転生!?
それは、真夏のとある日。その日はとんでもなく厳しい猛暑で、すれ違う人々が皆何かしらで日光を遮るようにしている。女性なら日傘、社会人の男性なら通勤用のカバンという風に。信号待ちなどは特に地獄だ。
僕は大宮 智。今は大学に向かっている。ようやく学校にも慣れてきた2回生だ。先日、ついに成人した。誰もが好きな二十歳だ!
放課後に友達と飲みに行く約束をしていてとても楽しみだ。そんなことを考えながら歩いていると信号につかまった……最悪だ。っとその時、
「おい、君! 前! 避けろ!」
キィィッ!! ドンッ!!
そこで僕の意識は途切れた……。そして何か暗い場所で目が覚めた。ここは? 僕は確か事故に巻き込まれたんだよな。多分交通事故だ。
激しい自己主張をする太陽を睨みつけながら、横断歩道で信号待ちをしていたんだ。そして急に誰かが叫んで、どうしたのかと叫び声の方に意識を向けたら目の前に大型ワゴン車が突っこんでくる光景……。そこで意識が途絶えたんだよな。
死が目前に迫った時スローモーションになるというあれ、まさか自分が経験することになるとは思わなかった。そんなことを考えていると、急に回りが明るくなった。
「なんだ!?」
「そんなに驚かれなくても大丈夫ですよ」
「あ、あなたは?」
「わたくしは女神です」
「……」
「な、なんですか?」
いや、なんですかと聞かれても……。神ですって言われて、あ、そうですかってなる人いる? 少なくとも僕はならないんだけど……。もしそうなら多分僕は今、詐欺とかに騙されまくって借金地獄になってる気がする。
「今とんでもなく失礼なことを考えましたね?」
ブフォッーー!! は!? 心読まれた!?
「驚いているようですが、別に読心術などはございません。ただ表情からわたくしを信じていない感じしかしなかったからです」
え? 僕ってそんなに顔に出ます?
「とりあえず話を進めましょう。あなたも今は困惑しかないでしょうし」
それはありがたいな。この自称女神様? は少し胡散臭いけど悪い人って感じはしないし。
「……」
あ、もしかしてまた? 女神様、すごいジト目だ。わかりました! 聞くから、話聞くから! マジでごめんなさい。
「はぁ~。まあいいでしょう。とりあえずあなたはご自分が自覚なさっているであろう通り、亡くなられています。当然、蘇生などは不可能。あなたは20年という若さで人生の幕を下ろしました」
あのぉ~、もう少し残念そうに言っていただけるとありがたいんですけど……。そんな淡々と言わなくても。
でもま、事実か。仕方ないよな、そうなってしまったものは。
「随分と落ち着いてらっしゃいますね」
「まあ、わめいても仕方ないっていうか、意味がないっていうか。未練がないわけじゃないけど、あの世界に帰ることは無理なんでしょう?」
「端的に言うとそうなります」
「さいですか……。ま、ほんとに仕方ないです。それよりもここは? てっきりあの世でもあってそこで暮らすものだとばかり思っていましたが」
「確かにあなた方の宗教観念ではそうなっていますね。確かに形は違えどそのような概念はあります。善悪関係なく魂を浄化し、転生生物を決定します。まあそこまで明確な基準はないですが。転生先には 格 がございますのでそれに応じて魂をそこに飛ばす感じです」
「なるほど~」
「ちなみに人間は一番格が高いです」
へ~、やっぱりそういうもんなんだ。まあ、人間は愚かだけど、頭のいい生き物ではあるから格が高いのかな? まあどうでもいいや。僕がまた人間に転生するとは限らないし。
「それと、あなたの転生先は人間ですよ。それも身分制度が存在する世界での。所謂、王侯貴族と呼ばれる存在が取り仕切っている世界ですね」
「へ?」
「ですから、王侯貴族が……」
「ストップ!! また人間になれるんですか? っていうか王侯貴族? 世界? つまりは別の世界に転生するってことですか?」
「その通りですわ。そして普通ならさっさと魂を浄化しすぐさまポイッ、なのですが、貴方の最期があまりにも可哀想だったので少し特権を与えて差し上げようと思ってここに呼んだ次第です。まあほかにも理由はありますが」
