お、おと、おとーさん、お父さま、ち、父上さまっっっ⁇
「…………」①
「…………」②
「…………」③
「(…………)」④
「……ふう」⑤
「…………」⑥
我慢大会みたいな様相を呈してきました。
さあ、①から⑥までの中で、ザイードの石油王、シャフィーク=マフムードさまはいったい何番でしょうか?
④ですか、ファイナルアンサー⁇ ……はい、正解‼︎
ちなみに①ママ②パパ③私④シャフィーク=マフムード⑤おじいちゃん⑥マッフーです‼︎
え、これ、どうゆう状況なのですか?
④「(ここがカエデの家か。なんという狭さだ)」
たぶん大したことは言ってないだろうけど、はい、一番に喋った人の負けっ。
⑥「(父上、日本の家は往々にしてこの広さです)」
⑤「それにしてもなんじゃ、この絵面は⁉︎」
まあ、確かに。
シャフィーク=マフムードさまを地べたに座らせるのもいかんということで、畳の部屋におじいちゃんが近所の黒帯仲間から貰ったという虎の毛皮のじゅうたんを敷き、その上に殿倉家で一番高価そうなイスを献上している、この絵面。
殿倉家、フラワーショップ『リンカ』の客間でまさに、その構図が披露されている。それはすなわち。古代エジプトの壁画のように、王さまにかしずく下々の者たちの図。
こんな現代社会において、このような構図を見れるなんて、感激……じゃないわっっ‼︎
③「なんでお父さんまできたのよっ」
私が声のトーンを落として言うと、マッフーはすぐさま同じように声のトーンを落として答えた。
⑥「どういう風の吹き回しかはわからぬが、ついてくると言い出したのだ」
③「それ、どゆこと⁉︎」
横目で様子を伺う。
①と②パパママは、真っ青で完全に萎縮。うん、その気持ちわかります。
⑤は敵意むき出しの顔で、相手を威嚇。
おじいちゃん、だめー‼︎ 相手は一国の王、しかも石油王ときてる。ラストサムライ気取った、その腰に差している洞爺湖土産の木刀、まずはそれ置きましょう。
「(……ルマティたちがカエデと遊びたいと、何かにつけて言うのだ)」
マッフーのお父さんが、難しい顔をそのままにして、訥々と語り出した。私はマッフーに通訳してもらいながら、心で受け身を取りながら話を聞く。
だって、また激怒されでもしたら、私、心折れちゃうもん。しかも、パパママの前でさ。
けれど、お父さん、ザイードにいた時と様子がちょっと違う。
だから、話を聞こうって思ったのもある。
「(カエデが日本に帰ってからは、ルマティたちは中庭の木に登ったり、妙なものを腰につけて走り回ったりと、とても行儀が悪くなった)」
オーマイガ。それ完全に私のせいです。
おじいちゃんは、いったいなんの話じゃっと眉毛を釣り上げているけれど、パパママ……は、ワカッテマスネ。こんなおてんば娘で、ほんとすみません。
「(だが……ルマティたちがとても楽しそうに笑うようになったのだ)」
ため息をつく。そして。
お父さんが。
「(◯△◇×××……◇△×××)」
と、言った途端。
マッフーが、急に立ち上がって喜び、お父さんとハグし始める。
なになに、急に、おお⁉︎ どうなったん⁇
「カエデっっ、さっそく結婚式だ‼︎ 父上の許しが出たぞっ‼︎」
ふーん。
私は、テーブルに置いてあったお客さま用の饅頭を、一つ口に入れて頬張った。
そして、その饅頭を三つ食べ終わるまで、なんのことかが理解出来ずにいたのだった。




