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79.「出産祝い」

 1週間後に控える『作新祭』。

 土曜日に生徒会役員によって各部活が必要とする物資の購入手続きが完了。


 月曜日の朝。

 学校に登校すると、朝からさっそく軽トラックが何台か正門から校舎までゆっくりと行き来する。

 土曜日に調達した食品関係以外の物資を搬入しているに違いない。


 正門には『作新祭』開催を告知する大弾幕がすでに貼られる。

 今週は校内も徐々に、『作新祭』に向けた準備が本格化するに違いない。


 昼休憩

 パンダ研究部の部室。


 太陽と成瀬。

 岬に数馬。

 いつものように昼休憩は校舎1階のパンダ研究部の部室で過ごす。



「はい、僕と守道君からのお土産だよ」

「うわ~横浜だ~」

「これ絶対おいしいやつじゃねえか。サンキュー数馬、シュドウ」

「おう。いつももらってばっかだからな。ほれ岬」

「生徒会っしょそれ?」

「俺が個人的に買った」

「……じゃあ食べる」



 生徒会アレルギーの岬。

 横浜の赤レンガ倉庫で買った横浜ハーバーをパン研部室の机に置く。



「おいしい~。わたしこれ好き」

「そうだ成瀬。お前と真弓姉さんに渡したいものがあった」

「えっ?高木君からなんてめずらしいね」

「なんなんだよそれ」

「ははは」



 昔からの俺を知る太陽も笑う。

 そうそうあれ。

 コンビニのバックヤードに置きっぱなしにしてたの忘れるとこだった。



「重いから、今度成瀬の家に持ってくわ」

「取りに行くよわたし?」

「良いよ別に。今日バイト帰りでもいいか?店にあんまり置いときたくなから、9時過ぎでも平気?」

「お母さんたちに言っとくから大丈夫だよ」

「オッケー」

「なんだろ……ふふっ」



 今日のバイト帰りは成瀬の家に寄る……と。

 ちゃんとスマホのスケジュールにいれとかないとすぐに忘れてしまう。



「うちには何かないわけ?」

「お前この前パンダやっただろ?」

「は?まさかマックのパンダ言ってんの?」

「お前生徒会アレルギーだから、俺が横浜行くって話聞かなかっただろ?ほれ、横浜ハーバーもう1個」

「死ねし」

「なんだよ岬、機嫌悪いな」

「ははは」



 太陽や成瀬たちに、土曜日に生徒会で行った一括購入の話。

 野球部のお食事ブースで出店するフランクフルトなどの食材大量仕入れについて報告。



「成瀬が売り子なら余裕だな」

「そんな事ありません。わたしもだけど、神宮司さんも売り子です」

「マジか。レジ大丈夫かあいつ?」

「シュドウ君、うっす」

「げっ、光源氏!?なんだよお前、よく迷子にならずに1人でここにたどり着けたな」

「えへへ~」



 昼休憩の後半。

 太陽たちと話をしていると。

 神宮司がパンダ研究部の部室に遊びにくる。


 野球部の手伝いをするかたわら、パン研の幽霊部員でもある神宮司葵。

 楓先輩と友達の南夕子部長とも仲が良い。


 南先輩にこっちこっち手招きされて、小走りに先輩の元へ駆け寄る。



「はい葵ちゃんポッキーよ~」

「わ~い」

「はい、あ~ん」

「ぱく」



 南先輩が新しいパンダの飼育を開始したようだ。

 葵は美味しいものがある場所には迷わず1人で来られると語る。


 ポッキーにつられて無事到着したのかこの子?



「失礼しま~す」

「失礼します」

「うわ、でた」

「こら高木。わたしの顔見てそれはないんじゃない~」

「痛てててててて!?痛い、痛いっすよ姉さん!?」

「真弓、守道君いじめない」

「は~い。もう~楓は高木に甘いんだから~」



 俺の天敵。

 真弓姉さんと楓先輩までやってきた。


 俺のほっぺた重症。

 今日は一体どうしたんだ?



「はい、それでは月例のパン研部会を開催しま~す」

「は~い」

「あれ?今日部会でしたっけ?俺聞いてないですよ」

「後輩君は毎日ここにくるでしょ?言う必要がありません」

「ははは」



 パン研は1カ月に1回。

 部室に集まって部会を開く決まり。


 南部長が学校から部費を調達するための大事な儀式。

 ただ今月の部会に限っては、それ以上の意味があった。



「『作新祭』では、我がパンダ研究部もブースを出店致します」

「おお~」



 パンダ研究部ではない太陽や成瀬もなぜか部会に参加。

 パン研のブースとか何するのか全然分からない。



「え~それでは部長のわたくしよりご提案。なんとこの度~無事にシャンシャンが双子のパンダを出産しました~」

「おお~」



(パチパチパチパチ)



 南先輩が3度の飯より愛するシャンシャン。

 ついにオスパンダとの愛が実り、双子のパンダが誕生したらしい。



「トップニュースで昨日速報してたよね夕子」

「そうなの真弓ちゃん。もうわたし、感無量だわ」

「あんたのパンダ好きは相変わらずね」



 そこで南部長から、今年の『作新祭』で出店するパンダブースの概要が説明される。



「双子パンダのネーム募集?」

「そうなの。いま上野動物園で双子パンダの名前の募集してるの。『作新祭』にはたくさんの親子連れが来場されるから、みんなに参加してもらう良い機会だと思って」

「まあ素敵」

「そうでしょそうでしょ楓ちゃん。みんなでパンダちゃんの名前プレゼントしてあげるの」

「素敵~」



 神宮司姉妹が南部長の案に大賛成。

 出産祝いをもらうシャンシャンも感無量であろう。


 家族連れが喜びそうな企画。

 俺は……なんでも良いかな。


 

「岬さんは他に何がやりたい?」

「わたしも部長に賛成です」

「葵ちゃんは?」

「わたしも賛成~」

「じゃあ決定~」

「ちょっと部長。俺は?俺の意見は?」

「いらないでしょ後輩君の意見」

「ヒドイですってそれ」

「ははは」



 パン研は今日も平和。

 

 今週の土曜日。

 パン研ブースの出し物が一瞬にして決定する。

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