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王都到着、そして謁見!

 長い馬車の旅が終わり、僕たちは王都に到着した。まずは僕たちの宿屋を決めないといけない。コルネリウスさんは近衛師団員なので王都に家があるだろうが、僕たちにはない。

 そういうことなのでサクッと貴族街で宿をとった。


「父上、やはり王都なので当然でしょうが、宿がどこも高いですね」

「うむ。だが今の宿は比較的安い方だぞ? 格式が上がればもっと高い宿もあるからな」

「あれで安いとは、本当に王都の発展ぶりはすごいですね」


 宿が高かった。そりゃもう高かった。日本円換算で一人一泊20万ですよ? 食事つきならさらに一人2万プラスで、それを×二部屋だからな。合計は……約50万円にございます。それを合計三日宿泊予定でございますので、約150万円にございます。アホかこんなの。なんで一般的な宿で泊まるだけで150万なのさ……まあ貴族街だから仕方ないけど。ただそれを下位貴族でもさらっと出せるところが父上の半端なさを物語っている。払うだけなら貴族ならできるだろう。ただそれが懐を傷めないかどうかは別の話だ。


「ところで父上、父上はこれから別行動なのですよね?」

「うむ。そうなるな。よろしく頼みます。アーベントロート卿」

「いえこちらこそ長旅で疲れてしまっているでしょうに、無理を言って申し訳ない。陛下には貴殿から承諾が下りたら即刻連れてまいれ! 多少遅くなっても我が頼みごとをしている立場なのだ。こちらも文句を言わん! 夜になっても我をたたき起こしてくれても良い! とまで言われてしまいまして……」

「ははは。相変わらず無理をなさるお方だ。ふつう自分を夜にたたき起こしていいなどと許可を出す王族の方などいませんよ。でも、それだけ信頼をお寄せいただいている証拠。ならばなおのことお待たせすることはできませんな」

「陛下もお喜びになるでしょう」


 国王陛下、どんだけ父上を頼りにしてるんだ……父上に会うためだけに夜に起こすことまで許可するなんて、やっぱり父上は貴族としては他と一線を画しているんだな。


「それではさっそく王宮に参りましょう。今回はアレン君にも同行いただきすが、おそらくはじめは控室に通されるでしょう」

「わかりました。ではアレン、もし控室に通されたら、そこでしばらく待っていてくれ」

「承知しました。父上」

「あなた、頑張ってくださいね。子供たちのことはわたくしと使用人に任せていただければ、万事問題はないかと」

「父上、頑張ってください! 兄上も」

「わたしはお母様と一緒にいい子にしてましゅ」

「うむ。アンネ、頼んだよ。ディルクにアンナも頑張ってくるよ」

「では、母様、行ってまいります。ディルク、しっかりと母様とアンナの護衛頼んだよ?」

「もちろんです! おまかせを! 兄上!」


 おお、やっぱりコルネリウスさんがいるから口調はしっかりしている。ディルクは本当に偉いなあ。よしよし、あとは王宮へ行き、陛下の御前に伺うだけだな。頑張ろう!




 母上たちと別れてから20分ほど馬車で揺られてようやく王宮に着いた。門の前には複数名の騎士や魔法騎士たちが常駐している。そして、まあ当たり前かもしれないがコルネリウスさんを見た兵士たちは最敬礼をしたまま直立不動になった。


「ご苦労。陛下のお客人とそのご子息だ」

「承りました。城内勤めのものに伝えてまいりますので、今しばらくお待ちを」

「承知した」


 魔法騎士の装束を身にまとった方がコルネリウスさんとの受け答えをして、すぐに騎士の方が城内に走っていった。そして7、8分ほど待ってから、城の方から執事服のようなものを身にまとった人が現れた。


「アーベントロート卿、おかえりなさいませ。ベッケラート卿もお久しぶりにございます。はるばる王宮へのご足労感謝いたします」

「いや、そんなことは気にしないでくれていい。久しぶりだなクリストフ。筆頭執事いまだ健在か」

「そんな大げさなものではございません」

「相変わらず固いな~」

「これが仕事でございますので。そしてこちらの方がベッケラート卿のご子息ということでよろしいでしょうか?」

「うむ。その通りだ」

「丁重にご案内して差し上げてくれ。クリストフ」

「かしこまりました、アーベントロート卿。初めましてアレン様。私はクリストフと申します。どうぞお見知りおきを」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「ところでアーベントロート卿、部下の騎士の方を複数名同伴しておられたと記憶しておりますが、彼らはどちらに?」

「それは……後で報告も含めて話そう」

「?……かしこまりました」


 ああ、そうかそのことも報告しないといけないよな。つらいだろうな……とにかくコルネリウスさんがこの場では話さないと決めたんだ、僕は余計なことは言わないでおこう。

 ところで、この人は筆頭執事なんて言われてたな。つまり使用人のトップということか。ただ貴族の案内は貴族がしないんだな。というよりかは、この人はそういった仕事の場数を踏んでおり、陛下から信頼されている、とかかな?


