イケメンのデジャブ
こんばんは、颯です。今日はクリスマス。ギフト小説を書いてみました。
凍えるような寒さの中、聖夜がやってきた。恋人たちはともに、この特別な夜を過ごしたり、独り身のものはリア充たちを呪ったりしている。
俺も毎年別の女とクリスマスを過ごしている。先週、「初めて」を美味しく頂いた元カノに振られたので、慌てて新しい女を墜としたのだが、まぁ、なんというか、その、選択ミスった。
「ねぇ、タクミくん。どう?」
どう?とは何がだろうか。まさか、『冬にも関わらず水着を着ている私の頭、おかしいでしょ?』
のメッセージではないだろう。
「うん、かわいいけど、頭使おうな、風邪引くぞ?」
なんか、このやり取りは初めてじゃないような、いや、初めてなんだよ、こんな変なやつ。
でも、なんかデジャブというか、魂が覚えてる。そんな気がするんだ。
◇ ◆ ◇
遡ること2億年、今の人類文明がおこる2つ前の文明が終わろうとしていた頃。
「もう、雪の季節だね。」
隣を歩く女の子がつぶやく。
タクミは2億年前から変わることのない、無類の女好きだった。名前も、タクミのままだ。
「もう冬なんだ。体調どう?」
「まぁまぁ、かな。今年も冬を越せますように!!」
この女の子、ユイとタクミは別に付き合っているわけではない。普通に友達、というか付添い
というか。
何せユイは頑張って、もう一年生きれるかどうか、本人は知らないが。
駅でユイがぶっ倒れてるところを歓楽街帰りのタクミが助けて、病院に運んでいってから二人の関係が始まった。
可愛そうなことに、ユイには親がいない。人口を減らさないために、政府が作った "人間工場"
で彼女は言わば作られた。
だから、ユイの付き添いでタクミが一緒に動くようになったのだ。下心100%なのだが、やっていることは人助け。
見てくれはイケメンなだけに、タクミの人望は少し上がってたりする。
今日は、ユイの余命が1年になる節目、といえば節目の日。
彼女を離したくない、という思いで繋いでいる手をぎゅっと握りしめる。
「痛いよ、どうしたの?」
「いや、なんでも、ない、」
「ふーん。」
「ねぇ、どう?」
「どうって、何が?」
「タクミは、今幸せ?」
どう、なんだろう。俺は今幸せなのかな。女遊びに明け暮れて、何を求めてるんだろうか。
「わかんないって顔してるね。可愛い子といっぱいあんなことやこんなことしてるのに。
私は、幸せかな。一生、そばにいたい人の手を握っていられるから。
お願い、私がいなくなるまで、私から離れないでくれる?」
ふむふむ、いや、なんで知ってんの!?実はこの子ストーカー?
でも、まぁ。いっか。
「分かった。俺はお前が死ぬまでそばにいてやる。」
「ありがと、、。」
え?
バタンッ
俺のすぐそばで人が倒れる音がした。
まさかと思って横を見ると、ユイが、血を流して倒れていた。
焦って近づいてよく見てみたら、なぜか心臓のあたりには真っ赤なバラが咲きかけていた。そして、その花びらが開くにつれてにユイの肌の色や、生気が失われていって、
ついに、花が開いた。
俺はユイの死を悟った。
どんなに悔しかっただろう。生きることか許されない命として生まれて、幸せになることさえ叶わないなんて。
人間工場では、生まれた命を育てていく過程で、持病を持つ子供とか関係なしに心臓にある機械をつけられる。
そして、その製品が、子供を産めない、使えないと判断した時点でターゲットにされて、ついには爆弾のスイッチを押される。
俺が見たのはそんな命を命と思わない、損得勘定で容易く殺された命だった。
◇ ◆ ◇
俺は無意識のうちにユイを探していたのかもしれない。だから、あんなに女の子を目で追っているのかも。
「ねぇってば、どう?」
雪が降る中、水着を着ているアホの子が自身の質問の答えを迫る。
「俺は、楽しかったよ、ユイと出会えて。短かったけどね。
これから、やり直そっか。」
「何言ってるの?気持ち悪い。やっぱりタイプじゃないかも。」
「あ、人違いだったかな?」
ヤバい、恥ずかしいよ!
「なんて、言わないよ。やっと会えたね。タクミくん!」
通行人の視線を感じる中、2億年ぶりに会えた喜びを噛みしめるように、抱き合った。
いかがでしたか?1000年人生の方はお正月、年越し編を準備してますのでお楽しみに。