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第54話 鳥神(ちょうじん)


 一連の爆発が収まった時、グレーターデーモンの姿は、無残なものになっていた。


 いろんな部分が吹き飛んで、なんだか真っ黒な枯れ木に赤いしみがついているようになっている。それでも宙に浮かんでいるのはすごいことなのだろうがこれでは何もできないだろう。頭も半分以上吹き飛んでいるし、下顎もなくなっている。魔法を唱えることも仲間を呼ぶこともできまい。


 そのグレーターデーモンが後ろに立つじじいの方に向かって移動を始めた。


 じじいがなにやら叫んで、駆けだしたのだが、どう見てもグレーターデーモンから逃げているように見える。


 どうなってるのか分からないが、自分で召喚したモンスターから逃げている? バカなんじゃないだろうか。


 じじいの鈍足とボロボロになっているとはいえ宙を滑るグレーターデーモンでは速度が全く違うので、じじいはすぐに追いつかれてしまった。


 ひーーーー!


 じじいの悲鳴は可愛くないな。新しい発見だ。


 パリ、ポリ。


 手にしたピスタチオもどきを食べながらの観戦はなかなか楽しい。ピスタチオもどきの塩加減が絶妙だ。


 俺が美味しそうにピスタチオもどきを食べているので、アズランもフェアと一緒に、レーズンをめてピスタチオもどきを食べ始めた。例によって、殻は俺の方に弾き飛ばして、それをベルト状のコロが触手でキャッチして食べている。


「じいさん、グレーターデーモンに殺されるのかなー?」


「どうも、グレーターデーモンはりついて合体するみたいですよ」


「ほー、合体技がったいわざか。見ごたえあるな」


 俺とアズランは観客に徹しているのでのんきなものである。


 パリ、ポリ。


「合体したと思ったら、じじいがグレーターデーモンを吸収したぞ。おっと、じじいの目つきが変わった。あらあら、目玉が金色だ。不気味さが半端ないな。これは、じじい改め、じじい怪人だ!」


「体も大きくなって、筋肉質になりましたね。あっ! 角が出てきた。角は巻角まきづのみたいです」


「ほー、デーモンらしく巻角か、なかなかってるな。おっと、牙も生えてきてるぞ! すんげー! アゴから伸びた白髭が怪人としては似合わないが、そこは目をつむろう」


「ワクワクですね」


 ポリ、パリ。


「そうだな。さーて、トルシェと鳥神ちょうじんはあいつをどう料理するのか。せっかくだからじじい怪人もえてみれば迫力が出るのになー」


 グワオーーン!


「おっと、ファンサービスが行き届いてるな。じじい怪人、見直したぞ! だが、しかし、じじいがグレーターデーモンを吸収したら、足が地についてる。これは減点対象だぞ。そーらみろ、あいては鳥神、飛び上がったら手が出ないじゃないか」


 鳥神が翼をはためかせてまた宙に舞い上がった。そこから、羽根攻撃をしたらじじい怪人は手も足も出ないままバラバラに吹き飛ぶんじゃないか?


 おっと、グレーターデーモンは魔法攻撃を出さなかったが今度のじじい怪人には魔法攻撃があるようだ!


 じじい怪人が、いつもトルシェがするように鳥神に対して、右手を挙げて手のひらを広げた。何か出るぞ!


 もちろん、鳥神は何もしないで宙に浮いているわけでなないので、既に無数の羽根がじじい怪人に向けて高速に接近している。


 グワオーーン!


 じじい怪人が咆え、右手から透明な板のようなものが現れた。光り輝いているわけではないが、便宜上光の盾と呼ぼう。その光の盾に鳥神の羽が無数に当たり小爆発が続けざまに起こる。盾に阻まれなかった羽は、地面に当たって爆発しそこらに土塊つちくれを吹き飛ばして地面をボコボコにえぐっていく。


 俺の方にも土塊つちくれが飛んできて鬱陶うっとうしいのだが、ちょうどいいところなので我慢だ。


 隣りに座っていたはずのアズランはいつの間にかどこかに行ってしまって見えなくなっていた。


 しかし、盾のようなものを出してしまっては、じじい怪人は攻撃ができないだろう。攻撃ができないと、早晩そうばん詰んでしまうと思うが、大丈夫なのだろうか?


 おっと、つい弱そうなじじい怪人の方の心配をしてしまった。女神さまになったというのに、日本人の判官ほうがんびいき体質が抜けていないらしい。


 俺はあくまで眷属の勝利を信じて応援しなくてはならないのだ。


「こころして降りよ」


 どうせトルシェと鳥神のタッグが勝つのは分かっているので、ここから最後の詰めで気を抜かぬようにと徒然なるままに声をかけておいた。


 俺の声掛けを古文の素養のないトルシェは何と思ったのか分からないが、鳥神の羽攻撃は続いて、どんどん地面が抉れて大穴が開き、どんどん穴が大きくなっている。その穴の真ん中にじじい怪人が立っているわけで、今では、腰のあたりまで地面に沈んでいる格好だ。


 どうも鳥神・トルシェコンビはじじい怪人を地面に埋めてしまおうとでも考えているのだろうか?


 グワオーーン!


 また、じじい怪人が咆えた。今度は頭に生えた二本の角が光りはじめた。


 今度こそ何か出るぞ!


 でたーー!


 バッシーン!


 じじい怪人の角から雷のような電撃が走った。電撃は光の盾を素通りしていったが、鳥神から浴びせられる無数の羽に当たり途中までしか伸びなかった。


 今度は、常に羽の小爆発を喰らっている光の盾が、本当に輝き始めた。いい意味での発光ではなくなんだか今にも壊れそうな光だ。


 しかも、じじい怪人の立っているところだけ少し盛り上がって周囲はかなり深くなっている。足場がかなり不安定だ。下手したら、じじい怪人、転ぶんじゃないか?


 ズシャー!


 だから言わんこっちゃない。足場が崩れて、じじい怪人は大きく体勢を崩した。一緒に光の盾も消えてしまい。鳥神の爆発羽が降り注ぐ。


 ドドドドド……!


 こんなところか?


 じじい怪人くん、よく頑張りました。


「トルシェ、そろそろ決めちゃっていいや」


「はーい」


 返事をしたトルシェが、右手を突き出して、連続する小爆発に飲まれているじじい怪人に向けて、穿孔光針(注1)を撃ちだした。


 シュー。


 じじい怪人の頭がきれいに吹き飛び、その後、鳥神の爆発羽が降り注いでじじい怪人の体も文字通り消し飛んだ。






注1:閃光光針せんこうこうしん

白色の超高速高熱の光の針の束が対象を貫通する。貫通された対象は吹き飛ぶか形状を留めることができずペースト状になってしまう。


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