6.王国と皇国
イングリス王国とエオス皇国はどちらも中央大陸に位置する強国である。設定上、他にもいくつかの大陸はあるが特に意味はないので割愛する。
さて、中央大陸には大小様々な国が存在するが、先の2国の2強と言って過言でない。
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まずはエオス皇国から見てみよう。
この国は一言で表せば、超魔道大国である。
太陽の神とされる唯一神"ケルディン"を崇拝する宗教"ケルディン教"を中心とした宗教政治が行われており、神の血筋とされ教会の長である法王を中心とした議会により政治が行われている。
中央大陸の中央部を領地とし、その広さは中央大陸の約50%にもなる。広大な領地には、肥沃な農地や、鉱物資源を有する山々が連なり、巨大な資源国となっていた。
その中でも特に重要な資源として"魔導資源"がある。
この世界にはかつて、少なくとも1000年以上前に滅亡した先時代文明があった。
今では考えもつかないような強力な魔導技術を誇っていた。その技術の結晶である強力な魔法の力を秘めた、いわゆる"魔導具"がこの世界では1つの資源と見なされていた。
これらの魔導具を採掘できる遺跡が皇国内には8ヶ所もあり、王国ですら2ヶ所しか保有していないことを考えると恐るべき保有量である。
これらの魔導具を採掘し、また解析することにより他国でとは比べることのできない程の魔導技術を保持する大国となっていた。
皇国の歴史は400年程の長さを持ち、明確に分かっている中では最長の歴史を持つ国家である。その中で培われた魔導技術と豊富な資源により今一つの悲願に向け突き進んでいた。
ーーーー大陸統一
約400年前神の子とされたエオス一世が、王国に破れ、その後幾度となく挑戦しながらも、最後には王国の前に屈したこの悲願は、10年前のエオス22世の即位から再び動き出していた。
これが皇国のあらましと、現在の王国との戦争の始まりである。
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さて、次はイングリス王国である。
この国は一言で表せば超武術大国である。
そして、語る上で外せない2つの"謎"を持つ国である。
イングリス王国はエオス皇国の西の隣国であり、すなわち大陸の西部に位置する。
領地の北は雲をも突き抜ける頂きを有する"ツァンゲア山脈"
西部は恵豊かな"べリオル大森林"
そして南部は海産物豊富な"シェレド海"
この3つの大自然と、1つの大国に囲まれた緑豊かな領地を持つのがこのイングリス王国である。
ーーーー大自然に囲まれた。
この3つの大自然はイングリス王国の領地ではない。では何が支配するのかといえば、
ーーーーそう"魔物"である。
西のべリオル大森林は非常に多くの魔物が住まう森である。無論この大陸のそこかしこの森にも当然魔物は住んでいる。しかし、1つだけこの森林の魔物と異なるのはその強さである。
通常の森に住まう魔物はただの農民では難しいが、様々な国々の一般兵でも難なく倒すことができる。もちろん通常の森でもいくらかの強い個体は存在し、一般兵では太刀打ちできないケースもあるが、極めて稀である。
しかしこの森林は違う、一般兵はおろか先鋭であっても倒せないのである。しかも最弱の個体であっても。
べリオル大森林には非常に強力な個体も確認されており、中には皇国の国宝級魔導具を用いても一撃では葬ることができないと噂される個体も存在する。
さて、話の続きであるが
では海と山はどうかと言うと
「もっとひどい」の一言である。
南のシェレド海にも大量の海洋性の魔物が住まっており、海洋に出ようものならものの数秒で餌となってしまうであろう。陸に住まう人間が海の魔物に対抗する術は殆ど無いのだから。
残された北のツァンゲア山脈であるが、ここに住まうのは、
ーーーー"竜"である。
史上最強の生物にして食物連鎖の頂点に君臨する生ける"伝説"が住んでいるのである。通常の人間であればまたたく間に駆逐されていたであろう。
ではなぜこの絶望的な場所にこの王国は栄えているのだろうか。
これには1つ目の謎、"超武術大国"の由縁関わってくる。
王国の持つ謎の1つ目
ーーーー"異常に強い人間"である
通常一般兵レベルでは3つのスキルを持つとされる。先鋭ともなれば4つ、そして英雄レベルともなれば5つものスキルを持つとされる。
しかし、この国では一般兵で5つ、最強の武人ともなると最高で8つのスキルを持つことが確認されている。一般兵ですら他国の英雄レベルなのである。これを異常と言わずしてなんと言おうか。
ステータスについてもスキルの数が多くなれば高くなるとされている。
ーーーーしかも指数関数的に。
つまりは5つのスキルを持つ王国の一般兵であっても通常の兵士の4倍、8つのスキルを持つ最強クラスともなれば実に32倍ものステータスを持つのである。
ステータスだけでもそうであるが、スキルも数が増えるほど強力なスキルを得やすく、過去には竜種ですら一太刀で沈めた伝説まである。
この異常な強さこそ、正に四面楚歌な王国が幾度となく魔物や皇国の侵略に耐え、今日まで栄えてきた理由である。
さて、王国が持つ2つ目の謎であるが、それは
ーーーー歴史が不明ということである。
通常、国というものはその正当性や威光を示すためその歴史は詳細に記録しているものである。無論、数多の脚色がある場合も多いが、いずれにしても記録を宝として保持するものである。
しかし、王国にはそれがなかった。
皇国の記録から400年前に存在する事は分かっているが王国の記録として残っているのは400年前以降の歴代国王の名前と此処100年ほどの記録のみである。誰が興した国なのか、いつからあるのか、それすらも記録がない。先時代の技術が残っていないことから1000年より前に存在したとは考えにくく、現在の歴史学の主流としては400年前の皇国の侵略に対抗するため周辺の国々が集まって興ったのではないかとされている。無論なんの記録もないため推測の域を出ることはない。
以上がこの物語の主要な国家のあらましである。
2国の設定だけでこんな文量になるとは…
広げた風呂敷はちゃんと閉じれるようがんばります。
・与太話
皇国って天皇が治める国って意味なんですね!
全く知らずに使ってました…
無理やり神の子孫て事にしましたが、法王よりも天皇の方が良いのでしょうか?
なんだか恐れ多くて使いづらくて…
そもそも皇国ではなく法国にしていればなんですけど今更変えるのも何だかって感じで