「は、はあ。でその特権とは?」
「そうですね。早速お話ししましょう。私は全世界を統括する女神、セオーティタと申します。そして、今とある世界に危機が迫っているのです。全世界を等しく統べる女神としてはこの世界を何とかして差し上げたいのですが……」
セオーティタ様はそこで初めて強く感情をあらわにした気がする。もしかして……。
「もしかして、下界に直接手を出せないとかですか?」
「驚きました……。あなたは元の世界で相当優秀な学生さんだったようですが、どうやら今回の人選は間違ってはいなかったようですわ。あなたにやっていただきたいことがございますの」
「そう言ってもらえて嬉しいです。やってほしいことと仰いましたが具体的には何をすればよいのですか?」
「はい。まず第一にコズモスという世界を救っていただきたいのです。具体的にはこれから起こるであろう災厄を未然に防いでいただきたいのです。そしてこの世界にかなり力のある人間として転生してもらいます。やり方は自由です。あなたの思うままに行動してください。私はあなたに力を与えられるだけで、それ以外はお役に立つことができないのです。どんな災厄が起こるかも予兆がわかるだけでそれ以外は何もわからない」
「ちょっと待ってください! いきなりそんなことを言われても。それに僕は元は一般市民のしかもただの学生ですよ!?」
「お気持ちはわかります。わたくしもあなたの立場ならそう言ったでしょう。ただあなたを選んだのは何も適当というわけではありません」
適当じゃないって、じゃあなぜなんだ? 僕こんな大それたこと頼まれるような偉大な人じゃないよ? 全く理解できない。でもここまで言うってことは何か理由があるのかな?
「理由を説明しないわけにはいきませんね。ご説明します。理由はわたくしが直接力を与えて転生させることができるのは"魂力"といわれる魂の力がかなり強い者でないといけないのです。これは何らかの因果関係があるわけではなく、本当に偶然です」
「こんりき? それが強い者には神様から直接力を受け取れると?」
「その通りですわ。ですからあなたにしかできないのです。お願いできませんか?」
女神さまにお願いされちゃったよ……。でもこれだけ丁寧に僕にも理解できるように事情説明までしてくれて、しかも頭まで下げられちゃったらもう受けるしかないよな~。それに女神様、超絶美女だし。女の人に頼られたことってあんまりないから、ちょっとカッコつけてみたい自分がいたりする……。
「わかりました! お受けします!」
「本当ですの!?」
うわ~、女神さまの食いつき半端ない。勢いで受けちゃったけど、結構この状況にワクワクしてる自分がいることに驚きだ。よし! 覚悟を決めよう!
「はい。ここまでお願いされて、しかも普通なら渡せない強い力まで授けてくださるとおっしゃいました。しかも神様自ら頭まで下げられてしまっては受けないわけにはいきません!」
「ありがとう……。本当に感謝していますわ」
うん。自分でも相当かっこつけた自覚はある。でもいいんだ。前世は残念な結果に終わったし、残してきた家族とかにもう一度会いたいななんてことは思うけど、もうそれもできないんだよな…ただ悔やんで何もしなくても仕方ないし、今回の人生を精一杯生きればいいだろう!
「ではあなたの出生に関してもできる範囲で少しだけ調整を加えておきましたわ。わたくしがお助けできるのはここまでです。どうかご武運を」
「わかりました。何とか頑張ってみます! お世話になりました!」
こうして僕は、創作物の世界の話のような、所謂、異世界転生というやつをすることになった。これから何が起こっていくのか不安で仕方ないけど、頑張るしかない!
今回初投稿です! まだまだ至らない点はあるかもしれませんが頑張ります! 面白ければブックマーク、評価をしていただけるととてもうれしいです。まだ初心者なので、投稿した作品に編集を加えることもあるかもしれませんが、温かく見守っていただければ幸いです。これからよろしくお願いいたします。