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第108話 塔の崩壊、兵隊と対峙


 塔の崩壊に巻き込まれないように俺たちは塔の屋上から跳び降りた。


 両手両足を広げて落下すると、風の抵抗が凄いのだが気持ちがいい。このまま落ちてしまうと、『レヴィテーション』のおかげで痛くはないのだろうがみっともないので、何とか足が下になるように落下する。


 数を数えたら五秒ほどで石畳の地面に降り立った。短い時間だが、不思議と長く感じた。


 三人ともうまく着地したところで、すぐに崩落中の塔から離れる。


 俺たちが地面に降り立った辺りから急速に崩壊が進んだようで、後ろから、


 ゴゴゴゴーー!


 と地鳴りのような音が聞こえてくる。


 その後一気に吹き上がる粉塵の波に飲み込まれて周りが何も見えなくなってしまった。


 粉塵がすこし収まり、視界がある程度晴れたところで、


「フー。ひどい目に遭った」


「やっぱり、あの巨人が塔を支えていたんでしょうか?」


「何とも言えないが、巨人の周りに後から塔ができたんだろうからそうかもな。まあ、塔自体が謎のダンジョンだったわけだから何ともいえないか。いま崩壊したけど、この塔もそのうち元通りになるかもしれないしな。一応、闇の使徒の塔を叩き潰すという目的は果たせたから良しとしよう。そろそろ、王都に撤収するか」


「その前に、残った建物の中に落っこちている物を回収しませんか?」


「落っこちているものな。王都に帰っても急ぎの用事があるわけでもないから、トルシェに付き合うか」


「エヘヘ。それじゃあさっそく行きましょう」


 上機嫌なトルシェの後について、神殿の建物に入っていく。なぜかどこにも人が見当たらない。


 いなければいないだけ、見つければどうせトルシェのスッポーンで処分するだけなので、気にせずトルシェのいう建物の中に落っこちて(・・・・・)いるものを拾い集めていくだけだ。


 ざっと見だが建物の出入り口が近くに見当たらない。窓も並んでいたが、矢間やはざまのようなスリット状の窓なので通り抜けることができるのはアズランぐらいだ。


 一番近くの壁を破ることにして、コロに食べさせて中に入った。そこは廊下のような通路で、窓側の反対側には扉が並んでいた。


「いってきまーす」


 軽い声と一緒にトルシェが扉を開けて家捜やさがしを始め、アズランが付き合いでついていった。



 バタンと扉を開けて突撃し、しばらくしたら部屋から出てくる。それの繰り返しだが、一回一回の間隔が実に短い。トルシェの顔の表情を見ると明らかに嬉しそうだ。これはかなりの収穫があったのだろう。


「どうだ、トルシェ、収穫は?」


「ここは不用心に金目のものを部屋の中に落としすぎ。仕方がないので全部拾ってあげてます」


「さすがはトルシェ、敵に対しても優しいな」


「それほどでもー」


 トルシェのヤツかなり上機嫌だ。


 そうやって、トルシェたちが建物の中に落っこちている金目のものを拾っていたら、広場の方が騒がしくなってきた。


 窓から広場の方を見ると、馬に乗った騎士?と槍を持った百人ほどの兵隊が広場で隊列を整えていた。


 なんだー?


「おい、トルシェ、アズラン。窓の外に兵隊が集まってるぞ」


「何なんでしょうね?」


「こっちに二人組がやってきます。

 あっ、コロの空けた孔に入ってきました」


 アズランのことば通り、コロの空けた孔をくぐった二人組の兵隊が廊下の先に現れた。


「おい、そこの怪しいやつら、そこでおとなしくしていろ!」


 俺たちを見つけた兵隊の片割れが偉そうに俺たちに命令してきた。


「そういうお前らは一体なんだ?」


「な、なに? ふざけているのか?」


「半分はふざけているが、お前らがどこの馬の骨か知らないのはホントだ」


 俺は返事をしてやったら、二人組の片割れが急いで穴を通ってもと来たところに戻っていった。


「そこを動くな!」


『ダークンさん、目障りだから、っちゃいますか?』


『面白そうだから、相手をしてやろうじゃないか』


 そう言って、俺は鳥かごと一緒に廊下に腰を下ろした。


『それもそうですね』『楽しそー』


 そう言ってトルシェとアズランの二人もそろって俺の横に座り込んだ。二人ともごそごそしているので木の実か何かを取り出しているのだろう。



 俺たちが、指示に従っておとなしくしていたら、十人ほどの兵隊が孔を通り、大盾を構え盾の隙間から槍を突き出してこっちに向かってきた。頭には帽子型のヘルメットをかぶり、耳と頬を覆うような幅広のアゴ当てでズレないように固定している。上半身にはレザーアーマーといった格好だ。


「それで、お前ら、結局どこの誰なんだ?」


 近づいて来る兵隊に声をかけたが返事をしない。


「もう一度だけ聞くが、お前らはどこの兵隊なんだ?」


 兵隊ということは、ここの『闇の使徒』の私兵かこの国の軍隊に決まっているか。いちおう訓練はされているようだからこの何とかいう国の兵隊の可能性が高いわけだな。聞くほどのことでもなかった。


 ここで、こいつらと事を構えて何か問題があるかな?


 思いつけない。ということは何ら問題はないということだ。


 俺が近づいて来る兵隊たちに向かってゆっくり立ち上がり、一歩前に出て腰に差したエクスキューショナーを右手で抜き放った。鳥かごは置いたままだ。


 槍を構えた連中に一気に緊張が走る。


 俺の後ろからは、木の実を食べる音が聞こえてきている。


 パリ、ポリ、ガリ。ペッ!


 あまりそこらを汚すなよ。




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