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第159話 王都へ帰還


 別に体が臭くなったわけでもないトルシェも風呂に入った。


 体をタオルでゴシゴシ洗ったら、何とか臭いが取れたようだ。ダークサンダーの方はいまコロちゃんと黒ちゃんが手入れしてくれている。


 トルシェと並んで湯舟に浸かりながら、


「冒険者ギルドにあった黒ちゃん討伐依頼は、発注者が死亡したら取り消されるんだろうか?」


「さあ、あんまり聞いたことがないけど、きっとそうじゃないかな」


「ああいった依頼は成功時依頼料を払うのかな?」


「依頼時に成功報酬の何割かをギルドに納めているそうですよ」


「それだと今回はギルドはまる得だな」


「世の中ってそんなものなんですよ」


 トルシェが分かった風なことを言う。



 すっきりしたところで、風呂から上がって服を着た。トルシェもちゃんと服を着ている。


「それじゃあ、王都に帰るか」


「はい」




 俺たちがテルミナの北門を出るころにはもう夕方だった。


 そこで、タートル号を元の大きさに戻し、サイドハッチからみんなで乗り込んだ。



「王都に向けて出発しゅっぱーつ!」


 タートル号の王都到着は、明日の正午前後の予定だ。


 すでにタートル号は王都までの道を学習しているようで、直線コースで王都に向かい始めた。すなわち、街道から大きく離れ山の中を突っ切って進んでいくわけだ。


 一種の自然破壊かもしれないが、密集した木々では森が育たないため、ある程度木を間引きする、間伐的な意味合いも多少はあるかもしれない。というか、タートル号の通った跡は、なぎ倒された木々を回収していくだけで立派な林道になるのではなかろうか?


 いつも通り酒盛りをしながら夜を明かした。山の中には猛獣やモンスターなどもいるのだろうが、タートル号の中にいるとそういった諸々《もろもろ》の気配が全く伝わってこない。おそらく何匹かのモンスターや猛獣はタートル号に轢き潰されて無残なむくろを山野にさらしていると思う。


 山地を突っ切り最後の山を下ってしばらく北に向かって進んでいくと畑が広がっていた。王都に穀物を供給する穀倉地帯なのだろう。タートル号は当然のことながら畑の上を横切っていく。今が麦踏の季節だったら農家に喜ばれたかもしれないが、そんな季節ではないし、もしそんな季節でも、畑にタートル号の足跡の大穴が開いているはずだ。ただ、今のところタートル号の後方視認性は極端に低いため、畑がどうなってしまったのか確認はしていない。従ってセーフ! 前方やサイドのスリットから農民らしい連中が何かこっちを向いて叫んでいたが全く聞き取れなかった。


 正午少し前、タートル号は王都の南門に到着した。


 王都の南門では、荷馬車の長い行列ができていた。タートル号が近づいてきたことで、馬たちが騒いだが、俺たちがすぐ外に出てタートル号をゾウガメサイズにしたため事なきを得た。俺の格好はヘルメット無しのダークサンダーだ。王都内では切った張ったは無いと思うが念のためだ。せっかく先日買った普段着を脳漿や肉片で汚したくないからな。


 門で荷馬車の荷をいちいちチェックしているため渋滞が起っているようだ。あの白い粉なんかが王都に持ち込まれたら困るからな。


 俺たちはその荷馬車の列の脇を通って王都の中に入っていった。門衛は人間の兵士たちが行っていたが、その後ろにはわが無敵のスケルトン軍団の精鋭が目を光らせていた。スケルトンたちは、トルシェの姿を認めると一斉に剣のつかで木の盾をたたき始めた。


 人間の兵士たちは何事かとギョッとしたようだが、トルシェが嬉しそうに両手を振ってスケルトンたちのパフォーマンスに応えているのを見て、俺たちが何者であるか分かったようだ。その結果、兵隊たちはその場で敬礼して俺たちを見送った。


 南門からまっすぐ北に伸びる大通りを進むと王宮を囲む堀の周りの道に突き当り、その道を左に回れば王宮の正門に出る。俺にもその程度の土地鑑はあるのだ。


 俺とトルシェが前を歩き、その後ろを鳥かごを持った黒ちゃん、最後にタートル号がついて歩いている。


 魔術師ギルドに顔を出して様子を見たかったが、いかんせん道が分からない。かなり大きな建物だったから誰かに道を尋ねながら目指していけば何とか到着すると思うが、それほどまでして様子が知りたいわけでもないので、まずは王宮に顔を出してアズランと合流してマリアの顔を見ることにした。


 さすがに王都の大通りでは、スケルトン軍団の見回りもあり、人相風体の怪しい連中はいないので、少し物足りない。たまに出くわすスケルトン二人組の見回りは、俺たちを見ると南門のスケルトンがしていたように剣のつかで木の盾を打ち鳴らす。人目を引くが、その程度のことを気にしていては女神さまは務まらない。


 行きかう連中に奇異の目を向けられながら大通りを進み、王宮の正門にたどり着いた。まだ門の修理は終わっていないようで、工事現場の脇を通って王宮の中に入っていき、敬礼する連中に軽く会釈しながら宮殿に入っていった。


 宮殿に入るとすぐに奥の方からアズランが駆けてきた。もちろんフェアも一緒だ。俺が戻って来たことを眷属アズランは察知したようだ。


「よう、アズラン」


「お帰りなさい。テルミナはどうでしたか? あれ? ナイトストーカーが戻ってきた?」


「テルミナでひと暴れしてきたが、大したことは無かった。詳しいところはトルシェに聞いてくれ。ナイトストーカーは家出したきりだ。それで、この鎧はトルシェに作ってもらったゴーレム鎧、ダークサンダーだ。ナイトストーカーは赤い模様が浮き出ていたがこれは真っ黒な模様が入っている。近くでよく見ると黒い模様が禍々《まがまが》しくてカッコいいだろ?」


「ほんとだ。ダークサンダーもいいですね」


「フフ、だろ?」


「エヘヘ、でしょ」


「それで、マリアの方はどういった調子だ?」


「トルシェ2号もやって来て魔術を教えてくれているし、今はだいぶ王宮にも慣れたみたいです」


「魔術の調子はどんな塩梅だ?」


「今は指先から小さな炎が出るようになったみたいです。明日はファイヤーボールに挑戦するとか言ってました」


「さすがはトルシェ2号だな。トルシェの作ったホムンクルスだけのことはある」


 ちゃんとトルシェをフォローしておこう。


「ウフフフ。でしょ」




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