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第18話 追跡


『闇の使徒』の覆面ふくめん男たちを追ってアズランが尾行を開始した。俺とトルシェでは尾行は無理なので、だいぶ遅れてアズランのいそうな方向に向かっているところだ。


「ダークンさん、昨日はハズレだったけど、さすがに今日は当たりですよね?」


「俺に言われても分からないが、宗教がらみの組織ってのはたいてい小金をためているもんだ。期待してていいんじゃないか?」


「テルミナの連中のアジトでも結構いい家具や調度品があったから、こっちの方がもっといい物を置いてる可能性も高いですよね!」


「そうだな。連中のアジトに落っこちている物を拾って歩くのもいいけれど、やつらの崇めている神さまだかなんだかも突き止めて息の根を止めないといけないからな」


「連中の神さまをっちゃいますか?」


「それはそうだろ。女神たる俺がわざわざ出張でばってきているんだ。単純に信者どもを根絶やしにする程度で済ませる気はないぞ」


「今回のダークンさんは意気込みが違いますね」


「よくは知らんが、神さまってのは信者の数が多ければ多いほどいいと思うんだ」


「それはそうですよね」


「逆に考えれば、神さまの数など少なければ少ない方がいい。特に似たような神さまは不要だろ」


「なるほど。それで連中の神さまを滅ぼしちゃうわけか。さすがは、ダークンさん。先のことも考えているんですね」


「まあな。そう言えば、昨日の騒動があんまり街中で話題になっていないようだな」


「大きな街だし、ああいった路地裏みたいなところがどうなろうが、一般人は気にかけないんじゃないかな」


「ここじゃあ、新聞があるわけでもないし、そんなものかもな」


「新聞?」


 とトルシェが聞き返したが、うまく答えられなかったので、そこは聞き流して、


「おっと、アズランはこの袋小路の先みたいだぞ」


 アズランの追う覆面男たちは王通りからわき道に入り、数回横道やわき道を通り、それから袋小路に入って行ったようだ。


 昼間でも陽の射さないような薄暗い袋小路には人相、風体の悪いいかにもな連中が数人たむろしていた。こういった連中は暗くてじめじめしたところが好きなのか、よくこういった場所に湧くよな。近づくとバカが移りそうで嫌なんだが、道の真ん中に立っていられては、近づかざるを得ない。


「いい女じゃないか? いい服も着てるし小銭くらい持ってるんだろ? 俺たちと遊ばないか?」


 こいつ、俺に向かって言ってるのか? バカじゃないか?


 おっと、俺は一見美女だったことを忘れていたぜ。どうも、こういった連中は、なぜか口が臭いんだよな。胃がやられてるんじゃないか? 頼むからこっちを向いて話しかけるなよ。まさに口臭暴力だ。


 口臭男が俺に絡んできて、残りの連中も黄色い歯を見せてニタニタ笑いながら俺たちの方に近づいてきた。あとの連中はまだ口を開いていないが、いかにも口臭がきつそうなくちつきだ。俺に近寄って来るなー!


 俺はこう見えてもではなく、見た目通り暴力反対主義者だ! 俺に対する暴力反対!


 これ以上この男に暴力を振るわれたら繊細な俺の精神が崩壊してしまう。


 ということで、右手で軽く暴力反対パンチを男の鼻っ柱に。


 ゴリっという軟骨の砕ける手ごたえと一緒に男の鼻が潰れ、男がそのまま後ろに尻餅をついた。見たところ白目をむいている。


 男の鼻の孔からだらだらと血が流れ出てあごを伝ってそこから着ている上着の中に垂れていった。


 後ろの男たちは、尻餅をついた男の顔から血がだらだら流れ出ているのが見えていないのか、ワイワイとはやし立て始めた。


 ただの街のチンピラを皆殺しにしては、可哀かわいそうだと思って相手をしてやったのだが、こいつらウザいな。



 そろそろ、黙らせようかと思っていたら、男達の後ろに、アズランがひょっこり現れた。ちょうどいいので、


「フェアに言って、こいつらを眠らせてくれるか?」


 俺の言ったことをフェアも理解してくれたようで、フェアがアズランの肩から飛び上がって、男たちの上に鱗粉を撒いていった。


 俺が頼んだのは『眠らせてくれ』だったのだが、立っていた4人ほどの男たちが、顔を紫にして、喉をかきむしりながら次々と倒れていった。おそらく無事だったのは、尻餅をついて白目を剥いたまま未だに鼻血をだらだら流している男だけだろう。


「あれ? この連中、死んじゃった?」


「まだ死んでないようだけど、もうすぐだろうな。放っておいてもいいよ」


 トルシェはよほど暇なのか、後ろの方で、干しブドウを食べていた。場違い感がハンパないのだが、トルシェだものな。


「それで、どうだった?」


「はい。連中、そこの建物の中に入っていって、廊下で転がっていた廃人を袋に詰めて荷車まで運んでくるようです」


 アズランのいうそこの建物は袋小路の手前に建っていて、その出入り口前には連中が運んでいた荷車が置いてあった。


 建物自身は、間口の狭い三階建ての漆喰と木でできた建物だったが、漆喰はかなり傷んでおり、色は灰色。柱もところどころ腐って細くなっている。


 一言で言えば、危なそうな建物。こういったぼろっちい建物の中には、実はお宝が眠っている。とかは全くないだろう。トルシェは干しブドウを口に入れながら、すでにつまらなそうな顔をしている。


「もうすぐ、連中が出てきます。どうします?」


「俺たちはここから退散するから、連中がどこに荷物を運ぶのか見ておいてくれ」


 道に男たちが転がっていては、まずそうなのですぐにベルトに擬態しているコロに処分たべさせ、俺とトルシェは急いでその袋小路から出ていった。






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