アレン、父のすごさを再認識!
そろそろ次の展開に進んでいこうかなとも思ってます。
ひょんなことから、王家を直接守護している最上級の師団の副隊長と出会って、その後自分の家に案内することになった。ちなみに騎士団ではなく、師団と呼ぶのはこの世界の戦士たちの職業の種類が多すぎるからだ。魔法騎士、騎士、魔法師、竜魔導師。これだけ多種職なのに騎士団なんて名前にすると、他の戦闘職の人たちから反発が生まれる。これが平民や文官貴族なら何も問題はなく鎮圧できるが、彼らは戦闘のプロなのだ。
少し大袈裟な例えだが、彼らをぞんざいに扱えば反乱がおきて、内戦ぼっ発なんてことにもなりかねない。この国は大国なのだ。そんな国の武官貴族やその他戦闘職の人はそれだけ強い力と影響力がある。
特に竜魔導師なんかに見捨てられでもしたら、この国の大損だ。
「いやー今回はほんとに助かったよ。とある任務でこの付近に訪れていたんだけど、いきなり彼らに襲われてね。しかも部下を守りながらだ。その上彼らを守ってやることができなかった……。情けない限りだよ」
「そんなことはないと思いますが。事実、アーベントロート卿は相当強いお力をお持ちですよね? すぐにわかります。ただ、どうしてこんな惨状になったのか、おそらく部下の方々を守りながらで全力を出せなかったのでは?」
「驚いたね。君には何でも見抜かれているような気がするよ。そうだね、彼らを守りながらだった。ただ僕はよくしゃべる方を足止めするので精一杯でもう一人の寡黙な悪魔に仲間たちは蹂躙されていった。人を守りながら戦うってことの難しさを、今日本当の意味で思い知らされたよ……」
「そうですね。僕はまだそういった修羅場を経験していないので貴卿のお気持ちすべてをわかるなんておこがましいことは言えません。ただわかるのは、僕が同じ立場だったら、それは地獄のようにつらい時間だったのだろうと思います」
「君は礼儀に関しても、人としてもすごいね……本当に……すごい」
そこからコルネリウスさんはすすり泣きを始めてしまった。こんなに強くて、たくましそうな人が人前で泣いてしまうんだ。どれだけ苦しい時間だっただろうか……察するに余りある。目の前で仲間の騎士が次々と殺される光景なんて……むしろ今こうやって正気を保てていること自体がすごいのではないだろうか。
「アーベントロート卿、何かわたくしやベッケラート男爵家でお手伝いできることがあれば、ぜひ協力させてください! 必ずお役に立ちます! 父上もこんな状況であれば協力してくれるはずです!」
「ありがとう……ありがとう。ただ、まずはベッケラート卿のご意見もうかがわねばならないからね。今はその寛大な心遣いに感謝させてもらうにとどめておくよ。まだやらないといけないこともあるし。すまない。いい年した大人が見苦しい姿を見せてしまったね」
「いえ! 見苦しいだなんて。むしろそうやって上司の方に大切に思ってもらえるなんて、部下だった騎士の皆さんもお喜びなのでは?」
「君は本当に6歳なのかい? 本当に優しいんだね。不思議と気持ちが安らぐよ。そうだね、彼らには今まで本当にたくさんの修羅場で私を支えてきてもらった。心から冥福を祈るよ……君たち、もう休んでいいんだよ。今までの働き、誠に見事であった! 君たちの勇姿は必ずや陛下にお伝えしておく! 必ずだ!」
僕は思わずもらい泣きしそうになった……こんなに素晴らしい上司とともに働けたなんて、そして自分たちの死をここまで悲しんでくれる……。幸せだっただろうな……。
とにかく今は何としてもコルネリウスさんを父上に合わせなくては!
