化け猫の物語 3
3
放送事故になりそうな位の
長い沈黙の後
ゴホンゴホンえへん、えーと
なんだかはなしが、凄い所いきそうなんですが……?
いいんですよ、何でもいいますよ。
パーソナリティーも、
ラジオ人としてのプロ意識が目覚め始めたのか、
はなしに食いついていく。
じゃあ、先ほどの、
《ドキッ!》《ネコッ?》
前に過ごしていた女性の正体は?
なーんつって?
ああ、ぼくの最愛の人ですね。
その人と出会ってぼくは生まれ変わって、
いまの自分になれたんです。
ああ、なるほど、
恩師にあたられるわけですね?
歌の、先生ですか?
失礼ですけど、
お母様かなにかのような、感じの?
いいえ、違いますね。
若、くはないのかな?
でも、妙齢の美しい女性で、
先ほどからぼくが最愛っていっているのは、
女性として、1番愛している、って、
そういう意味で、ですよ?
い、いいんですかね?
か、関係者の方、付き添いの方か、マネージャー、
いらっしゃいませんか?
はなしの流れについていけずに、
周囲に助けを求めるるが、
もう、止まらない。
そう、愛のチカラは、もう、止まらない。
その人の名前は、
さえき ともみ
ぼくの最愛の人で
ぼくの初恋の人で
ぼくの天敵で、
ぼくの、すべてです。
ぼくは、その人のために、生きています。
ねー、
聴いてる?
ともちゃん?
ぼくだよ、ぼくだよ。
ともちゃんのために、帰って来たよ。
(ばっか、ばっか、ばっか…………)
(どこで、なに言っちゃってんだよお?)
(ラジオの人が、困ってるんじゃない?)
(あんたって、ホント、……バカ…………)