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パスポート プリーズ⁉︎

「ってことだったのに、なんでこうなってんの⁇」


私は、今。信じられないことに、ザイードに来てる。

来てる⁇

来てるって⁇


「どういうことだーーーー‼︎」


パスポート。パスポートナイヨ。モッテナイヨ。


「あら楓、覚えてないの? あんた高校の修学旅行、韓国行ったじゃない」


持ってたーーー‼︎


その顛末を思い出す。


「ママさん、カエデをお預かりします」

「はい、マッフーさんよろしくね。楓、気をつけて行ってくるのよ」


あの別れの日。そう、別れのキスしたよねっ。あれは確かに、別れのキスだったのにい。んで、そのまま連れていかれたんだっけ。


いや、チガウヨ。ファーストクラスとか、そんなのはカンケイナイヨ。


「これ誘拐だよね、そうだよねこれ」

「カエデさまっ、物騒なことを言わんでくだされっ」

「だって、じいやさん。私、ザイードに行くだなんて了承してないっ。こんなことになっちゃうだなんて……」

「けれど、カエデさまは飛行機では、あんなにも喜んでおられたではないですかっ」


それはファーストクラスだったからあああ。乗るだけで、百万とかするヤツだったからあああ。飲み物も食べ物も全部、タダだったからあああ。


「カエデ、今から王宮に向かうぞ」


空港に迎えに来た、黒塗りの長ぼっそい車(これは車なのかそうなのか⁉︎ もしやトランスフォームしちゃうやつ⁉︎)に乗って、ふかふかなソファを堪能しつつ、ぶううっと走って三十分ほど。


異国情緒のレンガの街を抜けて、郊外へと出る。両側に砂漠。緑は、ポツンポツンとしか、見受けられない。

外国へ来ると、日本は緑が多い方だということが、身にしみてよくわかる。


そんな中、車窓から外を眺めていると、しばらくして呆気にとられるほどの豪奢な宮殿が目に飛び込んで来た。私はそれを見て、オーマイガ‼︎


「あーーーもうこれ、世界遺産とかの番組でよく見るヤツ……」


丸いフォルムの屋根。ガッチリした安定感のある建物。金とか金とか金とかで装飾されている壁や屋根。周りをぐるっと囲む大きくて高い城壁。

私が乗った車はそこへと続く一本道を、いつのまにか走っていた。


「ままま、まさかとは思うけど、もしかして……家ってあれ?」


足を組んで優雅に座っているマッフーが、このシチュエーションも相まって、ちゃんとアラブの王子さまに見えてくるから不思議なんだな。


「そうだ」

「⁉︎」


「な、なんでこんなことになっちゃってんのかな……」


私が改めて、冷や汗たらたらで呟くと。


「カエデ、なにも心配することはない。俺がついている。なにがあっても、カエデは俺が守るぞ」


マッフーが力強く応えてくれる。

私はその言葉で、以前ドロケイで遊んだことを思い出した。二人で警察役の子どもから逃げている時、マッフーは今日と同じように、私を守ると言っておとりになるために飛び出していった。その凛々しい後ろ姿。カッコいいなって素直に思った。


そして。

誰かを守りたい、とも。


「うん、ありがとう」


私はそのマッフーの力強い言葉に応えるべく、車窓から見える宮殿を睨むように見つめた。


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