ラント領立人材育成学園の新講師!
遅くなりました。本日もよろしくお願いします!
あれから数ヶ月が経った。誕生日も既に過ぎ、僕は16歳になった。あれからさらに身長も伸び、今では174センチほどだ。この調子だと成長の勢いが緩くなる18歳までに180を超えそうだな。他のみんなも順調に成長している。そしてついにカールが僕らと同じくらいの目線になってきたんだ。確か167センチって言ってたっけな。まだ僕やツェーザル、グスタフの方が大きいけど、ダミアンとはもうあまり変わらない。
だいたいこんな感じだ。ツェーザル 176センチ。僕 174センチ。グスタフ 173センチ。ダミアン 170センチだ。
凄いよね、人の成長って。僕は前世が成人しても170ちょいしかなかったので、結構コンプレックスに感じて、人の体の成長や身長を観察する癖がついてしまったんだよね。
まぁ、お陰で女の子の特徴の変化とかにも気づけるようになって(髪を切ったとか)、高校生くらいから少しずつだけど女の子と仲良くできるようになってきたけどね。思わぬ収穫だったよ。
とまぁ、こんな感じでみんな健康に過ごしている。何故か天使や悪魔たちが攻めてこなくなったしね。
そして今の僕は何をしているのかと言うと、最近正式に名前が決まった僕が設立した学園、「ラント領立人材育成学園」に関する資料を読んでいる。実は結構前に建ててはいたけど、ただ学園と呼んでいるだけで正式名称は決めていなかったんだよね。
で、僕がこんな感じでどうですか? って領内に御触れを出したら、全会一致で意義なしと返ってきた……それで良いのか民草よ……。イエスマンでいいのか? と思ったものだ。
だが聞いたところによると、マジでみんな納得してくれていたようだ。むしろこうやって民主主義的に民衆に意見を求めてくれる領主なんて今までいなかったので、それだけで有難いと。
それならよかったかな?
とまぁ、成り行き感が半端なく強い名称で決まった学園なんだけど、その学園に新たに講師が就職したいと嘆願書を寄越したみたいなのだ。
その嘆願書を出した人の名前を見て飲んでいた暖かいコーヒーもどきのようなものを全力で吹き出しそうになった。
何せその書類に書いてあったのは、
『拝啓、アレン・アンドレアス・ベッケラート・ラント公爵閣下。数ヶ月前の魔将帝による王都周辺地域侵攻の際、私の命をお救いくださって心より御礼申し上げます。つい最近体調が回復してまいりましたのでご挨拶が遅くなってしまいました。申し訳ございません。つきましては後日、直接お礼を申し上げに伺います。そしてこの度、お手紙を差し上げた理由についてですが、貴方様がご設立なさった学園の講師にご採用願えないかと言う申し出にございます。どうかご検討のほどよろしくお願い申し上げます。 エデゥアルト・アイブリンガー』
と言うものだった。驚くのも無理はないよね? 凄い人物だとは分かっていたけど、個人的に魔法の指導をしていて、元金剛級冒険者でもあると言っていたので、もう出会うことはないだろうと思っていたのだけど、まさか向こうから来てくれるだなんて……
しかも僕の学園の講師になりたいだなんて。申し分ないよね! 断る理由を探す方が難しい。是非とも我が学園の学徒たちを立派な未来ある人材に育て上げてほしい。
というわけで報酬は日給制で銀貨3枚と大銅貨5枚でサインをしておいた。採用してもらえるなら毎日でも出勤できるとのことだったので、それを考えると結構な額の報酬だ。だって1日35000円だよ? 日本円で。掛ける1週間だから5日分。つまり1週間で175000円。掛ける4週間で700000円。年収換算で8400000円だ。初任給からこれはエグすぎだよ。アンドレアス王国は大国であれど、当然日本の物価には敵わないから、これだけの年収があれば2、3年働けば20年くらいは贅沢をして暮らせる。
結局のところアンドレアス王国は大国だけど、文明自体は中世くらいなのでこれほど稼げればこの世界では大成功なのだ。
まぁ、魔法具を買うのであればまだまだ稼がないといけないけどね?
なので僕としてはどうして金剛級冒険者をやめちゃったのかな? とか思ったりもする。
だって1日でドカンと稼ごうと思ったらやっぱり冒険者だから。命の危険と隣り合わせなので依頼に行くたびに絶対手当ては出るし、成功すれば今回のエデゥアルトの月収並みの金額を1日で稼げてしまう。
確実に給料は落ちているのだ。まぁ、いいやそんな野暮なことを気にするのはやめて、この手紙をエデゥアルトのところに届けてもらうよう頼もう。
そして2週間後に返信が来て、是非ともこの条件でお願いします! とのことだったので文句は出なかったようだ。
そりゃそうだろ、現代日本でも若いうちからこれだけ稼げれば、勝ち組に入るような年収なのだ。物価が日本よりも圧倒的に低いこの世界でこの年収なら何度も言うようだけど豪遊して暮らせる。
異議は出ないだろうとは思っていたけど、どうやら満足してもらえたようだ。
よしよし順調だな。
そうそう、確かクリスティーナ教授も僕の学園の教授になってくれたんだよね。忘れてはならない僕たちの学生時代の大恩ある教授だ。
クリスティーナ・アッヘンバッハ教授。いろいろなことを教わったな~、懐かしい。
今はいろんな研究をしているみたい。僕が入学したころは竜魔導師が使う魔法と、一般魔法師が使う魔法がどう違うのかというのを研究していたと思う。そしてその研究に関して核心に迫る大発見をしたとして本も出版されていたほどの今や若手を先導する超エリート教授だ。
だが、教え子が学園を開いたと聞いたので面白そうなので国立学園に退職願をたたきつけてきたみたい……。
なんでかな? と最初は思ったけど、すぐに合点がいった。魔法具だ。彼女はその竜魔導師と魔法師の使う魔法の違いの研究で成功を収めて研究がひと段落したので、今は魔法具についても研究している。そしてどこかにいい研究材料はないか? と探していたところで僕の学園の話を聞いたのだろう。
ま、こちらとしては嬉しい限りだけどね? 優秀な教授がそろってくれるのは。
という訳で新任教授も増えて今後は我が学園はより優れた学府となることだろうね。そう確信したよ。
さて、資料も確認し終えたし今日の予定の一つ、王公社交界に参席する準備をしなきゃね。
王公社交界、それは貴族ならば誰もが憧れる舞台。
具体的にどんなものかと言うと、王族のみしか参加できない究極の社交界だ。
参加権限があるのは現国王、王妃、王太子、王女。そして三大公及び公爵位の貴族のみだ。
ものすごく厳選された人物しか舞台に入場する権限すら与えられない、そんな場所。
特に貴族として大成したいと考えている下級貴族に出席欲が強い傾向にあるかな。
しかしその欲望が叶うことはないんだよね。だって侯爵位や辺境伯位の大貴族ですら参加資格はないんだから。
実際の所、王族の方に認められ、縁談を持ち込まれるぐらいに成功し、実際に結婚までことが運んで王族の仲間入りを果たせれば可能なんだけど、それ自体が至難の業。僕はとんとん拍子に成り上がれたけど、それは色々な女神様からのギフトをもらっていたり、武人として功績を上げるチャンスに恵まれただけ。
本来なら何十代も世代を重ね、家の格を上げなければ不可能だ。
さてと、そんな誉高き至高の聖地へご招待頂いたのだから、今日はしっかりと仕事をしてきますかね。
色々と商談を持ち込まれたりもするかもだし、念のため仕事用のカバンも持っていこう。
よし、それでは出陣ぜよ!