2万1千 内、竜魔導師は3名


3.ゾルダート王国は資源が乏しいが故にそこまで経済発展が望めず小国扱いだが、師団の質は列強並みだ。おそらく強い竜魔導師もいるであろうことから、迎え撃つは団長で総大将のコルネリウスさんと僕らよりも前から大隊長の席にいる魔法騎士幹部、オリヴァー・アルデンホフ伯爵(彼は炎と雷に適性がある生粋のパワーファイターだ)。部隊動員数は5万7千 内、竜魔導士は10名


4.ハンデル商国は同盟の中で最も商業に力を入れている国であり、資金面ではダントツの国。故に今回の同盟遠征の資金の半分はこの国から出ていると予想される。残りはドゥンケルハイト王国。そういうわけで師団の質は並程度だが、持久戦に持ち込まれた場合に1番厄介なのはこの国である。だから短期間で終わらせるべく向かうのは臨時司令官として大隊長となった父上と僕の私兵中最強の4名の内、ボニファティウスとベッティーナを派遣する。そして師団からも魔法師の中隊長2名。部隊動員数は6万 内、竜魔導師は12名


5.最後は小国側で唯一列強に近い位置にある国、パープスト皇国。この国は宗教で栄えてきた国。この世界の主宗教は英霊教でその拠点の本部があるのがこの国というわけだ。英霊教創始国はアンドレアス王国なのだが、1番信徒も多く、神殿や大聖堂の数も年に行われる儀式や行事の数も1番多いことからこの国が本部となった。そうやって宗教によって入ってくる資金、そしてそれを用いて進められた軍拡と国政。これらのおかげでこの国は国力が総合的に高い。故にドゥンケルハイト王国の次に倒すべき敵。そんなわけでこの戦線に向かうのは竜魔導師の大隊長1名と中隊長1名のアンゼルム・ゲオルギー伯爵とクレメンス・ゴルトベルグ子爵。そして僕の最強私兵の残り2人。アーノルドとアデリナだ。

部隊動員数は8万9千。内、竜魔導師は16名


 ざっくりこんな感じだ。


 

 そして気になるドゥンケルハイト王国との戦線における砦戦力だけど、


 ダミアンがドゥンケルハイト王国戦線の総大将で、グスタフは副官として現場指示。その他幹部が中隊長1名と小隊長3名。中隊長はザ・騎士! と言う戦闘スタイルのシルヴェスター・グデーリアン子爵だ。

 部隊動員数は7万。内、竜魔導師7名


 意外と少ない。だがこれは初めにドゥンケルハイト王国の宣戦布告に対する対抗措置として派遣しただけの部隊であり、敵が多いと判明した今はちゃんと援軍を送るつもりだ。

 予定している援軍戦力は部隊動員数11万5千 内、竜魔導師は13名。


 ものすごい動員数だ。この国の師団戦力をほとんど使い切っている。

 これからものすごい熾烈な争いが各地で繰り広げられるだろうな。


 ちなみに上級幹部に魔法師や魔法騎士、騎士などが就いているのに、竜魔導師は若干少なめだ。その理由は指揮官としての能力も昇格査定には含まれているからだ。

 強くても部隊を指揮できなければ上級幹部は任せられないからね。故に中級幹部で燻っている竜魔導師が多いのだ。

 だがそれでも強さと多少の指揮能力だけで幹部になれているのが、さすが竜魔導師といったところなのだろうが。



 とまあ、こんな感じで今後の方針は決まり、後は現場の師団員たちにお願いするだけだ。


(師団のみんな、武運を祈るよ)


 こうして僕たちは会談の場から解散した。

 

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