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戦時態勢突入

遅くなり申し訳ありません。今後も忙しさが増していくと思うので、もしかしたら丸々1週間くらい投稿できないとかもあるかもしれませんが、時間を作れ次第、なるべく投稿していきたいと思っております。宜しくお願いします。

 ドゥンケルハイト王国から宣戦布告を受けた日から数日後、僕は王城にある特別会議室と呼ばれる場所に案内されていた。

 ここは具体的にどういったことを話し合う場なのかというと、今まさに問題となっている戦争や他にも紛争や反乱、経済飢饉、そういった重要度と優先度の高い内容を話し合うときに使われる。

 だがそれなら何故王都到着直後に話し合わなかったのかと思われるかもしれないが、それに関しても理由は当然ある。

 他の貴族の到着を待たないといけなかったからだ。それも侯爵以上の貴族だ。

 伯爵も重要役職だが、彼らは武門の家系のみ召集された。子爵以下はいつも通り国政をしっかりと回す職務を優先せよとのことだ。

 そして今日、ようやく呼ばれるべき重要な貴族たちが全員揃ったのだ。

 集まった人数はざっと50人ほど。この人数だけでアンドレアス王国がどれほど強国か分かると思う。

 僕も含め、大公位や公爵位に就く人は8人なのにそれ以下の侯爵位となると一気に数が増え、20人くらいとなる。これで合計28人だ。既に半分と少しを占めている。

 しかし逆を言えば侯爵以上の貴族はこれだけしかいないとも言える。やはり限られた優秀な家にしか与えられない爵位なのだ。

 そして伯爵位だが、残りの22人だ。これは微妙なところだけど、武門の家系のみだと考えると、多くも感じる。

 なんせ、文官系の家も合わせれば伯爵家の数はおそらく軽く50は超えるからだ。

 だが、子爵位とかになると一気に100とか超えるのでそう考えるとやはり伯爵家も特別な貴族家なのだと感じる。


 まあこんな感じで集められるべき貴族たちは全員集まった。なので早速会議が始められる。


「皆の者、忙しい中よくぞ集まってくれた。早速ではあるが、これより緊急会議を始めようと思う」


 陛下がそう言った後、みんなが各々自分の考えを口にし始める。


「陛下、今回の宣戦布告は決して許してはならぬと考えております! あれだけ天使や悪魔との戦いでアンドレアス王国が誇る最強の竜魔導師、アフトクラトリア公に助けられながら、いざ戦いが収束するとその後の我が国の方針が不服だからと戦をふっかけてくる始末! いくら三代列強の一角を担う国であろうと恩を仇で返すような国を許してはなりません!」


 発言したのは確か僕の弟のディルクが治めているベッケラート領の近くの伯爵家当主だな。

 うん、なんだろう、あんなに僕を担いだ言い方をされるとむず痒くなる。

 すると今度は違う貴族が発言し出した。


「左様ですな。苦情書類の話は私のところにも届いておりますが、全くもって話になりませぬな。そもそも1番活躍した国があの土地を1番有利に分配出来るのは当然のこと。まあ、国と言っても活躍したのはアフトクラトリア公とアーベントロート侯、及びその他師団員で私は関係ないのですが、それでもドゥンケルハイト王国の決定はあり得ませんな」


 今度はコルネリウスさんと同じ侯爵の貴族が発言した。


「そもそもです、自分達は強い竜魔導師などを比較的戦いに出さず、師団の派遣も渋っておったのにこういう時だけ積極的なのも許し難い! 他にも彼の国に同調している国家があるというのが嘆かわしい!」


 今度は武門の辺境伯家の当主が発言した。これらの発言に対し、ヨアヒム陛下は『こうなるだろうなぁ』というような顔をしていた。

 そこで僕はようやく気づいた。恐らくだが今回の決定、強行したのは貴族たちを配慮してのことではないかと。

 どういうことかというと、今回こうやって積極的に発言している貴族たちは僕の調べによると物凄い影響力と権力を持つ大貴族ばかりだ。そんな彼らの領地でも人口密度の増加が危険視されていた。

