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第145話 帰国1


 朝起きたら窓の外は雨がまだ降っていた。そういえば鳥人間はどうなってるだろうなー?


 見えない檻に入っているものの、文字通り檻は見えないので、鳥人間が王城の門の横に転がっていたら、かなり奇異だよな。


 しかも昨日からの雨で、見えない檻が雨を通さないはずは無いだろうから、濡れネズミならぬ濡れ鳥だ。誰か奇特なヤツがお持ち帰りしていないかな。




 俺たちはここを今朝けさ発つとルマーニ側に伝えているので、この国の宰相あたりが挨拶に来るかもしれないと思い、俺は寝間着から見た目がちょっと高級そうな服に着替えておいた。最後にコロをベルトに巻いて出来上がり。時刻は六時半だ。


 そういえば、俺は化粧などは全くしていない。それどころか髪の毛も手櫛で整えているだけだ。それはトルシェもアズランも一緒だ。昨日アズランが風呂上がりのマリアの髪を三つ編みに編んでいたが、トルシェがドライヤー魔法でマリアの髪を乾かした後、アズランは器用だから手櫛で何とかしたのだろう。



 俺が朝の支度を終わったあたりで最初にトルシェが起きだしてきた。


「トルシェ、あと三十分ほどで食事が届けられるからな。食事したらここを発つからそろそろ服を着とけよ」


「はーい」


 トルシェには一言いっておかないと、このまま全裸で王城内を門まで歩いていきそうなので一応注意はしておいた。


「おはようございます」「おはようございます」


 そのあとすぐに、アズランとマリアが居間に入ってきた。二人とももう着替えていた。



 トルシェがようやく服を着たところで、侍女たちによって昨日の夕食がきれいに片付けられ、朝食の準備が始まった。


 朝から喉がかわいたので一杯飲もうと思ったのだが、残念なことに朝食には酒はついていなかった。持ち込みでも良かったがちょっと憚られたのでそこはがまんしてやった。



 食事が終わったあたりで侍女がやって来て朝食の片づけをした後、お茶をサービスしていったのでそれを飲んでまったりしていたら、この国の宰相が挨拶にやってきた。


「おはようございます。女神さま」


「おはよう。そろそろわれわれはここを発つ。世話になった」


「またいつでもお越しください」


「機会があればな。それでは、それそろおいとましよう」


「門までお送りいたします」


「そこまでしてもらわなくてもいいぞ、道順は覚えているからな」


 道順はアズランが覚えているはずだ。


「いえいえ。お見送りさせてください」



 俺たちが席を立ち、宰相に先導される形で城の中を門まで案内された。傘のようなしゃれたものは無いので、小雨の中、門の外まで歩いていきそこでタートル号を元の大きさに戻して、


「それでは、さらばじゃ」


 宰相以下数人の女官たちが頭を下げている中、そう言って颯爽とハッチバックからタートル号に全員で乗り込もうとしたら、アズランに、


「ダークンさん、鳥人間を置いてきてしまいましたが大丈夫ですか?」


 てっきりだれか奇特なご仁が鳥人間を拾って持っていってくれたとばかり思っていて、危うく濡れネズミの鳥人間を忘れるところだった。トルシェに言って、魔法でタートル号のしっぽに檻を括りつけてもらい、タートル号に乗り込んだ。


 鳥人間は雨に濡れてぐったりしていたが、まだ生きているようだ。意外としぶとい。魔界ゲートに着いたらこいつは檻ごとゲートの中に投げ捨ててやろう。



 サティアスオウムの入った鳥かごを床に置き、


「それじゃあ、魔界ゲートをもう一度確認してから、セントラルに戻るぞ。

 出発しゅっぱーつ進行しんこー!」


 元気に俺が宣言したら、アズランが俺に、


「ダークンさん、ナイトストーカーはいいんですか?」


「良いも悪いも行方不明だし、今のところどうしようもない。そのうち、ひょっこりテルミナのワンルームに戻ってくるかもしれないしな」


「それならいいんですが、あの全身鎧が中身がなくてそこらをうろついていたらモンスターと思われて討伐されませんか?」


「そこいらの冒険者ごときじゃどうにもできないんじゃないか?」


「それもそうですね」


 俺とアズランがナイトストーカーのことを話していたら、何も知らないトルシェが、


「ナイトストーカーがどうかしたの?」


「いやな、昨日というか今日の深夜、ナイトストーカーが勝手に歩き回ってどこかに消えてしまったんだ」


「えー! 知らなかった。ダークンさんが収納したんだとばかり思ってた。どうして教えてくれなかったんですか?」


「トルシェは寝息を立ててよく寝てたからな」


「起こしてくれればよかったのに」


「まあそういうな。今度トルシェが寝てるとき面白いことがあれば起こしてやるから」




 そんな話をしているうちに、タートル号はゆっくりと立ち上がり、歩き始めた。


 トルシェのドライヤー魔法だとせっかく編んだ三つ編みがバラバラになりそうだから、アズランは雨に濡れたマリアの頭をタオルで拭いてやっていた。風邪を引いても万能薬があるからこじらせることはないだろうが、濡れていれば不快だしな。マリア以外の俺たち三人は小雨程度では何も気にならないので、そのままだ。



 タートル号は、ルマーニの王都の通りを抜け街道を来た時の逆にたどって魔界ゲートに向かっていった。


「ダークンさん、あそこ、右手の横道の入り口。あの黒いのはナイトストーカーじゃ?」


「どれどれ?」


「いま向こうに行っちゃいました」


「追いかけても仕方ない。去る者は追わず。家出に飽きたらワンルームに戻ってくるだろ」


「ナイトストーカーは冒険者カード持ってないから、ダンジョンの入り口で止められますよ」


「そのくらい何とか自分でできるだろ。俺はそんなこともできないヤワな奴に育てた覚えはない」


 ヤワも何も何も育てた覚えなどないがな。


「分かりました」


 しかし、ナイトストーカーは一体何を考えているんだろうな。元の持ち主がらみで何かあるのかもしれないが、もはや何もわからない。そのうちナイトストーカーが戻ったら聞いてみよう。ナイトストカーも勝手に家出ができるくらいだから、言葉も喋れるかもしれないものな。



 タートル号は順調に都の大通りを通り抜け街道に出ていった。このまま街道を進めば、マリアのいた街にも差し掛かるが、街の復旧作業も進んでいるだろうし、今回はどこの街も街の真ん中を横断せず迂回して進むことにした。





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