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0.終話
呼吸をした。
全てが止まったような時間の中、意味もなく息を吸い吐き出した。
瞬きをした。
そこに理由はなく、ただ自分が生きているがためにした。不思議と涙は出てこなかった。
鼓動が聞こえる。
早鐘のように打つ自分のやけにやかましい鼓動だけが聞こえる。
血の臭いがした。
鉄臭く、その人の甘い優しい香りとはかけ離れた自分の罪を感じさせる臭いだった。
熱い感触がある。
その手はたった今奪った命から消えゆく温度を感じていた。
何もない全てが失われた世界。
しかし、その世界に1つのか細い、それでいてとても優しい声が響く。
ーーーー〇〇〇
それは初雪がちらつく、冬には珍しい陽炎の中
いつまでも優しく響いていた。