 人口密度の過剰増加は雇用を圧迫する。人が増えても仕事はそう簡単に増えないからな。

 なのでよほどの才能や特殊なスキルを持たない限り、仕事が見つからず簡単に貧民街行きになってしまう。

 故に彼らが今回の天使と悪魔との決戦での勝利で土地が得られることはなくとも、今後何かしらの功績を打ち立てれば、今度は自分達が旧帝国の領土を与えられる、そう考えているとする。

 そうなると、他にも少なからず功績を上げた国がある以上、あまり土地を取られたくない。

 故に僕らのようなアンドレアス王国においてもかなりの発言権と影響力を持つ貴族を配置し、他の国に睨みをきかせるつもりだったのかも。

 陛下としては戦争の火種を生む可能性もあるし、何よりもそう言った問題が起きた時、真っ先に危険に晒されるのはたくさん旧帝国に派遣されている王家の一族だ。

 なのであまり取りたくない手段だったのだろう。だけどそんなふうに貴族の意向を完全に無視するような方法をとってしまうと、反乱が起きるとまではいかずともヘソを曲げられて国政に支障をきたす恐れがある。

 なので貴族たちの意見を尊重したんじゃないかな?

 うん、それが正解な気がする。陛下はものすごく聡明なお方だ。自国の有力な貴族たちと、他の国の人間、どちらに敵対される方が不利になるかしっかりと認識しておられるんだろうな。

 

 "真に恐れるべきは、有能な敵よりも無能な味方である"


 前世での有名な格言だ。今回の場合は無能な味方ではないが、内部分裂が起きた状態で国の困難に対して一緒に闘わないといけない、となった時に足を引っ張られるかもしれない。

 もしかしたらそんな状況にはならないかもしれないが、余計な王国破滅の可能性は排除すべきだ。


 僕ならそう考えるし、陛下もバルツァー卿も同じだったのかも。なら僕も自国の利益のために周りに合わせて動くべきだろうね。

 他の国には申し訳ないけど、僕がいち公爵として守らなければいけないのは自国の民の安寧と秩序、そして繁栄だからだ。


 そういうわけで、僕も発言していこう。この場には発言はしていないけど、実はディルクも来ているんだ。ディルクも立派な伯爵位だからね。さっき挨拶をしてきた。

 なので弟にもいいところを見せないとね。


「皆さんのお話も尤もですね。ですが一度議論を落ち着かせましょう」

「アフトクラトリア公爵……」


 よしよし、みんな僕の方を向いたね。それでは発言していこうではないか。


「まず、今回の宣戦布告。一見向こうに大義名分があるように見えて、そうではないのは皆さんも既にお分かりだと思います」


 僕がそういうと、皆はしっかりと頷いた。


「ですのでもう相手を責めるのはよしましょう」


 そう言うと、明らかに皆の顔に困惑の色が広がった。さっき敵が悪いと言っていたではないかと。

 そこで僕は一度全員を見渡し、話の続きがあると示した。


「皆さんも困惑されているようなので、本題に入りましょう。単純な話です。今回の戦争に勝てる作戦を話し合いましょうと言うことです。既に我が国とドゥンケルハイト王国は戦争状態に入っています。故に今更敵に罵詈雑言を浴びせても意味はない。なので三代列強の一角で、しかも軍事大国である彼の国に確実に勝てる話し合いをしましょうということです」


 僕がそこまで言い終わると、みんなも落ち着いてきて冷静な思考を取り戻してきたのか、今度は建設的な意見が飛び交い始めた。

 陛下とバルツァー卿は僕に『よく彼らをまとめてくれた』と言ったような顔をして軽く会釈をしてきた。


 

 その後、いくつか意見が出されて採用れた方針が以下の通りだ。


1.魔法具を今まで以上に配備し、予備が出来るほどにする


2.国を取り囲む位置に点在する領地にそれぞれ数名ずつ竜魔導師を配置する


3.今回僕やコルネリウスさん、そしてこの場にはいないが父上は王都の守りを固めるため、全軍の総指揮官は師団の大隊長の中で1番力があり、戦略も得意なものに任せる


 大体決まったのはこの3つだ。さてさて、今回僕は直接的に戦に参加しないことになっているけど、誰が総指揮官になるのか楽しみだ。


 


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