王都に初遠征!?
すみません。遅くなりました。山場だった試験が終わって余裕がかなりできたので、少しづつ投稿していきたいと思います。こちらの都合でお待ちいただいて、誠にありがとうございました。
まさかの父上だけでなく、僕の王都行きも決まった。今は馬車に乗って、ベッケラート男爵家一同も勢ぞろいで王都に向かっている。まあ僕も呼ばれた理由は何となくわかるけど。
多分コルネリウスさんを助けたことが理由だよね? 逆にそれ以外には思いつかないしな……。え? ほかに理由とかないよね? うーん、まあ考えてもわからないなら、考えるだけ無駄か。
というわけで思い切って聞いてみることにした。
「あの、アーベントロート卿、父上は国王陛下より直々に依頼を受けたので招聘の理由は理解できますが、私に関してはまだ子供ですし、こんな大事な時期に国王陛下の御前にうかがう理由も見当たらないのですが……」
「ふむ。確かに普通ならそうだ。ただ君は私にとって普通ではなかったということだ。君は私の命の恩人なのだから」
「いや、しかしそれでも……」
「それにね、今も言ったけど私には君が普通の子供にはどうしても見えない。先日の件もそうだし、こうやって今も爵位が上の貴族とも物おじせずに話せる胆力。これらはおいそれと身につくものではない」
そんなことを話していると、父上が話に参加してきた。ほかのみんなは人数が多いので別の馬車だ。
「そうです、そのことです。アーベントロート卿。そのアレンが命の恩人というのは一体どういうことなのですか? もしかして先日の、貴殿と貴殿の隊が襲撃を受けたことに関係するのですか?」
「関係があるも何も、そもそも私がこうして今も日の光の下生きることができているのは、アレン君が私がその襲撃から逃亡している際に出会って、その襲撃者を殲滅してくれたからです。しかもその襲撃者はただの襲撃者ではありません。かの有名な天魔大戦争の歴史書にものっている悪魔だったのです。信じたくはありませんが」
「な!?……悪魔!? 復活していたのですか!? それにそれを降したのがアレン!? どういうことなのです?」
悪魔が復活したとはどう言うことなのだろう?ルシファーもそんなこと言ってたな。まあ今は優先順位がこっちだ。また今度父上にでも聞こう。
「お気持ちはわかりますよ。私もはじめ、戦うと言い出した彼を止めましたから。ただ、彼はその静止を聞かず、かつ悪魔をすぐに倒してしまった。それと私の事情を知った後の彼の対応も見事でした。その落ち着きも評価の点です。ふつうこの年の子は貴族の教育を受けていてもあそこまで冷静になれるものではないですから」
「た、確かに。そもそも悪魔に出くわした時点で半狂乱になっていてもおかしくはないですね」
「はい。ですからそれほどまでに優秀な貴殿のご子息をぜひとも陛下に御覧に入れたくて。誠に勝手ではありますが、ご承諾いただけないでしょうか?」
「そもそもすでに連れていくと最終判断を下したのは私です。今更文句などありませんし、それに悪魔を倒したというのなら確かに、アレンの力は相当なものです。陛下にお目通り願うのにも十分な理由となりましょう」
なんか怒涛の勢いで話がまとまった……。まあ別にいいんだけどね? ゆくゆくは立派な貴族になって、功績をあげて、実家の爵位も上げたいとか思ってたし。そうなれば自然と陛下への謁見も増えるだろう。それがちょっとばかし早まったと考えればいい。
「とりあえず、ベッケラート男爵、貴殿にはすぐに陛下との謁見をお願いしたい。陛下はとにかく貴殿という安心をその目でお確かめになられたいのでしょう。ベッカー閣下と貴殿、お二人合わされば先ほどわたくしが苦戦した程度の悪魔には勝利を収められるでしょう」
「承りました。陛下のご準備が整い次第、すぐさま謁見の間にうかがいます」
「感謝いたします。それで、アレン君、君に関してだがおそらくベッケラート卿のご子息という時点で謁見は決まるだろう」
「え!?……そんな簡単に陛下の御前にうかがえるのでしょうか?」
「君の父親がどういった人物と心得る? 心配無用だ」
「かしこまりました。ではそのようなつもりで待機させていただきます」
