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第九話 事件を推理する

ずっこけ転生記 ~俺ってばドジで転生しっぱなし~

って話を書き始めました。こっちの気分転換に書く事になりますので進行は遅いと思いますがよかったら見てください。


https://ncode.syosetu.com/n3085fb/

 襲撃騒ぎから一夜明け、スフミ王国の王城の離れで遅い朝食を取っている。徹夜にはならなかったものの、ベッドに入ったのは深夜も深夜、明け方三時だった。短い眠りでも活動するには支障は無いが、予定もないので少し遅くまで皆で寝ていたのだ。


「昨日は上手く行きました。ご協力ありがとうございます」


 そこにはエゼルバルド達五人とテオドールがテーブルを囲って座っている。テオドールは協力したお礼をするために、離れまで来た所だった。テオドールも朝食を取っていない事もあり、一緒にテーブルを囲ったのだ。


「それで、彼らの目的や依頼人などは判明したのですか?」


 スイールが紅茶を口に運びながらテオドールに尋ねる。関わりたくは無いが、首を突っ込んでしまったため少しだけ気になるのだ。まぁ、その依頼主がわかっても仕返しに行くなどは無いのだが。


「魔法剣を手に入れるのが目的みたいでしたね。何処で魔法剣の事を知ったのかも気になりますが、そこはまだ吐いてない様です。魔法剣の事を知っているとなれば、トルニア王国かディスポラ帝国になるはずですが、トルニア王国はありえませんね。ご連絡いただければ今回の様に地下迷宮での作業にご協力できます、回数に制限はありますが。ディスポラ帝国がバックについていると考えるのが有力ですが、他の独立商人と考えても違和感は無いですね」


 テオドール達の考えではディスポラ帝国が噛んでいるのだろうと思っている様だ。その仮定で考えていくとすべてが繋がるのではないか、とスイールは思う。そして、その様に思ったのはエゼルバルドも同じであった。


「やはり、ディスポラ帝国が一枚噛んでいる、いや、すべてがディスポラ帝国の計画であった、とすれば全て説明が付くかもしれない」

「全て?全てですか」


 エゼルバルドの発言を聞き、テオドールが驚嘆の声を上げる。


 エゼルバルドの考えは、先ず、今年の春先に起こったトルニア王国、ベルヘン周辺で起こった帝国兵事件が動きの発端ではないかと。トルニア王国の後方を撹乱しスフミ王国への援軍の阻止を意図した騒ぎを起こさせ、内戦状態か、内向きの討伐軍を起こさせる。


蜥蜴人(リザードマン)も帝国から逃げて来たって言ってたわね。あれに脚を折られたのよ!」


 それはアイリーンを助けた時の事だった。


 次に麻薬の蔓延だ。これ自体は流れてくるルートの一つは解明できたが、まだ何処が製造しているかは解明できていない。だが、トルニア王国の王都では南方訛りの売人が暗躍していたと考えると、ディスポラ帝国が麻薬を製造し、売り上げを国庫に入れていたとしたらと考えられるだろう。


「あいつ等ときたら訛ってて目立ったのよね。言葉遣いですぐに足が付くわ」


 合間合間にアイリーンが口を挟んでくる。そういえばアイリーンが一番被害を受けていたと今頃になって気が付いた。

 テオドールに聞いてみたら、やはりスフミ王国でも麻薬の蔓延が問題になり、頭を悩ませていたらしい。トルニア王国からもたらされた情報で多くの麻薬を発見、回収でき、売人に打撃を与える事ができた、と。

 元締めはトルニア王国の時と同じでアーラス教が絡んでいたようだ。


 そして、昨日のスフミ王国の地下迷宮での襲撃事件だ。誰かに成りすましていたと考えるのが妥当だとして、その訓練は何処で受けたのか?誰の指示だったのか?

 一番はそれで誰が得をするのか、だ。


「ふむ、トルニア王国からの使者から剣を奪い取り、スフミ王国とトルニア王国の仲を悪くさせようと企んでいた。時期は戦争の後になったが、この計画が上手く行っていれば戦争はスフミ王国だけを相手にすれば良いと。なかなかの考えじゃな」


 ヴルフが飲んでいたお茶のカップを置き、感心しながら話を纏める。

 多少無理な計画があったが、おおむねの計画はこの様に考えていたのではないかと。


「でも、麻薬を運んでいたアーラス教はどうなるの。あれって国なんでしょ?まさかアーラス神聖教国がディスポラ帝国と繋がっているってこと?」


 ディスポラ帝国がすべての計画を立てたとしても、アーラス神聖教国が絡んでいるとは限らない。同盟を組んだとも通商条約を結んだとも情報が無いのだ。むしろ、ルカンヌ共和国を後方から支援しているアーラス神聖教国とは敵対関係である。