「では初めに、ベッケラート卿にはさっそく陛下と謁見していただくという形になります。そしてベッケラート卿の準備が整うまで、アーベントロート卿には此度の派遣の報告をお願いいたします。アレン様につきましては、しばらくの間、控室の方でお待ちいただくという形になります」

「うむ。承知した。ではさっそく謁見の準備に参ろう」

「ではベッケラート卿、私は任務報告をしてまいります」

「承知しました。アーベントロート卿」


 ベッケラート男爵家の使用人たちも優秀なんだけど、やっぱり、王宮で働く使用人の人もものすごく手際が良くて丁寧だ。これからの予定を一瞬で伝えて、次の行動に映ろうとしている。

 そうこうしていると、もう一人使用人さんが現れた。この人は女性の使用人さんだ。なかなかの美人さんだ。やはり王宮ということで人目に付くから、使用人さんの外見も採用基準なのかもな。


「アレン様、わたくしはハンナと申します。本日は上の者よりの命により、アレン様の身の回りのお世話をさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いします」

「では、こちらへ。お部屋へご案内いたします」


 こうして僕らは、それぞれ行動に移った。

 城に入ってから5分ほど歩いたかな? そこでようやく控室に着いたみたいだ。父上は別の控室にて準備をしてから速攻で謁見だ。


「アレン様、こちらがお待ちいただくお部屋になります。私は部屋のすぐ外で待機しておりますので、何かございましたら遠慮なく呼び出し鈴をお鳴らしください」

「わかりました。ありがとうございます」


 そうやって僕がお礼まで言うと、ハンナさんは驚いた顔をした。そして…


「アレン様、私どもに丁寧にしていただくのはとてもありがたいことなのですが、貴方様は陛下のお客人のご子息なのです。敬語も丁寧な態度も意識されなくても大丈夫ですよ。むしろ泰然としていただいた方がよろしいかと」


 と言うふうに丁寧な態度はいらないよと言われた。ただこれは、突き放しているとかそう言うことではなく、ただ立場的に僕が気にする必要はないのだと教えてくれている感じだ。


「わかった。じゃあこれからも少しの間お世話になるけど、よろしく頼むよ」

「もちろんでございます。誠心誠意お仕えさせていただきますので、何なりとお申し付けください」


 そう言うとハンナさんは下がっていった。本当によくできた使用人さんたちだ。元々地球の人間だったせいで、身分差とか経験したことないから、年上の人をぞんざいに扱うのを躊躇っちゃうんだよな。

 貴族なんだからいずれは嫌でもそう言う機会は増えるだろうに。これだけはいつまで経っても慣れない。

 ま、これもこれからの課題だな。取り敢えず一休みしよう。





 こうして、僕は謁見の準備が整った。あとは陛下と父上の謁見が終わるのを待つのみである。

 20分ほど待っただろうか。部屋をノックする音が聞こえた。


 コンコン。


「はーい。どうぞ~」

「アレン様、ベッケラート卿と陛下の謁見が終わり、正式にアーベントロート卿からのアレン様の謁見申請も受理されましたので、玉座の間へとご案内いたします」


 そういってハンナさんが入ってきた。ようやくだ。これから国王陛下と初の顔合わせだ。話を聞く限り少し破天荒そうなイメージはあるものの、悪い人ではなさそうだ。


「わかった。今行くよ」

「では、こちらです」


 とにかく礼儀だ! ここ重要。これさえミスらなければ何も起こらない。よし。

 そんなことを考えていると、速攻で謁見の間に着いた。え? 早すぎない!? こんな近くに部屋を用意するって、はじめから謁見する気満々じゃん!

