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<R15>15歳未満の方は移動してください。

元異世界人な猫とファンタジーヲタクの少年の異世界冒険譚…の、序章

作者: Soryi

ちょっと詰まって放置していたのを発掘して完成させた作品なので、序盤と終盤で文体が違うと思います。今から直すのは無理ですし、気付いても見逃してください…。

「おい、歩け」

「……」

わたくし、ボロボロのドレスを辛うじて身に纏い、とぼとぼと歩いております。

冤罪だと主張しても、真犯人はあの女だ、証拠もあると訴えても鼻で笑われ証拠の提示すらさせて貰えず、猫に変化させられ生きる事になりました。

はぁ……放り出されたら真っ直ぐ国外脱出目指して行動するのも良いかもしれませんね…。



「ここに登れ」

あら、いつの間にか外に出ていましたか。台に乗せてライトを浴びせて…見世物ですか、わたくしは。

素直に台に登り、待機します。

1時間もあれば霊力が回復してここを血で染め上げてから誰にも見つからず国外に逃げるぐらいは出来ると思うのですが、流石にそれは許しませんよね。


そう思ってたら30分も経ってようやく来たのですが。

「<魂をこの猫に移せ>」

は?

やっと来た術者――処刑の執行人が、とんでもない事をいいやがりました。

これ、魔術じゃありませんか。人類の敵・魔族しか使えないはずの忌まわしいそれを何故…。

ぐるりと視界が歪む。待機の間に回復した霊力でレジストしようとしますが、魔力と霊力の相性は最悪。くっ、魂が移るのは防げません、魂の保護だけでも施せればなんとか…!

「<人の言葉を封じ、異世界へと棄てろ>」

まだあるんですの!? もう霊力は尽きる寸前で、レジストが…

「みゃー!!(覚えてなさい!)」

*****

「なんだ……猫?」

誰でしょう……転移の衝撃かだるくて眠くて目も上手く開かないんですが。


「ステフに似てるなぁ、数日看病してやるぐらいは良いかな」

温かい手がわたくしを抱き上げ、ゆらゆらと何処かに運んで行く。


*****


「み…」

「お、起きたか」

わたくしの顔を覗き込んでいたのは、10歳ぐらいに見える少年でした。黒髪黒瞳で、なかなか整った顔立ちをしています。

「みあ。……み、みゃあ?(はい。…あれ、ここどこですか?)」

「俺は慧。ここは俺の家だ。本に傷でも付けたら即放り出すからそのつもりで」

「みあ、みゃお(はい、気を付けます)」

「まあ、あんたの手の届く範囲に本を置く気は無いんだけどな」

つか、猫に話しかけるなんてラノベに毒されてんなー、俺……と呟きながら彼は去って行った。

あの人がわたくしを拾ってくれたのでしょうか?ラノベとはなんでしょう?人名?

ケイと名乗った少年はわたくしに幾つかの謎を残していきました。

****

数週間が経ちました。

拾われた猫――まあ、わたくしのことです――はタマと名付けられ、少年と仲良く暮らして居ました。

慧という名前らしい彼――わたくしを拾った少年は、数日の間はわたくしを警戒していました。

大事な大事な大事な本を、わたくし()が傷つけないかとても心配だったようです。

わたくし、頑張ってアピールしました。

わたくしは賢いのだと。

人の言葉を解し、ダメと言われた事はしないと。

わたくしの様子からこの猫はかなり賢いんだと解った慧は、今では普通にわたくしを放し飼いにしています。

恩返しも兼ねて、掃除や調理を手伝ったり、慧でも食べられそうな魚を捕ってきたりもしました。


そんなある日の事です。

慧が用意してくれた寝床で起床したのですが、伸びをした段階で違和感を感じました。

なんと、喉にこびり付いていた魔力が消えています。

言葉封じの魔力が切れているのなら、言葉を話す事も出来るはずです。

幸い、あの抵抗が上手く働いたらしく、ここが異世界であるはずにも関わらずに言語は普通に聞き取れます。この感じだと喋るのにも翻訳は適用されるでしょう。

「あー、あー。ごきげんよう」

声が出た!喋れた!とわたくしは小躍りして喜び、いざ突撃!と寝ている慧の元へ向かいました。

異世界だとは判って居ても、魔法や異種族なんてものが居ない、少なくとも空想の存在とされている世界だと理解していなかったのです。

言葉が通じるならてれびやけーたいに掛かっている魔法術式について話を聞けますわ! などと暢気に喜んでいたあの時が懐かしいですわ…。


「ケイ!ケイ!起きてくださいな!やっとわたくし喋れるようになったのですわ!」

「んー、なんだよ煩いなー。もうちっと寝かせてくれよー」

慧はまだ寝ぼけているようです。

「ケイ!わたくしとお話したくありませんの!?タマとは遊んでいただけですの…?」

よよよ、泣き崩れる演技をしてわたくしは慧の気を引こうとします。

「んー、タマ?あいつは猫だろ…」

言いかけて、慧はがばっ、と起き上がりました。

「というかウチは1人暮らしでほかに人は居ないはず、って、タマ?」

今だ猫の姿であるわたくしを見詰め、首を傾げます。

「はい!ケイさんにタマと名付けられた者ですわ!」

「うわ、喋った」

「やっと呪いが切れて喋れるようになったんですわ!」

「呪い?っていうかなんで喋ってんだ猫が」

「魔法を掛けられて猫になっているだけの人だからですわ!あの魔法師、判決は猫に変化させるだけで言葉を封じたり異世界に転移させたら王命違反で処刑……にはならなさそうですわね王の寵愛を一身に受けるあの女の仕業っぽいですし王はあの女が言う事は絶対とでも思っている節がありましたし」