やっぱり父上すごいな~。父上の息子ってだけで陛下と謁見できる可能性があるだなんて。いくら何でもすごすぎない? そもそも父上の実力の本質に関しては、ルシファーですら見抜けなかったんだからね。僕も聖杖の話を聞くまでは、残念だけど父上ではあの中位悪魔には勝てないと思ってしまった。でも仕方ないか。今までその聖杖? とやらを見かけなかったんだから。本当にその聖杖ってすごいんだな。
そんなこんなで話しながら馬車に揺られていると、中継地点の街に到着した。ここでいったん休み、明日到着予定だ。僕はまず自分のやるべきこととして、謁見の際に我が偉大な父の名に泥を塗るような真似はしないようにすることだ。やはりベッケラート男爵はさすがだ! 子育ても完壁とは! と言わせるぐらいでないと。
そのような考え事をしていると、
ガチャッ
「皆さま到着でございます。どうぞこちらへ」
と、御者さんが知らせに来た。
「うむ。長旅の御者、誠にご苦労!」
「君、ありがとうね」
「ありがとうございました」
御者は完璧な所作で一礼し、その後黙々と僕らを宿屋まで案内してくれた。街ではみんなが街に来た貴族に興味津々だ。しかもわかる人には、僕らがベッケラート男爵家だと家紋だけで分かるようだ。父上の統治は大評判だからな。
「お、おい。あれってまさか隣の領地の貴族様のベッケラート男爵家の方々じゃないか?」
「本当だ。あの家紋、間違いない」
「隣にいる人は騎士様だろうけど、その後ろを歩いてる三人の子供と女性の方って……」
「ええ、多分そうよ。男爵様のご家族だわ」
「マジか!? もうお子さんが3人もいらっしゃるのか?」
「じゃあこのあたりの貴族連合みたいになってる領地一帯はしばらく安泰だな」
なんか父上すごい人気だな。しかも僕らを見て後の世も安泰だとか言い出したよ。父上の威光、どんだけだよ……ぼくもちゃんとしないとな! それに多分これは父上に影響を受け、協力してくれている貴族の皆さんの尽力でもあるだろう。どんなに父上がすごくても、この土地の領主がイマイチなら住民の顔はこんなに明るくないだろう。
「こちらの宿でございます」
「うむ。ご苦労だった。君は明日の朝までゆっくり休んでくれたまえ」
「かしこまりました。それではわたくしはこれにて失礼させていただきます」
「ああ」
こうしてベッケラート男爵家の御者の人も休みに行ったことだし、僕らも休むか。
「では、今日はゆっくりと休んで、明日またいろいろお話をしながら王都に向かうとしましょう」
「承知しました」
「かしこまりました」
そうして特に何事もなく、みんな床に入ってそして次の日の朝を迎えた。
次の日の朝、皆準備も終わりさっそく出発しようとしている。
「では、皆さん王都へまいりましょうか」
「ですな」
「準備はできておりますわ」
「私も、準備できてます」
「わたしもでしゅ!」
「わたくしも準備が整っております。アーベントロート卿」
今気づいたけど、ディルクもさすがだな。いつもは僕や家族に対しては、一人称が俺なんだけど、今回はコルネリウスさんがいるから使い分けてる。ちゃんと毎日礼儀作法も頑張ってるもんね! 本当に自慢の弟だよ!
「よし! では皆さん。さっそく馬車に乗り込んでください。今日の夕方ごろには王都につくはずです。予定よりだいぶ早い王都到着になります。その後はすぐに陛下と簡単な謁見をしていただく形になるかと。本来なら急な帰還ですし当日に謁見することはないのですが。ただ謁見の相手があのベッケラート男爵とそのご子息となれば話は別です」
「久々なので、なかなかに緊張しますな」
「僕も緊張しっぱなしです。父上」
「はは。アレンに関しては本当に初めての謁見になるからな」
「はい。失礼のないように気を付けます」
「うむ。最初はそのような感じの気持ちで挑めばよいのだ」
そういう話をしながら皆馬車に乗り込み、王都に向けて出発し始めた。
そして、そんな馬車旅の中、コルネリウスさんが僕に疑問を投げかけてきた。
「ところでアレン君、僕は君にずっと訪ねたいことがあったんだ」
「はい。なんでしょう?」
「君っていったい何者なんだい?」
「え?」
いきなりなんだ?何者って言われても、アレン・ベッケラートですが?