「アーベントロート卿、もうじき我が家に到着いたします」
「ああ、ありがとう」
そして到着したのだが、今はよくわからない状況……。
「おお、アーベントロート卿、なぜこちらに? 貴殿は確か近衛師団の副隊長をされておられたと記憶しておりますが? 確か最近先代のベッカー侯爵閣下が隊長に昇進されたとか」
「ええ、そうなんですよ」
「アーベントロート卿、爵位は貴殿の方が上です。敬語など不要ですぞ?」
「いえ、私は小さいころからあなたに憧れて騎士を目指したので、爵位に差はあれど、あなたは永遠に私の目標です。公の場であればそのようにさせていただくかもしれませんが、ここではその必要もないでしょう。それに年齢でも、貴族としての経験でもあなたには及びません」
「そう貴殿がおっしゃるならよろしいのですが……」
「ご理解いただき感謝します」
「それで、本日はどのようなご用向きで? まだ子供であるアレンまでこの場に参加せてほしいというのも不思議なのですが?」
そういった感じで話が進んでいたのだ。なぜか爵位が上のはずのコルネリウスさんが父上に頭を下げて、あいさつした上に敬語まで話し出すから腰を抜かすかと思ったよ……
「本日は陛下からの要請と特級依頼をお持ちしました」
「ということは何か大事件が起きていると?」
「いえ、まだ国内では明確な事件は起きておりません。いえ、正確には先ほどまで起きてはいなかったというのが正しいでしょうか」
「どういうことでしょうか?」
なるほど、悪魔たちが暴れだした感じなのか? それとも、何かそれに関係する不可解な事件が起きたとか。それと今回、この付近に近衛師団の副隊長隊が来ていたのは父上に用があったからなのか。
「実は、最近国内でいたるところで何らかの破壊活動が行われた形跡があるのです。これといった人的被害はまだ報告が上がっていませんが、まるで大規模魔法を連発したような破壊痕があちこちで確認されています。さらには白い翼のようなものが生えた人のような生き物が空を飛んでいたと」
「なるほど、確かに不可解ですね。これは早急に原因を究明する必要がありそうだ」
「いえ、そのことですがかなり確信的な答えを先ほど得ました」
「なんですと!?」
「実はわたくし先ほどまで戦闘をしていたのです」
「は、はあ。言われてみればよく見ないとわからない程度ですが、鎧に血痕がありますね」
「そうなんです。ちなみにこれは全部私と部下の返り血です」
「な!?……」
父上はその話を聞いて絶句した。当然だろう。全部自分と仲間の返り血。それはつまり、王家直属近衛師団の副隊長隊が一方的にやられたことを意味するのだから。文官でありながら、たまに王命で従軍することもある父上なら近衛師団副隊長というのがどれほどの実力か知っているだろう。
「それは誠ですか!? 貴殿が?……敵はそれほどまでに強敵だったということですか?」
「強敵というのも生ぬるい。あれは特別な力を持つ一部の人間。そう、竜魔導師あたりに全力で相手をしてもらわなければはっきり言って勝てないでしょう。わたくしも部下を守りながらだったとはいえ、結局守り切れず全滅……。そのうえ全力で戦える状況であったとしても五分五分といったところでした」
「なんと……。そんな馬鹿な!?」
「事実です。ですからこれは陛下に急ぎお耳に入れなければなりません。そのうえで陛下のご依頼を貴殿にお届けに参った次第です」
「拝見しても?」
「どうぞ」
そういって父上は依頼の手紙を受け取った。そもそも悪魔って強すぎない? 僕は竜たちの力を借りれたから勝てたけど、あの悪魔たち、本当に強かったんだよ。多分父上でもルシファーが言った通り無理だろうね。でもあれより下の悪魔もいるみたいだしな。おそらくそれであれば父上なら負けないだろう。
「つまり今回のことを受けて、私に王都に常駐してほしいということですか? 私ではお役に立てるかどうか……」