「アイリーンの疑問ももっともだが、アーラス神聖教国が協力しているよりも、その中で儲けたいと思っている輩だけと考えた方がいいかもしれないな。信徒に持たせる供物も現地司教に渡すまで開けるなと命令すれば信徒はそれに従うだろう。アールストの司教が肥えていた事を考えればうなずけるだろう」


 スイールは国家間で協力していた説を否定したいと考えている。エゼルバルド達もその意見におおむね賛成の様だ。ディスポラ帝国とアーラス教が何処まで繋がっているのか?そして、トルニア、スフミ等の国家内にどれだけ協力者がいるのかを見極める必要がある、として朝食を食べ終えた。


「アーラス教自体を疑う事も視野に入れて行動するように上に伝えておく。この朝食でこんなに有意義な話ができるとは思わなかったな。さすがトルニアのカルロ将軍が推薦するだけの事はある」


 テオドールがエゼルバルド達を褒めている様だが、むず痒いらしくそんなことは無いですよ、と否定するのがやっとである。

 だが、カルロ将軍が推薦したとさらっと言われたが、それこそ寝耳に水だ。何をやらせようとしたのか、あるいはただ働きだったのか?終わってしまったことなのでどうする事も出来ないのだが。


「これからはどうされますか?」


 テオドールが優雅に食後の紅茶を飲みながら尋ねてきた。


「この城下を見てみたいと思います」


 スイールがそれに答える。

 カルロ将軍からも観光をするように命令されている。それに、


「「破ったシャツを新調したい!」」


 アイリーンとヒルダが揃えて口にする。

 昨日の地下迷宮から地上へ出る時に怪我をしたとシャツをわざと破り包帯を巻いた、しかも血で汚してまで。そのシャツを新しくしたいのであった。戦闘用兼旅用で丈夫なシャツを愛用しているので、装備品を扱っているのが鍛冶屋などでしか買えないのだ。そして値段が多少張るのだ。


「そうでしたね。こちらで購入する代金を支払うことになっていましたね」


 テオドールが、こちらの計画に従っていただいたので当然です、と購入金額を出してくれる事にしてくれた。

 アイリーンとヒルダはそれだけでは足らずに、ウィンドショッピングを楽しみたいと騒がしい。


「それではまず、泊まる宿をご案内させましょう」


 女性二人の騒がしさを見ながらテオドールは側で控えていた侍女に一言二言、耳打ちをすると、侍女は、”準備をしてまいります”と一礼をして部屋を出て行った。




    ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 テオドールに紹介してもらった宿に荷物を置き、街を散策するエゼルバルド達。まずは破れた装備品を購入しようと戦闘用の装備を扱っているお店へと足を運んでいた。


「スフミ王国もディスポラ帝国と国境を接しているから装備品を扱ってる店も多いな」

「ほんとね~。これだけあれば当たり外れが結構あるんじゃない?」

「そうでもないみたいだぞ。外れの店は客が入らなくなるから競争は激しいらしいぞ」

「「へ~」」


 エゼルバルドとヒルダのやり取りにヴルフが間に入って説明をしている。


 ここスフミ王国で、大都市と呼べるのはこの王都スレスコのみである。小さな山村や漁村は沢山あるのだが。攻略の対象とみなされる大都市はここスレスコのみで、兵力のほとんどがここに集まる、歪な国家構成をしている。それもあり、守りに対してはかなり強固である。

 それに付け加え、北東を海に南西をアミーリア山脈に挟まれた狭い場所に国家があるのも守りを強固にしている理由でもある。


 貿易は北に広大な領地をもつ同盟国のトルニア王国とベルグホルム連合公国経由でルカンヌ共和国と関係を持ち、国内に入ってくる物品も豊富だ。それ故に麻薬などが入ってくる下地も出来ていたのだろう。


 そんな話をしていると、宿の紹介もしてくれたテオドールが勧めてくれたお店に到着した。大きな商店と聞いていたが、想像以上に大きかく、スレスコで五本の指に入る程の大きさだろう、建物の高さが。


「大きいね~」

「商店でこんな大きなのは見たことないよ」


 女性二人が空を見るように顔を上げている。石造りのその建物はおおよそ五階建てくらいだろうか?一つのフロアの天井が高いのか、窓と窓の間が離れている。

 だが、通りに面している正面の幅はそれほどでもない。


「もしかして、売り場を増やすために上に伸ばしたのか?」


 それが正解であった。その話題はそれで終わりにして、店の中へ入って行く。


「「いらっしゃいませ~」」


 中にいる店員が元気よく声を掛けてくる。外から見るのとは違い、白い壁紙を張った店内は明るく、客も多い。引っ切り無しに出たり入ったりではなく、中でじっくりと選んで購入するお客が多いようだ。

