85.最終章<真夏の大冒険>「パンダでお熱」
『作新祭』は終わった。
時刻は18時。
今は家に帰って横になる。
太陽と数馬と別れてすぐ、俺は立ち上がれる程度まで回復。
外部から来てる保健師の先生にも迷惑かけたくなかったし、先生に早めに休んだ方が良いと促され、帰れるうちにすぐに家に帰る事にした。
太陽と数馬には部長に伝言頼んでたし。
そういえばスマホブルブルなってたけど、まあいいか。
お昼食べてないし、お腹空いたけど、しんどいからもう寝ようかな。
(トントン……ガチャ!)
「失礼しま~す。お兄ちゃん大丈夫!?」
「紫穂か、どうした?」
「どうしたじゃないよ!スマホいくら電話してもラインしても繋がらなかったから心配してたんだよ~どこにいるかも分からなかったし」
「悪い紫穂。パンダになっててスマホ全然見てなかった」
「意味分かんないしダメだよ~ちゃんと連絡してよ~」
昼間から俺のスマホが鳴り続いていたらしい。
紫穂がわざわざ心配して家まで来てくれた。
朝、中学校の友達と一緒に来た時だけ会って、結局日中連絡できず仕舞いの馬鹿兄貴。
連絡するとか言っておいて結局しなかった。
晩御飯食べて帰るのに、嫁に連絡しないのと一緒の俺。
朝からパンダストラップの事で頭が一杯で紫穂には悪い事をしてしまった。
家に体温計が無い事も知っている紫穂。
俺の額に手を当てる。
「熱い!?ダメ、もう寝てなさい」
「マジ?なあ紫穂……ちょっと俺、お腹空いてきたんだけど……」
「すぐに用意するから寝てなさい。命令です」
「ら、ラジャー……」
紫穂に甘えてしまった。
こういう病気とかの時、1人身はやっぱしキツイな。
紫穂が来てくれて助かる。
(ガチャ!)
「キャーー!冷蔵庫空っぽ、大変だわ!」
うるさいな。
大声で叫ぶなよそれ。
「お兄ちゃん寝てて。わたし、なんか買ってくる!」
「紫穂、俺の財布そこに」
「動くな馬鹿兄貴。それくらいのお金持ってるから」
「ら、ラジャー……」
紫穂が家を飛び出して行く。
部屋に1人。
紫穂がいないと、とても静かな部屋。
はぁ~なにやってんだろな俺。
今日は『作新祭』あるからバイト1日休みだし。
明日は朝からバイト入れてたっけ。
スマホのアラームだけセットしとこう。
貧乏暇なしと。
治ってると良いな、明日には。
(トントン)
ん?
ドアをノックする音。
紫穂のやつ、やけに早い帰りだな……。
もう戻ってきたのか?
(美雪、早く入っちゃいなよ)
(押さないの沙羅)
なんか俺の家の玄関前で女の子の声がする。
遠くてほとんど聞き取れない。
(カチャ……)
「失礼します。高木さんいますか?」
「えっ?」
「ああ、大変!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ガチャ!)
「キャ!?なにも入って無いわ」
「信じられない~」
うるさいよ。
俺の家に来る女の子は次々と冷蔵庫を開けては酷評していく。
「あんなに頭が良いのに、なんでこう、いい加減な人なのも~」
「タッキーらしいっちゃらしいわ……」
冷蔵庫をのぞいて驚いているのは一ノ瀬美雪と桐生沙羅。
空っぽの冷蔵庫に絶望する2人の女の子。
俺そんなに女の子悲しませるの得意なのか?
今18時過ぎか……2人には挨拶しないで帰ったし、気になって寄ってくれたのか?
なんでこいつらが俺の家知ってんるんだろ……。
一回布団に入ると、体がしんどくてもう起き上がれない。
(ピタッ)
「なっ」
「あなた、こんなに熱出てるじゃない」
「タッキー大丈夫?」
いきなり俺のおでこに手を当てる一ノ瀬。
「わたし、何か買ってきます」
「わたしが行くから美雪はここに残ってなよ~」
「そんなわけにはまいりません」
「だ、大丈夫。妹が今買いに行ってる」
「え?」
「妹さん?」
それから2人は少し静かになる。
俺が布団に横になってるのをビックリしている様子は伝わってくる。
部屋の中を少しキョロキョロしている。
男の家にいきなり上がってくるとか、何考えてんだこの子たち?
まあ知らない中ではないからいるのは別に構わないけど。
もう俺は動けない。
洗面所の方から水の音が聞こえる。
しばらくすると一ノ瀬が俺の寝ているところに戻ってきた。
水で濡らしたタオル。
俺の額にそっと乗せてくれる。
「朝日さんと結城さんから聞きました。あなた、あんな長い時間頑張ってたなんて知りませんでした」
俺は布団に横になったまま話を聞く。
なんか半泣きしてるし。
成瀬かよこの子?
桐生は終始、一ノ瀬が話すのを隣でそっと見守る。
「ごめんなさい」
「えっ?なんで謝るんだよ」
「ずっとブースにいたから、そんな無茶してるなんて気づかなくて」
「別にたいした事してないって。頑張ったのはそっち」
「わたしが言いたいのは、なんで私なんかのためにそこまでしてくれたのかって」
「美雪」
「……ごめんなさい」
一ノ瀬が興奮したように話し始めると、それを制止する桐生。
「そんなにみんなが心配してくれてるなんて知らなくて……黙って帰って俺も悪かった」
「そうだよタッキー。朝日君たちに聞いてビックリして保健室みんなで行ったら、もういなくなってて大騒ぎだったんだからね」
「先生に帰って良いって言われたから帰ったんだよ。ちゃんと南部長に大丈夫って」
「たっだいま~~……知らない女……」
(バサッ)
「わ、わたし、帰りま~す!」
「ちょっと待て紫穂!」
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「失礼しま~す」
「うっーす」
「あっ!シュドウ君いた!」
成瀬、岬、神宮司が揃って入ってくる。
「一ノ瀬さんに桐生さん……紫穂ちゃんも来てたんだ。高木君、きっと冷蔵庫空っぽだと思って買ってきちゃった」
「またいつでも食べればいいっしょ。先にドロンしやがって、相変わらず連絡しないし」
「うるせえよ。パンダになってたからスマホ持てなかったんだよ」
続いて太陽と数馬が続く。
「おいシュドウ、全然大丈夫じゃないだろお前」
「守道君をやっぱり1人にするんじゃなかった」
「俺がブースに戻れって言った」
俺の布団を囲まれる。
なんでみんな俺の家来るんだよ……。
「シュドウ君、お熱なの?」
「お前来るなって……ちょ!?」
(ピタッ)
葵が自分のおデコと俺のおデコくっつけやがった。
俺もみんなも絶句。
「お熱……熱いよシュドウ君!どんどん熱くなってる!」
「お前のせいだろ!離れろ光源氏!」
(ガチャ!)
「失礼しま~す……みんないる……高木と葵ちゃん……なにチューしてんだ貴様!」
「もう、うるさいからみんな帰れ!」
真弓姉さんに楓先輩。
南部長に生徒会長。
なんなんだよ、揃いも揃って。
今日は6月30日。
明日から7月がスタートする。
気象庁の発表では今日、今シーズン初の真夏日を迎えたらしい。




