陞爵 その2!
何とか投稿できました。
僕は魔将帝・傲慢のヴェルノートとの戦いの詳細を陛下に報告した後、すぐに家に帰って眠りについたが、それで一件落着という訳でもない。
なぜなら王都全域が僕と王国の勝利を祝うお祭りムード。報告という貴族として絶対に優先的にしなければいけない仕事は終わってはいるけど、こういうイベント的なことが起きたとき積極的に参加しなければいけないのだ。
なので今日のお昼から夜まで開かれる戦勝記念祭は主役として王都の都民たちと触れ合うのが仕事ということになっている。
ちなみに戦勝記念祭というのは、本来戦争に勝利した時に執り行われる祭りだが、今回は特例ということで開催が決まった。
だがその前に一つお仕事が……
僕は今王城に来ている。今日の朝にもう一度自領の屋敷から王都に転移してきた際に、王都にある別邸に王城から特級召喚令状が来たからだ。
何事だ? また悪魔か天使案件か? とも思ったけど、令状には緊急事態という訳ではないが、戦勝記念祭を開く前にどうしてもしなければいけない仕事があるとのことだ。それは、
今回の戦闘においての報酬と表彰だ。
なるほど、と思った。昨日は疲れすぎてそこまで頭が回らなかったけど、よくよく考えてみれば僕はまた手柄を上げたことになるんだよね。
そりゃこういう話にもなるか。
そういう訳なので渡す報酬とかも既に決めてあるので、今日は正装で王城に来てくれとのことだった。
相変わらず王城勤めのいろんな貴族たちからジロジロ見られるな……声もかけられるし。
まあ、彼らは悪意があってやってるわけでもないし、むしろそれらの中には僕に進んで付いてきてくれる人もいるからね。邪険にもできない。
「こちらのお部屋でお待ちください」
案内してくれていた使用人の人がそういって待合室を示す。
「うん、分かった。ご苦労様、ありがとね」
「い、いえ。そんな、お仕事ですから……」
使用人の人がなぜか赤面しながらそう答えた。まさか、お礼言われた程度で照れてるのか? なんか微笑ましいね。
年も17か18かそのへんか。美形の少女だしさぞモテるだろう。頑張っていい彼氏を見つけて幸せになってください。まあ、もういるかもだけど。
とまあ、そんなおせっかいなことを考えながら促されるままに部屋に入った。ここからは一時間ほど自由時間。
で、今回もそうだけど待合室で待たされるってことは……
コンコンッ
やっぱり……。他の貴族からの僕への面会申請が王家に来てたようだね。こういうのは王城内での出来事なら王家が勝手に面会をするかどうか決めていいという決まりがあるのだ。
僕にわざわざ許可を求める連絡が来ることはない。なのでいつも大量の貴族が面会に来てもみくちゃにされるのだ。
はあ、名が売れると辛い事もあるね。
とりあえずあんまり待たせるのも悪いので、入室許可を与えることにした。
「どうぞ」
「失礼します」
ふむ、身なりはそこそこ。位は中堅貴族の子爵ってところだな。そして面会は始まった。内容はいたってシンプル。今回の件とは関係はなく、単純に我が領地の特産品である魔法具をいくらか提供してほしいとのこと。勿論それくらいの話なら当然オーケーだ。むしろビジネスができるんだから断る理由がない。
最近の我が領は魔法具以外にもたくさんの特産品が生まれている。農業が盛んになってきておコメも生産できるようになってきた。
正確にはイネに似た植物なんだけど、これが結構おいしい。そして野菜に果物、その上家畜の飼育にも手を付けられるようになったので前世で言う豚や牛、鳥に分類されるお肉類も充実してきた。
僕の領地の経済状況、食糧状況はもはやほかの領と比べても圧倒的と言っていい。
今となってはシュナイダー伯爵と背中合わせで王国の食糧供給を支えている。という訳なので僕の領地は今いろんなものが豊富に揃っていてこうしてよくそれらの特産品の提供を頼まれるのだ。
そして今回はそんなたくさんある中で魔法具が欲しいとのことだったので一番儲かるビジネスなので二つ返事でオーケーした。
ちなみに取引相手は王城勤めのものすごくまじめな貴族なので悪事に巻き込まれるなんて言う心配もない。
その後も何名かの貴族と取引の話をし、面会は終わった。そしてすぐに使用人さんに呼ばれて謁見の間に案内された。
中から声が聞こえてくる。
「アレン・ベッケラート・ラント辺境伯のご入場です!」
中から拍手が聞こえてきたと同時に大きな扉が勢いよく開かれた。
