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接敵

本日もよろしくお願いします

 グスタフとダミアンは監視塔に立ちながら師団員たちが第二の防壁を築いていくのを眺める。

 防壁の位置は砦本体の防壁から約200メートルほど離れた位置に築かれた。

 逆v状に敵が向かってくる方面に対して伸びる防壁だ。砦正面の平原は両サイドに広大な林があり、大軍で通り抜けるのは不可能。

 なので砦正面から突っ込んでくるしか進入方法は無く、正面突破をすると逆vの第二防壁によって徐々に中心に集められるという寸法だ。

 そしてアンドレアス王国軍から見れば敵が勝手に正面中心にぎゅうぎゅう詰めになってくれるので、魔法や魔装砲などの攻撃を打ち込み放題というわけだ。


 そんな開戦準備を眺めていて、ダミアンはこう思う。


 "グスタフとだけは戦争をしたくない"と。


 今回、防壁を建てる作戦を考えたのはダミアンだが、具体的な建造方法を考えたのはグスタフだ。

 そしてお互いが相手に対してこう思った。


 "ダミアン・アードラースヘルム子爵と戦う相手は"


 "グスタフ・ベーレンドルフ公爵と戦う相手は"


 ""ご愁傷様だな""と


 そしてそんな互いに互いを認め合っている2人だからこそ、このような息のあった作戦が実現するのだろう。


「順調だな」

「そうみたいだな。いゃ〜それにしても、グスタフの考えた作戦は容赦ないね〜」

「原案を出したのはお前だろ」

「いやまあ、そうだけどさ〜」


 お互い砕けた態度なのは当然だが、今は監視塔に2人しかいないからだ。

 そして、最後の材料が置いてあるエリアの建設が完了した。


「お? いいねえ。完成したみたいだぜ?」

「早かったな。やはりお前の言うとおり、今回のあえて急かすやり方は効果的だったようだな」

「みたいだな」



 そんなふうに話していると、伝令係が走って監視塔に登って来た。今回は忙しいからか、伝令は二等師団員のようだ。


「ご報告いたします! 防壁建設、完了いたしました!」

「うむ、報告ご苦労。それから部隊の皆にも良くやったと私たちが言っていたと言って回っておいてくれ」

「承知いたしました!」


 グスタフの返答に返事をすると、伝令は走って階段を降りていった。


「さてと、敵はそろそろかな?」

「つい半日前にこれぐらいの時間で着くという報告を受けたのだ。そのうち平原の向こうから頭の大群が見えてくるだろう」

「そうだな」


 2人がそう結論付けてからそんなに時間がかからないうちに、予想は的中することとなった。


「伝令! 伝令! 敵師団視認! 敵師団視認! 対応指示願います!」


 伝令がそう伝えて来た。


「お、来たか。なら急いで魔装砲の発射準備! 魔法師団員と弓士部隊は総員戦闘体制で壁上にて待機! 騎士隊は全軍砦内で整列待機!」

「あと、回復魔法が使える魔法師を何名か壁上に連れて来ておいてくれ。恐らく壁上部隊にも被害は出る」

「かしこまりました!」


 ダミアンとグスタフが同時に指示を出し終えると、伝令はすぐに全軍に指示を伝えに行った。


「さてと、俺らも久々にいっちょ暴れてやりますか」

「普通は総大将は後方待機なのだが?」

「えぇ、だって暇じゃん」

「暇つぶしに戦争ねえ。あまり褒められたものじゃないが、やる気があるのはいいことだな」

「だろ? てなわけで開戦してあらかた指示を出し終わったら俺たちもこの壁上からではあるが、ちょくちょくブチ込んでやろうぜ?」

「ああ、それなら問題ないだろう。ところでいつも言っているが、その口調をなんとかしろ。全く、貴族らしさを微塵も感じない」


 ダミアンは元々平民なのでこの口調に慣れてる故に、自分と仲のいい相手にはついこういう喋り方になってしまう。

 だがグスタフは貴族になった以上、元の喋り方を完全に崩す必要はないが、ところどころぞんざいな言葉遣いをしている部分を直せと言っているのだ。


「あぁ……無理かな」

「おい! お前は貴族なんだぞ?」

「分かってるよ、でも公共の場でこうやって話してるわけじゃないし、いいじゃんか。まあでも、一応気をつける努力はするよ」

「全く、本当だろうな……」

「お! 敵が近づいて来たな! グスタフ、指揮を執るぞ!」

「はぁ〜。ああ、分かった」


 グスタフは気長に見守ることにしたのだった。





 グスタフとダミアンがお喋りしていた時から30分ほど経った頃。ようやく敵部隊が眼前に現れた。

 それを見た師団員たちは、


「お、おいなんだ? あの物々しい装備や兵器は……」

「ああ、それに数も尋常じゃない。あれは軽く10万は超えてるぞ」

「急いでアードラースヘルム卿とベーレンドルフ閣下にお伝えしてこい!」

「ハ!」


 師団員たちが敵を見て驚いていた頃、同じく壁上でもあまりにも想像を絶する光景にダミアンもグスタフも息を呑んでいた。たった一国を落とすためにあれだけの数の師団を動かすなど聞いたこともない。

