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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第四章 人類守護奮闘編
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巷で噂の竜魔導王?

お待たせしました。お楽しみいただけると幸いです。

 激しい稲光や爆炎、氷塊、岩石、漆黒の魔力がぶつかり合う異質な戦場……


 もはやその場所は生半可な力しかない生き物では生存できる希望すら無い死地と化していた。


 異常に濃い魔力濃度、爆炎が飛び交うことによって消費され尽くした酸素、氷が辺り一面に広がることによって極端に低下した気温、歪な形の岩石がそこかしこにあることによってまともに歩くことができず、もはや一つの荒野が出来上がったのではと錯覚する土地の変貌ぶり、稲妻が雨のように降り注いだことによって溶岩のように溶解した地面……



 もはや生き物が足を踏み入れることはできない有様だ。このままいけば、新たな自然環境が誕生しそうな状態だ。


 人と悪魔という生き物の手によって誕生した場所が自然環境となり得ると言うのがある意味異常なのだが……


 元々あった王都の隣の領の安全確保がアレンの仕事であったが、そんなもの面影すらなかった。その領地の中心部だけとは言え、もはやこの土地は機能しないし、再建も不可能。戦いが終結しても別の場所に領地を移さねばならないだろう。

 地球の日本の領土面積で言えば、大阪府の半分程の土地がまるまる消滅したことになる。

 普通に考えて大損害である。アンドレアス王国は大国と言えど、そうポンポンと広大な土地を新たに貴族に与えてやれるほど豊かなわけでも無い。というよりそんな国力を持った国など存在しない。

 だが、住民の避難がエデュアルトのおかげで済んでいたのが不幸中の幸いであろうか……


 



 そんな状況に陥ってもなお、その地獄の渦中に(たたず)む影が3つ。


「まさか本気を出した俺様にここまで食いついてこれる人間がいたとはな。いやまあおめえら竜魔導師だしある意味もう人間じゃなくなったのか?」

「確かにそうとも言えるね。というか君の言ったことそっくりそのままお返しするよ。僕の相棒たちを5体全員顕現させたのにまだ耐えるとか……ほんと化け物すぎでしょ」

「左様ですな。流石のわしもあと少し戦えば立ち眩みがしてきそうですじゃ」

「いや、貴方はむしろよくやってくれた。ここからは身の危険を感じたらすぐに戦線離脱をしてね」

「御意」

「へッ、俺様が強いのは当たり前だ。悪魔だからな。生まれながらにして冥界の最強種族なんだからな」



 なるほどね。冥界というのは確か彼らの住む世界だったと思うけど、その世界でも強者なのか。まあ当然か、これほどまでに力を持った種族がそうポンポンと生まれてたらとっくの昔に世界は滅んでるよね。


「とにかく君を倒さないとこの時代の人類は前に進めない。ここできっちりと滅ぼさせてもらうよ」

「何度も言うようだが、出来るもんならやってみな!」

「ならお言葉に甘えて、『万有引力(ばんゆういんりょく)』!」

「ぬォッ! っと、小賢しい! 『冥界(めいかい)番犬(ばんけん)』!」


 僕の闇の引力と、それを食い破らんとする地球で言うまさにケルベロスのような禍々しい姿の三つ首犬がぶつかり合った。

 ものすごい魔力圧のぶつかり合いと衝撃波でまた更にこの土地を死の大地へと作り替えていく。


「援護しますぞ! 『氷輪斬(ひょうりんざん)』!」


 エデュアルトさんの上級氷魔法がヴェルノートに向かっていく。僕の魔法を相殺するのに夢中で無防備な状態のヴェルノートに見事一撃が入った……かに見えたが、


「あぶねえあぶねえ。身体強化魔法と闇の強化魔法を重ね掛けしておいてよかったぜ」

「なッ!」

「マジか……」


 防御力がバカみたいに跳ね上がってる……つまり今までは身体強化などの能力上昇効果を使っていなかったか、あるいは使ってはいるがそんなに強い強化を掛けていなかったか、か。

