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51.「周囲の目」

 S1クラスを出てきた3人から突然の生徒会への勧誘。

 岬の外見に食ってかかるところから、校則や風紀への厳しさを感じる。

 岬は心証を悪くしたようで、はた目にも機嫌が良いようには見えない。


 S2クラスを出た廊下で待っていると、SAクラスから太陽、S1クラスから成瀬が合流してくる。



「ようシュドウ、今日は外か?」

「パン研の部室で食べられるから1階で良いか?」

「良いのかな高木君?私たちも一緒で」

「部長のオッケーもらってる。その代わりパン研辞めるなだってさ」



 岬も加えて4人で向かうのは校舎1階のパンダ研究部。

 旧図書館には10人程度は座れる広めの部屋が1つある。


 出入りのあるS2クラスで食事をしていれば、間借りしてる隣の席の生徒が戻ってくる。


 すでに南先輩には使用許可をもらっている。

 部長は2つ返事でオッケーしてくれた。

 今日からパン研部員特権で旧図書館の一室で昼休憩を過ごす。



「シュドウ君」



 部室に向かおうとすると廊下で声を掛けられる。

 S1クラスからひょっこり出てくる神宮寺葵。

 相変わらず俺をあだ名で呼び続けている。

 無表情だった彼女は視線が合うと笑顔になってこちらに歩み寄る。



「お前はこれから姉さんとこか?」

「そだよ、今から行く。シュドウ君も来る?」

「俺たちはこれからパン研。お前も暇なら顔出せよ、俺たち部員だしな」

「えへへ、そうする。昨日は楽しかったね」

「あ、ああ」

「バイバイ」



 胸の前で小さく手を振る神宮寺は、楓先輩たちがいるであろう場所へと消えて行った。



「おいシュドウ。楽しかったって何がだ?」

「パンダの話だろ?昨日は動物園で部活」

「昨日こいつ葵さんとずっと一緒」

「その言い方誤解されるだろ岬」

「そうなの高木君?」



 4人で話ながら1階の旧図書館に到着。

 入り口左手にパン研の部室として使っている部屋がある。

 部室に入ると南先輩はパソコンとにらめっこをしていた。



「先輩、お疲れ様です」

「う~ん今忙しいから適当にしてて」

「おいシュドウ、南先輩なにしてんだ?」

「パンダのシャンシュンをリアルタイムで観察してるんだよ」

「マジか」



 観察に忙しい先輩はそっとしておき、勝手に4人で食事を開始する。

 パン研は果てしなく自由だ。


 4人で空いている広い机の上に食事を広げる。

 俺がカバンから取り出したパンを見て、成瀬から厳しい指摘が入る。



「高木君、そのカレーパンなに?」

「こいつ朝店長から大喜びでそれ貰ってた」

「バラすなよ岬」

「シュドウ、食生活が逆戻りしてるぞ」

「高木君、せめて野菜もう少し食べようよ」

「お前らは俺の保護者かよ」



 4人で食事をするようになってから、周りの目を気にして成瀬の作ってくれる弁当を断るようになっていた。

 話の中心はイジられ役の俺ばかり。


 食事が始まってからも、昨日の俺の行動に関する尋問が開始される。

 神宮寺を特別展に連れて行った事はすでに全員にバレている。



「先輩に頼まれて特別展示連れて行っただけだろ?朝からあの子何回も迷子になって本当大変だったんだから」

「そうなのか?」

「気づいたら消えてた」



 本当は色んな事が起こったが、すべてを話す事はできない。

 昨日十二単の記念撮影をした神宮寺の写真。

 夜になると気にしてしまい、スマホの画像をマジマジと眺めてしまった。

 そんな事は当然この場で話せない。



「高木君、中間テストもまた満点だね」

「あ、ああ。まぐれだよ成瀬」

「もう私の知ってる高木君じゃないみたい」




―――成瀬の知らない俺。



―――俺自身が知らない俺に、突然生まれ変わったような気持ちになる。





「こいつクラスでも全然自慢しないし」

「はは、お前らしいなシュドウ」

「俺らしいか?」

「だがまあ、もう少し主張してもいい気はするな。最近こんなに頑張ってるんだからよ」

「俺は現状維持で満足だよ」



 中間テストでまた満点を取った。

 昔から一緒にいる成瀬や太陽も、俺の変化に驚いているはず。


 午前中、今まで話した事も無いクラスメイトから声をかけられるのはストレスに感じた。

 太陽たち4人で集まるこの時間は、安心できる俺の大切な時間に間違いない。

 


 食事を終える頃、今週何処かでマックに4人で行く話になる。

 俺のスケジュールを真っ先に確認したいと、スマホを取り出しスケジュールアプリを開く。

 スマホに付けたストラップに成瀬が反応する。



「高木君、それ可愛い」

「ああ、部員になったらこのストラップ付けろって部長命令。成瀬も入部したら貰えるぞ」

「私は掛け持ちはしません」

「相変わらず真面目だな」


 

 どっしり座り竹をむしゃむしゃ食べているストラップのパンダ。

 なにげにスマホに結んでみたが、ズボンから取り出しにくい事この上ない。



 ストラップの話題を話していると、パソコンでパンダの中継を見ていた南先輩から声がかかる。



「あ~思い出した。後輩君、パンダストラップ真弓ちゃんと楓ちゃんに持って行ってあげて」

「先輩が渡して下さいよ」

「私今忙しいの、分かるでしょ?」



 先輩から無理矢理パンダ2頭を渡される。

 取り扱いに困るよこれ。

 真弓姉さんは成瀬に渡してもらうにしても、楓先輩とは普段接点がない。

 神宮寺にでも託してみるか?



「後輩君。楓ちゃんたちなら校舎の中庭、いつも噴水の近くにいるよ」

「何で先輩それ知ってるんですか?」

「発情期が5月で終わるから、普段は私楓ちゃんたちとお茶してるの」



 南先輩は行動のすべてがパンダとリンクする。

 先輩の話では3月~5月に年一度しかないパンダの発情期。

 先輩も1年に1度の忙しい毎日を迎えるらしい。

 もはや動物園の飼育員に就職する勢いを感じる。


 お茶会が始まっている楓先輩たちに遠慮して、相変わらず一緒に行く事を拒否する太陽と成瀬。


 どうするこのパンダ?

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