「ちょっ、ストップストップ!だんだん目から光が消えてくのが怖いから!」

「あ、ごめんなさいですわ」

「つまりタマは異世界の住人でただの猫じゃなかったって事だな?」

「そうですわね。あ、わたくしの本来の名前はセラヴィナと言うのですわ。どうかセラと呼んで下さいまし」

「了解。タマはセラ、セラね。うっかりタマって呼んだらごめんな?」

「はい。その都度訂正させていただきますわ。あ、ケイ、わたくしはこれでも元々は人間ですのでこれからはわたくしの前で着替えたりするのは恥ずかしいので控えてくれますか?」

「あ」

ボンッ、と音がしそうな程に慧は顔を赤く染めた。

そのまま倒れそうになり、わたくしは慌てます。

「け、ケイー!ちょ、気絶しないでくださいですのー! <我が主に気付けを! リフレッシュ!>」

「……せ、せらぁ」

「あ、あらら?ちょっと威力を間違えました?」

「今のなんだ!? やっぱ魔法か魔法なのかというかこんなに一気に意識がすっきり覚醒したのはなんでたなんの魔法だやっぱり魔法名はリフレッシュあたりなのかというかさっきなんて言ったんだ呪文か!?」

「け、ケイ、落ち着いてくださいですわ。順番に答えますから…」

というかよく今の魔法がリフレッシュだって解りましたね、慧。

ああいえ、あのラノベという書物の情報でしょうか?

「まず、今のものは霊術です。ラノベに出てくる魔法とよく似ていますが、わたくしにとって魔の付くものは魔族が、にっくき仇敵が使うものですので、その呼称はご遠慮願いたいところですわね。それから効果ですが、この霊術は我が主に気付けの効果を発生させる効果があるのですわ。魔法名は推測の通りリフレッシュですわ。あとは発音ですが、さきほどは<我が主に気付けを、リフレッシュ>と言いました。言語として聞き取れるかどうかは才能に左右される部分が大きいのですが、聞き取れなさそうなら意味を翻訳いたしますわ」

「ふおおお!」

よ、喜んでる…のですわよね?


そんなこんなで少年と猫の生活は始まったのでした…ですわ?


*****


あれから1、2年。

やっと、やっと人に戻れそうなのですわ。

月日が経つ内に自然と意識し、恋人同士となった慧。

彼と思う存分イチャイチャするためにも、人間に戻るのは悲願です。

「では、いきますわ…」

すぅ、と呪文を唱えようとした、その瞬間。

ヴンッ

「魔法陣!? 慧逃げて!」

「え?え?」

突然、わたくしを中心に魔法陣が展開しました。

魔術です。しかもこの魔力、わたくしをこの世界に送ったあの術者です。

おろおろと困惑している慧に向け、逃げてと言いましたが…、

《離れたくない!セラが遠くに行くのは嫌だ!》

そんな感情と共に、慧が決意した表情でぎゅっとわたくしを抱き締めます。



*********



「ようこそおいでくださいました! 聖女の敵となりうるものよ!」

「「…え?」」

「ここは異世界ベリアのラヴァニア王国!あのいけすかない聖女マリアを打倒し、国を正せる力を持つ者を私がお呼び致しました」

「ラヴァ、ニア?」

それは、まさか、

でも、まさか、

まさか、あの、わたくしが慧と出会った切っ掛けを作ったあの国?

でも、偶然は、

しかし、ベリアと、

でも――

「あの、ここはどこですか?」

トラウマになっているあの国の名を聞き、思考に呑まれかけた時でした。

おそるおそると言った様子で慧が発した声に、はっとする。

あの声は外向き…いえ、敵と相対した時の声です。弱弱しいようにみせる声音の中に、一筋、煮えたぎるような強い怒りを感じます。

彼の声で、ようやく落ち着けました。

わたくしがすべき事は、安全な場所を確保すること。

見たところ人族のようですが、魔族の魔力で召喚されている以上油断は禁物。

一先ずは普通の猫の振りをしていたほうが良さそうです。

「にゃおう?」

「…タマ? なんで君がここに…」

《勘違いしないで欲しい。セラと言ったら勘付かれるかもしれない。お願い、普通の猫として振舞って。どうか、僕の意図に気付いて》

「なあん?」

不思議そうに辺りを見回し、ペラペラと喋っていたあの男を見た瞬間、ぶわっと毛を逆立たせ、厳戒態勢に。

お願い、気付いて、慧。まずは安全を確保しないと。2人きりにならないと。

「どうしたんだタマ、あの人がどうかしたか?」

「勇者様?」

「っ、近づかないでください!」

「…え?」

「あ。こ、この子、この子がこんな風に警戒したヤツは、大体僕に害意を持って居るような悪人だったので、僕も警戒していて。だから、だから近づかないでください!」

「……それは、申し訳ありません。では行動で信用を勝ち取ることにいたしましょう。勇者様、どこか休める所を提供しましょう。あなたに害を与えることは神に誓っていたしません。どうか信用していただけないでしょうか?」

「…………わかりました」


こうして、異世界に召喚されたわたくしと慧は、強制的に救世に関わることになったのでした。



19/5/7 前書きの言い回しを少し修正。


お読みいただきありがとうございます。

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[一言] 賢者シリーズから来ました。 とても面白かったです。 続きが気になるので、いつか連載版が始まったら嬉しいです。
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