 そしてその数分後に先ほど下の部隊で報告をしてこいと言われた師団員が報告をして来た。


「は、ははは……。10万超えって……アイツら」

「我々を落とす気満々だな。恐らく今回の戦争に全力をかけて来ているのだろう」

「そのようですね……。よしよし、分かった。君、ありがとう。下がっていいよ」

「ハハ!」


 正直、ダミアンとグスタフは2人とももう少し楽な戦いだろうと踏んでいた。

 だが現実は残酷だったようだ。


「仕方ない、こちらは7万しか居ないけど、やるしかないな」

「ああ、必要な時は……ダミアン」

「ああ、危なくなったらグスタフも出てくれ」

「承知した」


 2人がそう方針を話し合っていたまさにその時、



 ドシャーン! ドシャーン!


 ドラのような音が2回鳴り、その後敵部隊が前進して来た。既に砦に対し、魔法や矢も放たれて来ている。

 

 そう、いよいよ開戦である。


「全隊怯むなよ! 砦には私もベーレンドルフ閣下もついている! 恐れることはない! 全力で敵を叩き潰せ! お前たちは誉れ高き大国、アンドレアス王国の師団員なのだ! 厳しい訓練も受けて来た! 今こそその歯を食いしばって頑張って来た成果を発揮しろ! 侵略者どもを返り討ちにしてやれ!」


 ダミアンが師団員たちを鼓舞する。その後、


「「「「ウォォォォォーーーーーーー!!!!」」」」


 怒号のような雄叫びがあたり一体に響き渡った。



 その後、敵は予定通り逆V型の第二防壁に進路を阻まれ、迂回すれば砦から飛んでくる矢や魔法の餌食となり、中心に集められた敵部隊の少し後方に後続を分断するように魔装砲が雨のように撃ち込まれた。

 これだけで恐らく千以上の敵師団員がこの世に別れを告げることとなっただろう。


 それを見てダミアンは、


「よし、取り敢えず出だしは完璧ですね」

「そのようだな。だがまだ油断は出来ん。警戒を怠らずに行こう」

「ええ、もしかしたら敵も凄い兵器を出してくるかもしれませんしね」


 今は参謀などの師団員たちもいるのでダミアン達も貴族モードだ。

 そんな2人を見守るように師団員たちが後ろに待機している。そしてその時、1人の師団員が何かを発見した。


「ん? なんだアレは?」

「ん? どうしたのだ?」


 グスタフがその師団員に聞き返したので彼は戸惑いながらも報告をした。


「あ、それが、敵部隊後方に何やら長い筒状のものを持ちながら前方に歩いてくる部隊がおりまして、少し気になったのです」

「筒状の?」


 気になってグスタフとダミアンも師団員に示された場所に目を向ける。

 するとすぐに発見した。だが何をするかまではまだ予想ができない。

 なので、一旦様子をみよう。そう指示を出そうとした正にその時、


 ダダダダダダッ!!


 ものすごい破裂音が連続して響いた直後に壁上にいた師団員の何人かの頭が吹き飛んだ。


「「「……」」」


 司令部は沈黙に包まれた。だが、


「け、結界が使える魔法師はいつもより範囲を広めに魔法師や魔装砲隊員、弓士を守れ! アレを食らえば即死だぞ!」


 結界が使える魔法士たちで手が空いていた者たちは急いで結界が手薄な箇所の援護に向かった。


「全く、やられたましたね、ベーレンドルフ閣下」

「ああ、これは正直驚いた。ここは素直に敵の開発技術を認めよう。アレを食らえば、上位の師団員でも即死だ。おのれ、ドゥンケルハイト王国め……厄介なものを作ってくれたものだ」


 司令部はダミアンとグスタフを除いては、敵師団員が使った兵器の威力にただただ絶句しているしかなかった。

 だが、彼らも何か作戦を練らなければ負けるのも確実。なので皆早速作戦会議に入っていくのであった。


 

 


 

 

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