 相手によって使い分けるために敢えて弱い魔法を開発する人もいるからね。

 もしかしたら彼もまたそのうちの1人なのかも。


「よぉ~し、そんじゃあどんどん行くぜ!」

「だったら!」


 僕は体に氷の強化魔法を纏った。これで身体強化と重ね掛けだ。さらにエデュアルトさんからかけてもらった強化魔法もある。

 今の僕の身体能力は人間の限界を超えている。


「ふんッ!」


 僕は一気にヴェルノートへと距離を詰めた。


「ほお~?」


 彼が感心したような顔をしながらこちらに拳を向けている。僕も拳で応戦した。

 両者の拳からそれぞれ闇と氷の魔力がはじけ飛んで衝撃波を放った。一瞬で(えぐ)り飛ばされる大地にもお構いなしに僕らは拳や足をぶつけ合う。そしてわかったことがある。彼の防御力が極端に上がった理由、それは闇の強化魔法のおかげだ。さっきから僕の拳から魔力が吸い取られている。

 おそらくは自分に触れた物体を吸収していく効果があるのだろう。現に身体強化と氷の強化魔法を纏っている僕の拳がずきずきと痛むからね。僕の魔力濃度と今の身体能力のおかげで体を抉り取られることは何とか避けれているけど、それもいつまでもつか分からない。

 なるほどこういう特殊な効果を発揮するような強化魔法もありなんだな。また一つ勉強だ。僕の場合今まで単純に攻撃を防御することしか考えてなかったから、こういうのは見たことも聞いたこともない。現にルシファーも彼の闇の魔力の使い方に感心しているようなそぶりを見せているし。


 このままいけばジリ貧でいつかは僕が体を吸い込まれて終わりだろう。

 だけど残念だったね。それは身体強化や普通の放出系魔法しか使えない人の場合だ。僕の場合はこれがある!


「『剛靭結界(ごうじんけっかい)』!」


 伝説級の結界魔法だ。結界魔法は扱える人が少ないからこのまま行ければ彼の勝ちだったであろう。でも僕はその少ない人たちのうちの一人だ。

 身体強化はあくまでも運動能力を上げるもの。防御力も上がるけど、やっぱりどちらかと言えば攻撃と俊敏性向きだ。

 だけど結界は違う。明らかに防御に特化した魔法だ。事実これをかけたことによりかなり拳の痛みは減った。魔力も吸い取るわけだから結界も魔力が少なくなれば効果が弱くなる。そんなわけで痛みも完全に消えたわけではない。

 でもさ、戦いの最中に激痛に(さいな)まれているのと、いないのとでは精神的余裕に雲泥の差が出ると思うんだよね。


 実際にかなり落ち着きを取り戻したし戦いやすくなった。


 これならもう何も怖くない。


「なんだ? こいつ急に硬くなりやがって! ッ! そうか結界か……お前そんなのも使えたのかよ。そこにいる爺さんだけかと思ったら、まさかお前もとはな……」

「まあね。ところでそんなに余裕でいいの?」

「あ? ッ!!」


 ドーンッ!!


 僕の拳の速度が数段早くなり、ヴェルノートを地面にたたき落とした。そんなことができた理由と言えば何のことはない。

 単純に防御に必死に回していた魔力の比率を身体強化や氷の強化魔法に当てただけ。強化魔法っていうのは魔法と付いてはいるけれど、結局のところただの凝縮した魔力を体にまとっているだけだ。

 魔法理論として確立しているのはその発動方法だけであり、それ以外の魔法陣図形や術式構成までもが確立されているわけではない。なので魔力を注ぐ量だけで威力の増減に関してはやりたい放題できるのだ。




 そんなこんなで何とか劣勢を覆せて満足していると、砂煙の中からヴェルノートが立ち上がってきた。


「ゲホッ! ゲホッ! やってくれたな! 今のは完全に油断してたぜ!」

「ここからは油断してると本当に死んじゃうよ?」


 ニコッと笑いながら僕はヴェルノートに忠告した。すると、


「へッ! ガキに心配なんぞされなくても分かってらあ!」


 ビュンッ!


