表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/40

これが恋。。。これが恋⁉︎


「ちょっと、マッフー、マジで似合いす、ぎ、くくく」


舞衣子先輩が笑いを堪えながら、マッフーの頭に耳付きのカチューシャをぶっ刺した。


「これはいったい……」


難しい顔をしながらも、マッフーは舞衣子先輩の言いなりになっている。


私が顔を向けると、マッフーは顔を真っ赤にしながら、憤懣やるかたなしを絵に描いたように表現していた。

腰に手を当て、ぶつぶつと文句を言う。


「なぜ、俺がこんな格好をしなきゃいけないのだ」

「仮装で寸劇はみんながやるんだからね」

「キャンプとは、カエデと一緒に泊まれる会だと聞いたのだが……」

「うんそれ滝だねあいつはちょっとバカだから」


普段からほわわーっとしている舞衣子先輩が、ひと息に毒を吐く。

最近、滝先輩に今井部長との仲を邪魔されてばかりなのか、非常に刺々しい。


「はいマッフー、これつけて」


舞衣子先輩から渡された手袋を、マッフーは両手にはめた。すると、どうだ。完璧ではないか。


「わわわ、マッフー、すごい似合ってる」

「そ、そうか?」

「完璧だよ、どこからどう見ても……み、ミッ◯ー……」

「カエデ、おまえ、笑ってるだろう」

「わ、笑ってない、ワラテナイヨー」


マッフーのくるくる天パの頭に、皿のように丸くて黒い耳が生えている。白い丸みを帯びた手袋、赤のズボン、黄色の靴下。


くくく。


「いや、笑ってる」

「笑ってないってば」


マッフーが手を伸ばして、私の頬を包む。


「笑ってるな、こいつめ」


マッフーの目尻にシワができ、唇も緩んでいる。薄っすらと微笑むその顔。目も鼻も口も頬も、全てのパーツが喜びに満ちている。


(うわ、)


私はマッフーの幸せそうな顔を見て、胸がいっぱいになった。


(私が、幸せにしているの、かな?)


そう思うと、いっぱいだった胸が、今度は熱くなって苦しくなった。


「カエデ……」


瞳は濃いグレー。その高い鼻梁に、自分の鼻をすり寄せたい気持ちになった。


これが恋。


「んっんんんー、げふげふ。楓ちゃん、いい加減にしてね。『これが恋』とか言ってんじゃないよ」

「あ、あれ⁉︎ 口に出てた⁉︎」

「イチャイチャすんのやめろ」


舞衣子先輩がこんな口調でも、ほわわんっていう笑顔を崩さないのは、怖っ。

滝先輩に散々邪魔されて、どうやらかなりのストレスになっているようだ。


「……はい。すみません」


私は、かぶったままだった、ゆるいアライグマの着ぐるみのまま、そこで土下座した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