レッドカーペットの上をすたすたと歩いていく。
そしていつも通り、陛下から少し離れた位置で片膝ついて跪く。
「よくぞ召喚に応じてくれた。面を上げよ」
「はは!」
「ラント卿、此度の活躍実に見事であった。王国を再び救ってくれたこと、全王国民を代表して感謝の意を表明する」
「勿体なきお言葉、身に余る光栄でございます」
「うむ。ついては報酬のことなのだが、バルツァー卿」
「は!」
そうしていつも通り報酬の内容が粛々と説明されていく。まずは勲章から。
聖金十字竜王勲章 一つ。世界規模の脅威討伐の為。
金剛一等勲章 二つ。準魔将以下大量の悪魔の討伐および貴重な竜魔導師の人材の救出。
金剛二等勲章 一つ。大規模な戦闘であったにもかかわらず被害を最小限に抑え、人類に貢献した。
金剛三等勲章 一つ。人類の危機にいち早く駆け付け、これに対処した為。
白金一等勲章 一つ。危険な戦地に自らの意思で立ち向かった為。
次に報酬金。金剛貨20枚 白金貨37枚 金貨56枚 大銀貨100枚。
そして、
「最後の報酬は陛下よりお伝えいただきます」
「うむ」
え、そうなの? てっきりバルツァー公爵が全て言うのかと思った。
「アレン・ベッケラート・ラント辺境伯!」
「は!」
「そなたを正式に王族の一員と認め、公爵位に陞爵するものとする!」
え? 今、なんて? 王族? 公爵? どういうこと?
他の貴族もさすがにざわついているな。だってそりゃそうだろう。僕が王家に婿入りした場合ならまだしも、ビアンカが僕の家に嫁いできた形で僕らの結婚は執り行われた。
つまり僕は王族と結婚しているが、その王族はすでにその血縁関係を名乗ることは禁じられている。何故ならビアンカは僕の家に嫁いできたんだ。もうただの貴族婦人だ。
「どうしてという顔をしておるな。理由は簡単じゃ。おぬしは我が血族に婿入りしたわけではなく、ビアンカがおぬしの家に嫁いだ”降嫁”という形だ。故におぬしが王族を名乗るのはおかしいと思われるだろう。だがそもそもおぬしは我が王家と別家とはいっても余の義理の息子となったのには変わりはない。そして辺境伯位ではむしろ不足なほど功績を立てておる。これらの条件が合致した為特例としておぬしは王族入りが認められたのだ」
「そ、そのようなことが可能だったのですか?」
「ふむ、本来ならば不可能なことだ。しかしおぬしの活躍ははっきり言って一般的な法律の範疇に収まるものではない。故に新たな法律も作らねばならないとまで感じた次第だ」
「そ、そうでしたか」
「そういう訳なので、新しく法律を制定するまでは少し時間が足りなかったが、それも時間の問題であろう。制定自体はもうすでに決定事項だ」
「承知いたしました」
そうか新しく法律ができるのか。
「どうだ? 引き受けてくれるな? 領地は今のままだ。せっかく発展してきたというのにもう出て行けとはさすがに言わぬ。爵位と権限だけ上げることとした」
「はは! 謹んで拝命いたします」
「よろしい! では、アレン・アンドレアス・ベッケラート・ラント新公爵! 此度の活躍、誠に大儀であった!」
「はは! 恐悦至極にございます!」
「ではこれにて、謁見は終了といたします」
パチパチパチパチパチッ!
ものすごい盛大な拍手を沢山の貴族からいただいた。中にはものすごい剣幕で僕をにらんでいる貴族もいるけどね。
まあ、それは放置でいいだろう。何せ彼らも今僕に表舞台から消えられると取り返しがつかないこととなるだろうから。
こうして僕は王族入りを果たした。そして初代ラント家当主であった僕が王族となったということは今後も我が一族は公爵家で、これからも王家と縁をもって縁談なんかを持ちかけていただければずっとアンドレアスの姓を名乗ることも可能だ。
なんかものすごい展開になってきたな。
ただこれで浮かれていてはいけないよな。今後もより精進して頑張って立派に貴族をやっていこう。そして家族も、大事な人々も、そしてアンドレアス王国民もみんなを守っていけるように。
遂にここまで登ってきましたね! 少しトントン拍子な気もしますが、それはもともと彼が上を目指していたので当然の結果なんでしょうね。
本日もありがとうございました!
申し訳ありません。思ったより話が進んでいなかったので、変更しようと思っていたタイトルをそのまま使ってしまいました。先ほど変更予定だったタイトルに変えておきました。
混乱された方もいらっしゃったと思います。申し訳ありませんでした。