 またもヴェルノートは一気に距離を詰めてきた。さっきよりも数段早くなっている。僕も真剣に応戦する。




 一方、そのころのエデュアルトと言えば、


「本当にどこまでも果てしないお方じゃあ。わしではとてもあの領域の戦いはできん。知識も申し分なく豊富で場数も相当踏んでおられる。今まで大々的に報道されてきた戦い以外にもおそらくあのお方は修羅場を経験されているのだろう。わしも先ほどの攻撃で魔力を使い切ってしまった。竜たちもわしの体に戻ってきておるし。ここは大人しく足手まといにならんように休んでおくかの」


 エデュアルトは自分の年齢の十分の一も生きていないであろう少年雄姿に見とれていた。

 そして同時に思う。


「あれが巷で噂の竜魔導王と呼ばれるお方のお力か……」


 魔法の一研究者として羨ましくもあり、同時に頼もしくもある。今代の災厄から人類を守ってくれる英雄はこれほどまでに凄まじい力を持っている。それだけでしばらく人類は安泰という物。

 今までは自分が必死に人類を守ってきたが、これからはこの人がいる。この件が終息した時にまだ自分が生きていたならば、今後はゆっくり生きていくのもありかもしれない。

 そう思ったのである。


「ラント閣下、後は頼み申しましたぞ」


 そういうとエデュアルトは深々と敬礼をした。そしてふらふらと気に寄りかかり体を休め始めたのだ。




 その後、


「うぉーりゃあッ!」


 ヴェルノートの強烈な上段回し蹴りが僕の顔面を穿たんと迫ってくる。僕はそれを両腕を顔の横に添えるようにして防ぐ。

 そしてすかさず突き上げの後ろ回し蹴りを放った。これがもろに彼のみぞおちにヒット。

 彼が一瞬ひるんだ。その隙を見逃さずに僕は両手を絡ませてハンマーの形を作り、彼の頭頂部に振り下ろした。

 空中で戦っていたが、とんでもない速度で地面に落下していくヴェルノート。


「これで決める! 『月下雷鳴(げっからいめい)』!」

「なッ!? おのれやられてたまるか!」


 ヴェルノートが必死に闇魔法を放って来るも、全てむなしく僕の雷に散らされてしまう。

 今日は偶然にも満月。我ながら粋な魔法の選択をしたなと思う。僕の体が眩く発光し、まるで月のような白さで辺りを照らす。

 そして僕の体から無数の雷が降り注ぐ。それから止めだと言わんばかりにルシファーたちも攻撃をする。

 今までにもたくさんその巨体を活かして、体当たりや魔法攻撃を仕掛けてくれていたんだけど、それでもまだまだ体力が有り余ってるんだからほんと化け物染みてるよね。


『漆黒の咆哮』


 ルシファーが全てを抉り取る闇の収束砲を放ち、


『雷轟』


 インドラが百発以上の雷の雨を降らせ、


『落氷』


 ブイがとんでもなくデカい氷塊を上空から落とし、


『大地の怒号』


 ポセイドンが地面から大量の岩塊を浮遊させ、一気にそれをヴェルノートに落とした。


「おのれッ! おのれッ! くそったれがぁーーッ!」


 彼の断末魔が聞こえると同時に一斉攻撃が彼に到達する。


 そしてそれらの魔法が降り注いだ後には何も残っていなかった。


 

 実にあっけない最後であった。これでまた一つ。大きな山場を越えたと言ってもいいだろう。

 魔力も全力で使って結構今はふらふら状態だ。

 とりあえず目的を達成できてよかった。




 僕はその後、疲れ果てダウンしてしまったエデュアルトさんを抱えながら王都に転移した。

 僕が王都に戻った時、国民は皆歓喜の声を上げた。そして僕が帰ってきたことを誰かが伝えてくれたのだろう。すぐに迎えが来てエデュアルトさんを馬車に乗せてくれて、そのまま王城に直行した。


 僕の報告に驚く陛下やその他一堂に内心、そりゃそうなるよね、と思いながらも報告を続け、陛下から壊れた街のことは気にしなくていいと言われ、ようやく一仕事を終えたのだった。


 報告後はすぐに屋敷に転移し、妻たちにもあらかた起きたことを話した。いろいろ聞きたい様子だったけど僕の疲れた様子を見てすぐに休む準備をしてくれた。

 その行為に甘えて僕はさっそく深い眠りについたのだった。


 明日からまた忙しくなりそうだという思いとともに。


 

読者の皆様へ


最近投稿間隔が長くなっておりますが、それでもお待ちいただいてお読みいただき本当にありがとうございます。今後も時間ができ次第頑張って書いてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

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