アラブの王子さまが言うところのキュウコンとは、球根ではなく求婚のことでした⁉︎
「だからって、あんな辱めってある?」
「だって、カエデがパンツと言ったから」
「パ、パンツだなんて言ってないと思うんだ。だって、恥ずかしいでしょ。パンツとかって恥ずかしいヤツでしょ」
「だが、パンツを履かねばもっと恥ずかしいではないか」
「だから、それを気絶してるうちに、履かされた身にもなってよって言ってるのよう」
あの時、頭打ったからか、その後の結婚式はあまり記憶にない。
いや、覚えているんだけど、付添人が十人、通訳が五人、世話係が二十人で寄ってたかって、結婚式のお世話をしてくださるもんだから、実際私がしたことと言えば、マッフーと誓いのキスをしたぐらいで。
「はあ、まあいっか」
「良い思い出だ」
「だねー」
「じゃあ、いってくるぞ」
マッフーは今、ルマティの教育係兼日本との観光大使に任命されていて、こうして毎日、仕事に出かけていく。
もちろん、日本で仕事をする時、私も一緒に里帰り。こんな都合の良い環境ないってこと。とてもラッキーだね。
マッフーといってきます&いってらっしゃいのキスをする。ふうわりと異国の香りがして、私はそれを胸いっぱいに吸い込んだ。
私は、というと大学を卒業後、マッフーとともにここザイードに来て。
ここでなにをやっているかと申しますと。
「いってらっしゃーい」
玄関を出て、手をぶんぶんと振り回す。マッフーが同じように手を振り返してくれる。その姿が小さくなると同時に、そこここから勢いよく子どもたちが飛び出してきて、わあああっと手を振りながら駆けてくる。あはは、その手には、しっぽやなわとび‼︎
「(カエデーー)」
私を呼ぶ声が、ザイードの青い空へと響き渡る。
「(おはよーーカエデ、遊ぼーよ)」
「(しっぽ取りしよう)」
「(っだめえ、ボク今日はカエデとゴム跳びするんだもん)」
こんな朝っぱらからか⁉︎
私も手を振り、大声で笑って、それに応える。
「(まずは日本語と算数の勉強からでしょー)」
「(えーーー⁉︎ 勉強お⁉︎)」
「(イヤだよ、遊びたいのに……)」
「(カエデ式いろはカルタならやってもいいけど)」
「(じゃあ、勉強終わったら、)」
子どもたちの顔を見る。
みんなキラキラ、目を輝かせている。
たくさん食べて、たくさん学んで、たくさん遊ぶんだっっ‼︎
ぞくぞくと走ってくる子どもたち。みんなに向かって、私は。
「さあ、今日も遊び倒すぞ‼︎ 」
おーーー‼︎
私は大声で叫びながら右手を突き上げて、青空をノックアウトしてやった‼︎