「えっと、アレン・ベッケ……」
「そうではない」
「アーベントロート卿、いきなりどうされたのですかな?」
「いやね、私は彼が戦う姿をまじかで見ていたのですが、おそらく彼は魔法を多用していたことから魔法師なのでしょう。ですがそれなら引っかかる点が多すぎます」
「え? 私には貴殿が何をおっしゃっているのか、さっぱり……」
もしかして気づいたのかな? 僕が竜魔導師だって。竜魔導師は基本、自分たちの力をひけらかさない。隠しているわけではないが、誰かが知っていてそれを広めたりしない限り、竜魔導師であるという情報が出回ることはない。僕がアデナウアー男爵領で竜魔導師として有名なのは、ツェーザルが竜魔導師というのもあるし、貴族でもあるからだ。だが一般市民なら冒険者でもして有名にでもならない限り、基本知られることはない。
「君はもしかして、竜に認められていたりしないよね?」
ああ、なるほど。僕が王都に呼ばれた理由。何となく理解できた。コルネリウスさんを助けたのももちろんそうだろうけど、理由はもし僕が竜魔導師なら、国家戦力として囲い込みたいといったところか。基本この国では、自分の力は自分のために使う権利を認められている。そうでなければ今頃、有名冒険者などは全員国家戦力にされている。
何だ、回りくどいな~。そんなやり方しなくてももともと貴族だし、この国のために働くつもりだったよ? なので僕は、
「はい。認められています」
「何!? 本当か?」
「はい。適性判断の儀式で竜に認められたようです」
「ちなみに結果としてはどんな感じだったのだ?」
「属性適正が、炎、氷、雷、大地、闇。竜には今言ったすべての属性で認められたようです。ちなみに全員、神位竜でそのうち闇の竜に関しては古代竜のようです」
「な!? そんなことが起こりえるのか? 信じられん。いや、だがあれほどの力を持つのならば逆に信ぴょう性がありすぎて疑う方が難しいな。それよりもそんなに簡単に言ってしまってよかったのかい? それを知られれば、いろいろなものに目を付けられると思わなかったのかい?」
「例えば貴殿や、あるいは王国そのものに、とかでしょうか?」
「まいったな……。思惑すべて見抜かれていたか」
「気づいたのは今ですね。優秀な魔法師なら国としては手放したくない。それが竜魔導師ならなおのこと手放したくないということですよね? ただ僕は元からこの国に誠心誠意お仕えしたいと思っておりましたので、言われずとも僕でよければ国家戦力になるつもりでした」
そう。僕は元からこの国が好きで、いつか陛下のお力にもなりたいと考えていた。
「参った。 降参だ。全く、君は本当に六歳とは思えないほどの頭の良さだね。今すぐに爵位を与えられても即戦力になるし、大人の貴族でも君に腹の探り合いを挑めば、むしろいろいろ掘り起こされて自滅しそうだ」
「全く、アレン、お前はいつからそんなに成長していたのだ? 驚いたぞ……」
「いえ、まだまだです。父上の威光に恥じない貴族になろうと思えば、この程度で満足などできません」
「確かに、それはまた大変な目標だね! もしそれを本気で目指すなら前途多難で厳しい道のりになると思うことだ。簡単ではないよ?」
「しかと心得ております。アーベントロート卿」
「全く、自分の息子がここまで成長するともう教えることがなさそうですな」
そんなことはないと思いますが父上……また少し親バカが発動し始めたな。
「よし! とりあえず、難しい話はこの辺にしましょう。ここからは楽しく和やかに行きましょう」
「そうですな」
「そうですね。まだ時間はありますし」
こうして長い長い旅は終わり、ついに王都に到着したのだ!
初めての王都! いったいどんなことが待ち受けているのか! お楽しみいただければ嬉しいです。