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とある王国にて

今日も宜しくお願いします

 ここはアンドレアス王国から北に少し離れた位置に存在する王国。

 名をドゥンケルハイト王国。この国は武器の製造、研究開発、そして輸出で圧倒的影響力を誇ってきた、旧アフトクラトリア帝国やアンドレアス王国と並ぶ大国。

 大陸中ではこの三国をまとめて三大列強と呼ばれている。その中でドゥンケルハイト王国の下には幾つもの弱小王国や弱くはないが規模は小さめの公国などが隷属している。

 もはや帝国では? と思われそうだが、実質的にはこの国々が勝手に引っ付いてきてるだけであり、正式に併合して国土として扱っているわけではない。

 なのでわかりやすい言い方で言うと、ドゥンケルハイト王国から見る彼ら小国群は取り巻きみたいなものだ。

 着いてくるから面倒を見てやってるだけと言う感じ。


 そんな彼の王国だが、今はかなり気が立っている状態だ。それはなぜか? アンドレアス王国のいきなりの決定に不満を抱いているからである。

 その不満の内容は当然、アンドレアス王国がいつの間にか滅んでいた帝国を勝手に自国の領土に組み入れているからだ。奴らは帝国にでもなる気か? そう思ってしまっても仕方がない。

 

「一体アンドレアス王は何を考えているのだ! 確かに帝国は滅んだ。だが、それは不可抗力でいきなり消滅したにすぎん! 自分たちの手で帝国に打ち勝ち、併合したわけではないのに、何を勝手な真似をしているのだ!」


 ドゥンケルハイト王、正式名をアルベルト・ドゥンケルハイト7世は激怒していた。

 あの国がこれほどまでに他国を軽視した対応は今までの歴史上なかった。なのになぜ今になってこんな対応をしているのか?

 理由は簡単であろう。単純に我々を舐めているのだ。確かに彼の国の人間が天使や悪魔討伐に貢献した割合は物凄く、と言うか圧倒的だ。なので帝国を解放したという功績を理由に領土拡大を主張するのは分かる。というか大国ならば年々人口が増えて行くであろうことから、得られる土地を得ておかないのは愚の極みだ。

 だがそれでもいきなり過ぎる。そして理不尽すぎるし周りの国に対して配慮がなさすぎる。

 そして彼の国は最近急激に魔法具技術を発展させてきていて、強い竜魔導師の数も多い。つまりはそう言うことだろう。


「全く、舐められたものだな……。我々がいかにして強大な国にまで成長したかを既に忘れているようだな、あの国は」


 そしてここまで虚仮にされて黙っているドゥンケルハイト王ではない。


(いいだろう、最近は素晴らしい兵器の数々を輸入で手に入れて解析できるので技術開発にはそこまで投資はしていなかったが、味わいたいのならばもう一度味合わせてやろう。軍事大国の力というものを! 優秀な竜魔導師やちょっと優秀な魔法具を有しているからといって、我らに情報開示までして調子に乗りおって! 目に物見せてくれるわ!)


 ドゥンケルハイト王は久しぶりの人同士の戦争の予感を覚え、無意識のうちに気分が高まる。

 1番強い天使や悪魔たちを討伐して世界を救ってくれた恩は確かにある。だが、それと国家運営とはまた別の話だ。

 国の頂点に立つものは国をより富まし、国民に豊かな生活を与える義務がある。

 ちょうど最近ドゥンケルハイト王国では人口爆発が起きていて、領土の足りなさに困っていたところなのだ。

 他の国とも相談しながらの広大な旧帝国領獲得を狙っていたのに、何の相談もなしにいきなりアンドレアス王国だけで領土分配を決め始めた。


 ドゥンケルハイト王は執務机の横に静かに立つ秘書に、技術開発局に研究頻度増進と国家からの資金提供の打診を伝えるように申し付ける。

 秘書は洗練された最敬礼で頭を下げ、その後執務室から出て行った。

 そして続けて呼び鈴を鳴らす。


 コンコンッ


「入れ」

「失礼します、陛下。お呼びですか?」


 王宮直属近衛師団、その大隊長を務める男だ。


「うむ。お主が先日報告に上げてきた、最近破竹の勢いで実績を積み、階級を翠玉級(すいぎょくきゅう)にまで上げてきているという例の冒険者を至急に王宮に召喚せよ。正式に指名依頼を出したい」

「かしこまりました。しかしよろしいので?」

「何がだ?」

「他にも黄金級(おうごんきゅう)以上の優秀な冒険者はいますが……」

「その者以外に誰がいる? たった2ヶ月ほどで翠玉級にまで上り詰め、そして……超位竜を従える竜魔導師である者など。だがまあ、安心せい。金剛級などにも今回は協力要請を出す」

「承知いたしました」


 そう言って男は去って行った。




 数十分後、目的の人物が王宮にやってきたようだ。

 ドゥンケルハイト王は早速謁見の場を用意する。


「よう参った……"コンラート殿"お主の活躍はしっかりと耳に入っておるぞ」


 ドゥンケルハイト王がそういうと、


「お初にお目にかかります、陛下。本日は御前にお招き下さり、心より感謝申し上げます」

「ほう? 冒険者と聞いていたが、どこかで作法を習ったのかな?」

「師匠が文武においても、礼儀においても厳格な人でした。疎ましく思う時もございましたが、今はそのおかげでこうして神聖な場所にまで足を踏み入れる機会を得ることができました」


 ここまでのやり取りを見て、初めはこの男のことをただ実力があるだけの冒険者と思っていた貴族たちも少し評価を上方修正した。


「なるほどのぉ。それはよかったではないか。そして神聖な場所か……ふむ、確かにの。お主の言う通りここは限られた者しか踏み入ることを許されない聖域、そのことをしっかりと認識しているとはな。お主、気に入ったぞ!」

「おお、それはこれ以上なきお言葉でございます。感謝致します」

「良い良い」


 コンラートはこう思った。この王……チョロい。煽てりゃ即効でなついてくるタイプだと確信した。

 なぜこの男がこのようなことを思うのか? それは簡単な話。


 そう、この男は魔天教の人間だからだ。かつて、帝国において悪魔や天使たちの解放をして、人類を滅ぼそうとした計画の現場指揮を執っていた大司教だ。

 悪魔や天使が全く使えないとわかってからはすぐに計画をシフトし、親玉が弱ったところを彼ら魔天教の教祖に始末してもらった。

 そして今度は自らの手で人類を争いの道へと誘い込み、破滅への道を歩ませる。

 そして最終目標である、竜魔導師の発見、確保をして行くと言った感じだ。

 その他の動物や魔物に関しては人間が滅んでいようが、いまいが関係なく勝手に生活するだろうし、あまり深く考えてはいない。

 なので今目先の目標はこのドゥンケルハイト王国をアンドレアス王国との戦争に持って行くこと。

 そのためにまずは1番実績を上げて有名になりやすい冒険者になったのだ。


(これは……アンドレアス王国との戦争も容易く起こせそうだ。しっかり私の手駒になってくれよ? ドゥンケルハイト7世よ)



 その後、彼は1ヶ月で黄金級に登りつめ、正式に王国お抱えの竜魔導師となったのであった。

 

少しお話が長くなってきたので、補足情報です。

冒険者の階級はこの世界の階級について全て書いてあるお話に載ってます。

83部分に階級についてと言うタイトルで載ってますので、もしもう冒険者の基準とか忘れちゃったよ〜という方は是非ご参照ください。

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