 重量物、金属製の鎧などは下の階に、軽めの装備品は上の階に置いてあるようで、鎧、盾類は一階、武器は二階、シャツやズボンなどは三階、四階は雑貨類だ。例外として一階にも少しだけシャツやズボンが置狩れている。

 ちなみに五階は事務所となっていて、客の立ち入りは禁止とされている。


「ほぉ、凄いもんだな」


 一階の展示品を見てヴルフが感嘆の声を漏らす。さすがに金属製と革製、全身鎧と部分鎧等、数十種類の防具が並んでいれば声を漏らすのもわかる。


「サイズ調整やオーダーメイドは隣の工房で受けた待っておりますのでお気軽に声をお掛け下さい」


 店員が声を掛けてくるが、今日はそこまで必要ないので、申し訳ないと謝りながら奥の階段へと進み、そのまま三階へと上がる。

 内装は一階と同じ白い壁紙だが、おしゃれな洋品店みたいに天井からハンガーにかかったシャツが吊るされていたり、マネキンが置かれていたりとちょっとしたファッションショーでも見ている気になる。

 さらに男性コーナー、女性コーナーと分れていて、性別を分けたレイアウトを取っていた。


「ここもすごいわね」

「これ程とは。テオドールさんに良い所を紹介してもらったわね」


 女性からは評価は高い。さらに縫製したところを見ても納得の様子だ。当たり外れが無い、いや外れが無いのだ。

 ただし、価格は少し高めだ、一割弱ほどだが。長い目で見れば価格も納得だ。


「アイリーンはどんなの買うの?」

「やっぱりこれよね!」

「また際どいのを」


 アイリーンは胸元が見える男性から見たらそそるシャツにしたらしい。これから冬に向かうので上に羽織る厚手のショートコートも忘れていない

 買う物を見た皆は、アイリーンのこだわりはぶれないなぁ、と納得の表情をしていた。




 五人の買い物を纏めて支払い--請求先は王城のテオドール宛てだが--を済ませ、店舗から外へ出てくると、一人の男から声を掛けられた。


「兄ちゃん達、この店で買って損したな。もっと良い店があったんだけどなぁ」


 何やら絡んで来たが喧嘩……、ではなさそうだ。折角買い物をして気分が良い所にケチを付けられては気分が悪いので無視し何処かへ行こうと歩き始めると、


「無視かよ、覚えてやがれ!!」


 その男はどこかへ駆けて行ってしまった。


「何でしょう、あれ?」

「「さぁ……」」

「新手の宗教勧誘?」

「そんな訳無いでしょ」


 それぞれがいい加減な事を言っているが、少しだけ気になったスイールが元の店に戻り、店員といくつか言葉のやり取りをして戻ってきた。


「新しく出来たお店の勧誘みたいですよ。向こうの方が評判悪いみたいですね。その場にいたお客からもいい噂は聞かなかったですよ」


 店員曰く、一か月程前にお店を開き客引きをしているらしい。かなりの人がその店に行ってるが大きな買い物をしないですぐに帰っていると。客引きは禁止されていないが、堂々と店の前でされるのでいささか迷惑気味なのだと。


「その店に冷やかしがてら行ってみますか?」


 その言葉に、面白そうだから賛成、と皆で行ってみることにした。




 そして、この通りの外れ、空き店舗に入った”装具屋バハス”の前へとやってきた。元からあった店舗を使ったためそれなりの外装なのだが、外から見える飾り棚にある装備品はあまり良いものでは無かった。


「何じゃ?こりゃ」


 品揃えもそうだが品質の酷さにヴルフが声を上げる。


「あ~、確かに思わず声に出しますね、これは」

「わかる、わかる」


 店内も期待できないだろうと一応、店の中に入ってみる。が、飾り棚の品物とは違い、壁に飾られている剣は錆一つ無い刀身や鏡のように磨かれた鎧などが所狭しと飾られていた。

 しかも、値段は市場の半値から七割程度。


「どうですか、これ?」

「う~ん、触ってみない事にはわからんのぉ」


 店内を見渡しながらエゼルバルドとヴルフが小声で話し込む。そして、飾られている剣を手に取ろうとしたときに店員から声を掛けられた。


「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」

いつも拙作”Labyrinth&Lords”をお読みいただきありがとうございます。


気を付けていますが、誤字脱字を見つけた際には感想などで指摘していただくとありがたいです。

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これからも、拙作”Labyrinth&Lords”をよろしくお願いします。


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