表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/173

第42話 三人組強盗団討伐3、信者4号


 隣りの部屋に逃げ込んだ薄毛のおっさんは、部屋の扉を閉めてはいたが、鍵が付いているわけでもなかったため、簡単にアズランが襟首をつかんで引きずってきた。


 おっさんが泣き言を大声で喚くので非常にうるさい。大抵のことではダメージを受けないこの体ではあるが、うるさいのだけは地味にダメージを受ける。ジタバタされると面倒なので、俺が右足で、おっさんのみぞおち辺りを踏んづけてやった。


 フギュー。


 おっさんの胸から空気が押し出されて変な音がした。笑いをこらえて、


「静かにしろ。じじいはさっき殺してやった。次はおまえだが、何か俺たちに提案はないかな? よーく考えて答えた方がいいぞ」


 なにか耳寄りな情報でも聞きだせたらラッキーな程度で、少し踏んづけていた足の力も緩め、話を振ってやった。


「ガハッ! ハー、ハー。会長をどこにやった? キサマたちはいったい何者なんだ?」


 こいつの口の利き方は、人に物を尋ねる口の利き方ではないが、そこは『慈悲』の心で質問に答えてやった。


「じじいは、俺のかわいいペットのコロちゃんが全部食べた。それと、俺たちはAランクの冒険者パーティー『三人団』だ。俺たちが首から下げているこの金カードは正真正銘の本物だぞ」


「た、食べた!?」


「ああ、コロに食べさせた。跡形も残さずきれいに全部食べたぞ。試しにお前の体を少し食べさせてみるか?」


「い、いやだ。やめてくれ」


「なら、早くお前が俺たちにできることを提案してみろ。俺たちの納得できる提案だったらお前が死なずに済む目もあるかもしれないぞ。それと、おまえの口の利き方はなってないな。立場をわきまえた方がいいぞ。

 アズラン、こいつの右腕をコロに食べさせても血が出ないように紐かなんかで縛ってくれるか。こいつに少し立場をわきまえさせる」


「はい」



「や、やめてくれー!」



 ちょうどアズランは丈夫な紐をどこかに持っていたようで、それでジタバタする薄らハゲのおっさんの右の二の腕を縛り上げた。


「こんなところでどうでしょう?」


「ありがと。ついでにコロが食べやすいように、こいつの腕が動かないように押さえてくれるか?」


「はい。これで大丈夫でしょう」


 アズランがおっさんの肘の辺りを踏んづけて、腕が動かないように固定してくれた。



「それじゃあ、コロはこいつの右腕を紐で縛ったところまで食べてくれ。最初は親指から順にな。ゆっくりでいいからな」


 ベルトから黒い触手が伸びて、おっちゃんの親指をチョンチョンと触る。


 おっと、これはコロのにくい演出だ。


「ヒイッ! まっ、待って、待ってください」


「それで、何が言いたい?」


「お店の口座の件もみなさんはすでにご存じのようですので、私にはこれといったみみよりな情報はありません。その代り、みなさんがあの店関係の権利書一式をお持ちなら、私があの店を切り盛りして利益を上げます」


「ふーん。

 トルシェどう思う?」


「そうですねー、意外と面白いかもしれません。わたしたちの信者獲得にも役立てそうですし、リスト商会と協力させれば利益が上がるかも。ダメならその時点で処分しても良いですし」


「信者が増えるのはいいことだな。あの感覚はたまらないからな。よし分かった。

 おい、おっさん。名前は何と言うんだ?」


 俺がおっさんのみぞおちから足をどかしたので、アズランは肘から足をどかし二の腕を縛っていた紐をほどいた。



「は、はい。私の名前はジョージ・ハットンと申します」


「わかった。ハットン、はげめよ」


「はい。全身全霊をかけて励みます」


「ならば、一度しか言わないから、良く聞くがいい。われの名は『常闇の女神』だ。試しに我を拝んでみよ。トルシェ、拝んで見せてやってくれるか」


 ここで、後光スイッチ、オーン!


 おっちゃんが目を見開いた。こうなってくると、BGMが欲しいな。


「はい。

 よく見て、まねをするように。ほらちゃんと立ち上がれ! そしたら、二回礼をする。それから二回手のひらを打ちあわせる(パンパン)。最後にもう一度礼。そう」


 トルシェがおっちゃんの横で二礼二拍手一礼を行いおっちゃんが見よう見まねで礼拝をする。アズランも少し遅れて俺に礼拝をする。


 いま礼拝をおこなった順に、三人の体が七色に輝いた。


 おっちゃんは目を見開いて、俺の神々しい姿を見つめている。


 来た来た来た来た、来ました。心地よさが冬の稲妻のようにわたしの体を突き抜けた。


 フォウ!


 四人目、ゲットだぜ!



「ハットン、これからはリスト商会と協力し合って商売をしていけ」


「は、はい」


「それと、われの目的は信者を増やしこの王都に大神殿を建てることだ」


「はい。全身全霊をもってわが主のために尽くします」


 こいつ、なかなか分かっているじゃないか。


「トルシェ、マイルズ商会の倉庫の中のものは返しておいてやろう。薬以外な」


「はーい。それと、仕事ができるように建物の中のものも適当に返しておきます」


「それから、ハットン」


「はい」


「おまえの本国はこの国といずれ戦争でもする気なのか?」


「具体的な計画は私は存じませんが、隣国や競争国を弱体化させるのは国として当然ですのでわれわれのようなものが各国で活動しています」


「理解はできるが『白い粉』はいただけないな」


「そ、それは、……」


「おまえが改心したのならその罪は問わない。しかし金輪際『白い粉』を扱うなよ」


「肝に銘じます」


「いずれ我らはおまえの国に行き『闇の使徒』の本山を叩き潰す」


「『闇の使徒』をですか?」


「我と同じ『闇』などと僭越なヤカラは全て討ち滅ぼす。わが権能は『闇』と『慈悲』だが、そこに慈悲はない」


 いいぞ、今のセリフも覚えておこう。


「は、ははあー」



Alice - 冬の稲妻

https://www.youtube.com/watch?v=j1EQy38mwL8

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