 すごく大仰な前準備をしていたから、てっきりもっといろんな面で時間かかると思ってたのに……


「こちらが玉座の間です」

「ありがとう。ご苦労様」

「では私は下がってお待ちしております」

「頼んだよ」


 とりあえずハンナさんに動揺を悟られないように泰然とふるまえたはずだ。よし、覚悟を決めよう。

 そうこうしていると、扉があけられた。


「エトヴィン・ベッケラート男爵のご子息、アレン・ベッケラート様が到着いたしました」


 僕はそのまま係の人が誘導してくれるままに移動した。そして陛下であろうお人の前にてひざま付いた。

 それにしてももっとギラギラしているのかと思えば、落ち着いた装飾だな。王家は結構倹約家なのかもしれない。そういうところに父上も自然と惹かれたのかもな。


「面を上げよ。おぬしがアレン・ベッケラートだな? 余はヨアヒム・アンドレアスである」

「はい。お初にお目にかかります。国王陛下。この度は急な謁見を受け入れていただき、誠にありがとうございました」

「うむ。初めは謁見の人数が増えておるから何事かと思ったが、ベッケラート家の名前が入っておったからな。貴族家に新たな命が芽生えることは王国の安寧を意味する。誠にめでたき事よ。期待しておるぞ」

「もったいなきお言葉、光栄の極みにございます」

「ふむ。さっきから思っておったが、おぬしはなかなか堂に()ったふるまいをするものよな。立ち居振る舞い、言葉遣い、その落ち着き様、その年でおいそれと身に着けられるものではないな」


 なんかどっかで言われたようなセリフだな。ああ、アーベントロート卿に言われたんだったな。

 僕ってそんなに普通じゃないの? 自分で意識したことないから、わからないや。


「おほめにあずかり光栄です。陛下からいただいたそのお言葉、間違いではなかったといわれるようにこれからも誠心誠意、邁進(まいしん)する所存でございます」

「ふむ。良い心がけだ。で、だ。そろそろ本題に入るとしよう」

「本題、でございますか?」

「そうだ」


 陛下がそう仰ったとたん、周りにいたほかの貴族様方もざわつき始めた。なんだ?


「おぬしの友人、およびおぬし本人、二人とも竜魔導師であるとは誠か?」


 ああ、そういやそれ、コルネリウスさんにも話したもんな。そりゃなかなか生まれない竜魔導師が近くの領地同士で一気に二人も生まれたとなったら、気にもなるだろう。まあもともと隠すつもりもなかったんだし、素直に答えよう。アデナウアー家も隠すそぶりもないみたいだし。むしろ逸材が生まれた! この子なら出世もできるだろう見たいに言ってるから僕が教えてもいいだろう。


「はい。その通りにございます。わたくしと隣の領地のアデナウアー男爵家のご長男、ツェーザル・アデナウアー殿も水の竜に認められております」

「なんと!?……誠に信じられん。年に王国内でも十数人程度は生まれるが、まさかほんとに隣同士の領地で、一気に二人もうまれるとは……」

「わたくしも自分でもいまだに夢ではないかと思うほどです」

「で、あろうな。して、おぬしにはもう一つ聞きたいことがある」

「はい」

「おぬし、悪魔に襲われたアーベントロート卿を救ったそうじゃな? 間違いはあるまいな?」


 そういった瞬間に玉座の間が凍り付いたように静まり返った。みんな、え?って感じだ。もしかしてこれについては聞かされてなかったのか?


「はい。その通りにございます」

「もちろん、詳しく説明してくれるな?」

「承知いたしました。では初めに事の経緯からご説明させていただきます」

「うむ。よろしく頼む。いまだに信じられんのでな。それと、できるならおぬしの竜も見せてもらいたい。報告によれば、おぬしは5属性に適性があり、そしてその属性すべてに竜が契約を受諾しておるそうだな。しかもその竜たちはすべて神位竜ときた。初めはほら吹きのいたずらかと思ったが。報告しておるのはアーベントロート卿なうえにベッケラート卿の子息ときた。話を聞く価値はあると思ったのだ」

「そうでございましたか。ではすべてをお話しさせていただきます。そうなれば、皆様にもご納得いただけるかと」

「そうだな。頼む」


 そこまで話していると、貴族たちは皆絶句して、立ち尽くしていた。そうだよね普通。こんな話、荒唐無稽(こうとうむけい)にもほどがあるもの。

 そこからは事の顛末(てんまつ)を詳細に話し、次は竜を見せる段階に話が移った。場所を移さないと一体だけこの玉座の間を半分ほど埋め尽くす竜がいると伝えると、速攻で場所を移すことが決まった。

1話では収まらなかった……。まだ少し、謁見展開は続きそうです。お付き合いいただければ嬉しいです。それとすみません、前話のタイトル直させてもらいました。

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