帝都到着
遅くなりました、すみません。
僕は陛下より任を受け、旧アフトクラトリア帝国帝都及びその他公爵領などの周辺都市を治めるため、馬車で1ヶ月ほどかけて帝都にまで来た。
久々の長旅で僕と、そして当然だが一緒についてきたエレオノーレとビアンカもとても疲労が溜まっている。
ただここからは何も問題はないと思う。何故ならこの後は帝宮に向かいそこで休む。
凄いことに新たに屋敷を建てず、そのまま帝都の城を使っていいと言われたのだ。これがどれほどの破格の待遇なのか分かる人物には分かるようで、この任を正式に玉座の間で受けた時、何人かの貴族の目の色が変わった。
もちろん僕に何かしようとかそういう感じではなかった。それよりはどちらかと言うと、玉座の間が存在する建物に貴族を住まわせると言うことが何を意味するか、と言う点で信じられないと言った感じだった。
それはつまり、陛下はもし僕がその気なら独立もいいよと言っているようなものだ。なんせ城が存在し、玉座が存在し、派閥の貴族も存在し、分家も存在する。
僕が自分で言うのもなんだけど、そんな大貴族をいつでも一国の主を僭称できる建物に配置するのだ。
だからみんな驚いたんだろうね。しかしそれにしても陛下も存外お人が悪いよな。僕がそんなことするようなキャラじゃないのは分かっているだろうにあえて試すような真似をされてる感じだ。
まあ、あまり気にはしてないけど。陛下からは多大な恩を受けた。色々と僕が大成していく上で手助けをしてくださったし、可愛い娘さんを僕に託してくれたし、僕には陛下に恩返しして忠誠を尽くす理由があっても独立したり、何か陛下にとって不利に働くようなことをする理由はない。
なのでこんなことは別にしなくてよかったんだけど、陛下にしてみれば最終確認をしておきたかったんだろうな。
僕の忠誠心に関してね。
まあ、そんなこんなで後にいろんな貴族から反発があっただろうけど陛下は僕に帝宮に住む権利を与えてくださった。
なので僕たちはこれから陛下のお陰で日々を充実して過ごせるようになるだろう。
「エレオノーレ、ビアンカ、疲れただろうけどもう少しで帝宮に着くからね。着いたら思う存分休もう」
「そうですわね。そうしましょう」
「それにしても父上はかなり大盤振る舞いしましたね」
「あははは、確かにね」
ビアンカも僕と同じことを考えていたようだ。
30分後、広い帝都を馬車で少し早めに移動してようやく帝宮の城門が見えてきた。
「さ、2人とも着いたよ。起きて」
「ん……ううん……」
「ふあぁ……」
妻2人は少し疲れすぎて眠ってしまっていた。僕の膝の上で。非常に理性を保つのに苦労するので出来ればやめて欲しかったんだけど、2人はスムーズに僕の膝に頭を乗せてきてそのまま寝息を立ててしまったのだ。
実を言うと僕らは結婚はしているがまだあっちの方は未経験だ。そろそろ子作りも考えないといけない年なので(この世界ではの話)、そう言う行為をしても文句は言われないんだけど、なかなかそこまでゆっくり3人の時間を作る余裕がなかったのだ。
そんなわけで本当なら15歳の成人の日にまたひとつ大人になる予定だったんだけど、まあお察しの通り天使と悪魔のせいでズルズルと先延ばしになっていたのだ。
そしてそろそろそう言うことも考えるかな〜と思っていたらこれだ。女の子って本当にいい匂いがするよね。
そしてその女の子が自分の愛する妻なんだから愛おしくて仕方ない。そんな2人が無防備晒して僕の眼前で寝息立てているんだ。
帝宮の寝室に入ってからならまだしも、こんな場所で理性のタガが外れるわけにもいかない。
早く着け早く着けと思っていたら城門が見えたのだ。ああ助かった! と思っていたのだがここで一つ問題が、
「あ、」
「あら、」
「え?」
2人が僕の下腹部にずっと注目しているのでそちらに目を向けると、
「ご、ごめん!!」
息子が元気に仁王立ちしておりました……はい。男として最悪の失敗をやらかしてしまいました。
「い、いえ! 別にいいんですよ、そういう時? もあると思います!」
主要因の1人のエレオノーレになんかおかしなフォローをされた気がする。
対するビアンカは、
「べ、別に嫌じゃないですから謝らなくていいですよ! むしろ愛する夫からそういうふうに思われたということが嬉しく……」
「え? なんて?」
「な、なんでもないです!」
「そ、そう」
ビアンカは最初の方は別に大丈夫だと言ってくれていたのは分かるが、最後の方がよく聞こえなかった。
まあ、いいか。よくはないのかもしれないが、とにかく妻たちに肯定的に捉えてもらえただけよしとしよう。
(今夜少し考えてみようかな?)