「何をおっしゃいますか!? あなたは唯一、聖杖を扱えるお方ですよ!? 今までの人類史の中で数えられるほどしか扱えなかったとされる聖なる杖! 素の状態ですらベッカー閣下があやつとの真剣勝負は他の者と手合わせした時とは次元が違ったと申しておりました! あなた様は素の状態ですら王国最強級の魔法師であるのに、そのうえ聖杖まで手にされたら、現近衛師団隊長ベッカー閣下ですら勝負の行方は危ういとまで言わしめているのです! もっと自信をお持ちになっても良いのでは?」
「と、とりあえず落ち着いてくだされ」
「はッ!! 失礼しました! 私としたことが」
「いいのです。この私にそこまで熱く憧憬の念を持ってくださるのだからうれしい限りですよ。分かりました。久々に暴れるのも悪くないと思えてきました。ははは」
「で、では!?」
「はい。もとより不安だっただけで、陛下のおそばには参るつもりだったのです」
「本当に感謝申し上げます」
うわーマジか……。父上ってすごいのは知ってたけど、まさか英雄と呼ばれても差し支えないほどの人物だとは知らなかった。なるほど、そりゃ陛下だっていざという時は父上を頼りたくなるよな。
でもそれならひとつ気になることがある……。
「あの、一つよろしいですか?」
「む? アレンか。なんだ申してみよ」
「何でも聞いてくれたまえ。私の命の恩人君」
「ん? それはどういう……」
「ああ、いや。今はとりあえずアレン君のお話を聞いてみましょう!」
「そ、そうですな」
そっかあのことはまだ話してないんだったな。
「では、お伺いします。父上がそれほどまでにすごいというのは理解しましたが、それならば功績と爵位が少しばかり食い違っているのはどうしてなのでしょう? この間父上が訳あって文官をしているとおっしゃっていましたが、それと何か関係が?」
「驚きました。そこにすぐさま気づくとは、ベッケラート卿のご子息はかなり優秀でいらっしゃる」
「そんなことはないですよ? ははは」
父上、あなたの内心を代弁するならこうでは? いやーそれほどでもありますぞ! では? 顔が一切謙遜してませんが? まあいいや。自分で自分をほめてるみたいで恥ずかしいし。とりあえず
「では何か理由がおありなのですね?」
「そうだね」
「うむ。そろそろ教えてもいいか……実は私は内政がかなり向いていたみたいでな? それで陛下に今の領地を頼みたいといわれたのだ。ただ爵位に関してはただでさえ大きい土地を収めることになる上に陛下に直接頼られてるということから、爵位までも上げてしまうとほかの貴族が納得しないだろうということで男爵のままこの地を収めることになったのだ。ま、そのことに関して実際に声に出す貴族は子供みたいな駄々をこねてると周りに言われかねないのでいないだろうが、裏ではいろいろ私の邪魔をするだろうからな。今の状況に収まった」
「そういうことだ。君のお父上が現近衛師団隊長閣下より強いといわれているのに軍人職に就かなかったのもそれが原因だ。あまり役職を与えすぎると、ねたんで邪魔をしだす愚かな貴族がいるからね」
「そういうことだ。アレンも気を付けるのだぞ」
そういうことか。この世界の貴族でもやっぱりそういうのっているんだ~。なんか日本にいたころも異世界小説とか読む機会が多々あったけど、その時から思ってたことなんだけど、貴族って結構子供っぽいよね? ふつういい年した大人ならそんなしょうもないことで嫉妬なんかする? ふつう。まあする人はするだろうけど、この世界の貴族様方よりはしないだろうな~。
「まあ、そんなこんなで事態は急を要しております。できればすぐに王都にご同行願えませんか?」
「わかりました。伺いましょう」
「当然アレン君、君もついてくるんだよ?」
「「え??」」
こうして王都に向かうことが決まった。
まさかの親バカお父さんが英雄でした(笑) あれだけ父親がすごい的な描写をしていたのに、全く役に立たないとかだったらいやだなと思いまして。出番を増やそうかなと思いました! 今後とも読んでくださるとうれしいです!