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オセロニアおはなしえほん

シュクレはライバル?

作者: 山岸マロニィ

 ぼくは バヴァロア。こうみえて、りっぱな ドラゴンだ。まだ こどもだけど、ぼくには ゆめがあるんだ。


 それは、パティシエになること!


 ぼくは、あまいものが だいすき。あまいスイーツを たくさんつくって、おもうぞんぶん たべるんだ。


 ぼくのつくる スイーツは、とびきり おいしい!

 だから いつか、いちりゅうの パティシエになって、たくさんのひとに たべさせて、ゆうめいになるんだ。


 ──シュクレよりも!


 シュクレは やさしくて あかるくて、みんなから あいされてる まちいちばんの パティシエ。


 ぼくの ライバルだ。


 いまは こどもだから みんながしらないだけで、ぼくのスイーツは シュクレよりも、ずっとずっとおいしい!


 どうやったら、それをみんなに つたえられるんだろう?


 ぼくはかんがえた。




 つぎのひ、ぼくは シュクレのおみせに いった。


「たいけつを もうしこむ!」


 おおきなこえに びっくりして、シュクレは みせからとびだしてきた。


「……ぼうや、どうしたの?」


 シュクレは まんまるいめをして ぼくをみた。


「スイーツで しょうぶをしよう! ここにいる おきゃくさんたちが しんぱんだ」


 シュクレは くびをかしげながら ニッコリとした。

「いいけれど、スイーツは だれかと しょうぶするものではないわ」

「そうやって にげるんだな!」

「そうじゃないけど……」


 シュクレは こまったかおをしたあと いった。

「いいわよ。なにを つくろうかしら?」

「ババロアだ! みんなだいすき あまくて とろける ババロアで しょうぶだ!」




 おきゃくさんたちが まどのそとから キッチンをのぞいている。

 ぼくは、はりきって うでまくりをした。

「ぜったいに いちばんおいしい ババロアを つくってやる!」




 ちょうり スタート。


 まずは、ゼラチンを みずで ふやかすんだ。


 つぎは、アングレーズソース。

 らんおうと さとうを ボールにいれて、しろっぽくなるまで よくまぜる。

 あわだてきで シャカシャカまぜるのは、ぼくの とくいぶんやだ。


 それから、ぎゅうにゅうと さとうをいれた なべを、あたためる。

 おっと、バニラビーンズを わすれてはいけない。


 ……といってるうちに、ぎゅうにゅうが ブクブクにえた。

 そしたら、さっきまぜた らんおうを 入れて、またまぜまぜ。こがさないように ちゅういだ。


 トロッとしてきたら、ふやかした ゼラチンをいれて、またまぜる。

 ……すこし、プツプツ固まってるところがあるけど、きにしない。


 つぎは、なまクリームを ふわふわに あわだてる。

 てがつかれてきたけど、がんばりどころだ!


 それを さっきのなべにいれて、しっかりまぜたら かたにながして、れいぞうこで ひやせば、できあがり!


 みてくれ! この おいしそうな パバロアを!

 あまいあまい ババロアを さあ たべてくれ!




 ぼくが おきゃくさんに ババロアをくばっているときも、まだ シュクレは ざいりょうを まぜている。

 プロは つくるのも はやくなくちゃ ダメなんだ。せんせいこうげきは、ぼくのかちだ!


 おきゃくさんは、ぼくのババロアをたべて おいしいといっているぞ。どうだ!




「シュクレのババロア、かんせいよっ♪」

 シュクレが トレイいっぱい ババロアをもってきた。

「……かわいい!」

「おいしそう♪」

 おきゃくさんが つぎつぎと てをのばす。

 ……なんだいなんだい、ぼくの ババロアだって、おなじくらい おいしそうだったじゃないか。ただ、サクランボがかざってあるか ないかだけの ちがいだろ。


「すごくおいしい!」

「とろける~♪」

「なめらかで バニラのふうみが すごくいい!」


 ぼくのを たべたときと はんのうがぜんぜんちがう。ぼくのも おいしかったはずだぞ?


「はいっ、あなたもどうぞ♪」

 シュクレが ババロアを さしだした。おさらのうえで ツヤツヤかがやいている。ホイップクリームに サクランボがチョンと かざってあるのが、すごくオシャレだ。

「…………」

 ぼくは しかたなくうけとって、ひとくちたべた。


 ──なんて なめらかなんだ! くちにいれたしゅんかん、トロリととけて、あまいふうみが くちいっぱいに ひろがる。 こんなババロア、たべたことがない!


 きがつくと おさらのうえは、サクランボのたねだけになっていた。


「……ま、まあまあだな」

 ぼくは できるかぎり むずかしいかおをして、おさらを シュクレにかえした。


「あなたの ババロア、たべさせてもらったわ。すごく おいしかった♪」


 シュクレにいわれて、ぼくは びっくりした。そして、てれた。


「でも、なにかが ひとつ たりないきがするの。

 それが なんなのか、かんがえてみたんだけど……」


 シュクレは ぼくのかおをみて ニコリとした。


「たべてもらうっていう けいけんじゃないかしら?」

「…………」

「たくさんのひとに たべてもらって、たくさんのえがおを もらえば、もっとえがおをふやしたくて もっとみんながよろこぶものを つくれるとおもうの」


 シュクレのことばで、ぼくは ハッとした。

 たべるひとのことを かんがえて、スイーツをつくったことなんか、ぜんぜんなかった。

 たべるひとの よろこぶかおが みたいから、あんなに いっぱい てまをかけてたのか。


 ぼくは はずかしくなった。でも、ひきさがれない。


「こ、こんどは、もっとおいしいのを つくってみせるからな!」

「あなたの ステップアップを、たのしみにしてるわね♪」




 うちへかえったぼくは、スイーツづくりの とっくんをはじめた。

 おきゃくさんは、ともだちの ムスタバだ。


「おきゃくさま、きょうのババロアは いかがですか?」




 ──おしまい──

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