僕はそんなことを思うのだった。
帝宮にようやく入った僕らはまず疲れた体に鞭打ち、荷解きを始める。
そしてそれがあらかた終わると、できる範囲で部屋の確認だ。まあ僕の家の使用人や、陛下から派遣された使用人などを含め、約200名ほどいるから僕らが一生懸命に今すぐ動く必要はないんだけどね。
そもそも貴族でもそうであるように、王族の一員である僕らがそんな雑用みたいなことをする方が許されないようで、せっせかせっせかと使用人たちがやるべきことを終わらせていく。
いつの間にか僕らは手持ち無沙汰になってしまったので、自分達が寝室に使う用の部屋やその他日常生活で使う部屋を探しに行く。
おそらく中央部にはないだろう。貴族の屋敷でもそうだからね。
そして大体の目星を付けたところで今日はもう休む事にした。ちょうど夕食どきだし、美味しいご飯に美味しいお酒を堪能して、温かい布団でゆっくり疲れを取る。
そうしよう。もしかしたらそれ以外の面でちょいと疲れるかもだけど。
今日の夕食は魔公狼と呼ばれる師団で公式に設定された、魔物専用の階級で大隊級に匹敵する魔物の肉を香草でシンプルに味付けされたステーキだ。そしてようやくいろんな土地で定着してきた農業の代表食、お米を炊いてもらって、そして新鮮な野菜を添えて、さらには香辛料を少し入れた、いわゆるコンソメスープのような味わいのスープ。視界に入れただけで涎が出そうな献立だ。
そして何より注目すべきは! これらの食材に合わせて出されるお酒だ!
僕がラント公爵家の屋敷のお酒保管庫から厳選してかつなるべく多めに持ってきたんだけど、その中でもかなりグレードの高いものを出すように今回シェフに頼んでおいた。
種類は葡萄酒で(果物まで似ている……)、白の方にしてもらった。ちなみに赤、白の区別は初めはこの世界にはなかった。
でも白葡萄と同じような果実もしっかりとあるのを発見したのでそれを使ってみてはどうかと、お酒の製造所に提案してみたら、数日後に製造所から開発のための試飲官として協力してほしい言われてしまったのは笑い話だ。
そうして数々の苦労のもと生み出された白の葡萄酒で今晩の食事に色を添える。
この贅沢ぶりには流石の妻たちも驚いたようだ。
「あ、あのアレン様。良いのですか? このような高価なお酒を今開けてしまっても」
「そうですね、普段から倹約を心がけている貴方にしては珍しいですね」
「そうだね。普段ならここまで贅沢はしないけど、理由はいくつかあるよ。まず天使と悪魔の親玉をようやくこの世から排除することができたこと。これは僕たちがしたわけじゃないけど、結果的にいなくなったのでよかったなと言う意味も込めてね。そして今までの功績も含め、色々認めてもらえたからこそこうやって豪華な建物に住むこともできるようになった。そしてそこにこれからは最愛の妻2人と一緒に暮らす。ちょっと嬉しくてさ。だからいろんなことに対してのお祝い、かな?」
僕がそんなことを話すと、
「そうですね……確かにそうやってアレン様も含め、人類のために戦ってきてくださった方達の苦労も長かったですが、ようやく終わらせることができたのですね。そして功績を認められてすごい報酬を得た。確かにお祝いするには最高ですわね」
「そうですね。これからも忙しい日々だとは思いますけど、それでもようやく一段落つけることができたんですね。貴方、今まで本当にお疲れ様でした」
「ありがとう、ビアンカ。そしてエレオノーレも、2人が僕のそばで常に支えてくれたから頑張る気力がいつも湧いてきた。2人には本当に感謝しかないよ。そしてこれからもよろしくね」
「はい! 喜んで!」
「勿論です! しっかりとお支えします!」
「うん、それじゃあ乾杯!」
「「乾杯」」
そうしてとても美味しい食事とお酒を精いっぱい楽しみ、その後お風呂に入り、3人で寝室に向かった。
(うん、いつまた事件に忙殺されるか分からないんだ。今日みたいに時間がある時に勇気を出そう!)
僕はそう心の中で宣言して、
「エレオノーレ、ビアンカ」
「はい?」
「どうしました? 貴方」
僕は2人の質問に答えず、まずはエレオノーレに口づけをした。既に息子は徐々に起立してきている。
「!?」
そして数秒キスした後、今度はビアンカに向き直る。
「貴方……」
「2人とも大好きだ。愛してる」
そう言ってビアンカにも口づけをした。僕は妻たちと初めてこう言うことをするときは一緒にと決めていた。
1番、2番を作りたくなかったから。僕の単なるわがままかもしれないけど、でも僕にとって正妻とか第二夫人とかは存在しないから。2人とも大好きで大好きで仕方ない奥さんだから。
僕はビアンカとの口づけを終えると、身振りで2人にベッドに向かうよう示した。
2人は軽く頷くとベッドに向かった。そして可愛らしくベッドサイドにちょこんと座った。
2人はどうやら同時にするのを承諾してくれたようだ。
「エレオノーレ、ビアンカ、本当に僕の妻になってくれてありがとう」
「こ、こちらこそ感謝しています!」
「そうです! 私も姉上ではなく、私を選んでくださって貴方には感謝しています!」
「そっか、そう言ってもらえてすごく嬉しいよ。それじゃ……」
僕は妻たちの体に手を触れ、口づけを続け、次第に胸や足に手を伸ばした。
そして彼女たちがなるべくリラックスできるよう心がけた。
その後、僕たちは人生で初めての、体験をしたのだった。
ちなみに魔物の階級はその魔物を倒せる師団員の階級で考えられています。なので一等師団員で倒せる魔物は一等師団級と表現されます