祈りの声、鳥の羽ばたき
目が覚めた時、すでに遅し。
まあ学校休み(⁇)だし、ゆっくり寝てゆっくり起きようなんて、スマホのアラームを9時にセットしておいたらさ。
なんと⁉︎
どこかからか、まあ窓の外からってことだけども、歌が聞こえてきて、私は飛び起きた。
カーテンを開けて、建てつけ悪ううっと言いながら、窓をガタガタさせ開ける。
すると、空はまだ白み始めているだけで、夜は完全に明けてはいない。
私は、窓の隣にあるバルコニーへと出た。
夜明け前の、キンっとした空気。肺へと、するりと入ってくる、異国の薫りを運ぶ風。それを胸いっぱいに吸い込むと、私はぐちゃぐちゃになった髪を手で直した。
祈りを誘う声は、空高く響き、まだ仄暗い闇へと吸い込まれていく。
ただ。
神へと届けようとするその歌声が、夜空に吸い込まれていくごとに、暗闇が少しずつ光を手繰り寄せていくようだ。
朝やけ。
なんて幻想的なのだろう。
ザイードでは、こうして朝を迎えるのだ。
それが抜き足忍び足で、寂寞の思いを連れてきては、私の中へと入り込もうとする。ぐんっと両手を伸ばして、爪先立ち。そのまま、んーと伸びをすると、目尻に涙が溜まった。
悲しくない。悲しくない。一日は眠り、夜を通り越した。それなのに、私はまだ弱いまま目覚めた。目覚めてしまった。悔しくて悔しくてたまらないのは、自分に対してであって、自分がこれほどまでに弱いから。
けれど。そんな弱い自分より、マッフーが心配だよ。
「おはよーうっ」
バルコニーの手すりを両手で握り、勢いよくありったけの明るい声で言い、それから私は自分の頬をパチンと両手で叩いて、そんな弱気を諌める。
「いっっ」
頬を打った音が、小さな反響となって、響く。
すると、その音に驚いたのだろうか、日本では見たこともないカラフルな鳥が。
少しでも太陽に届くようにと、精一杯に伸ばしている大樹の細い枝葉から数羽、バサバサと羽音をさせて、飛び立っていった。




