決闘という名の乱用会
学園の第三闘技場は、敷地内の西側にある。大きさは東京ドームの四分の一ほどで、観客は最大で五千人が入る。石畳の簡素なフィールドの上でバコバコ魔法を乱用するという寸法だ。
観客席に魔法が飛ぶということは万に一つもなく、すべて防壁でガードされる。
「さて、永らくお持たせしましたぁ!それではこれよりぃー、高等部二年エリス・フレイアと、同二年グレイ・ガリアスのぉ、決闘を開始しまぁーす!」
元気よく、ハツラツとして司会をしてるのは放送部門の生徒だ。それに乗じて観客席の生徒がワーワーと歓声を上げる。声という声が重なって、もう濁流の音にしか聞こえなかった。
「それではルールを再確認します。決闘者のどちらかが気絶、あるいは降参の意思を示した時点で試合終了!また、客席にいる執行委員の誰かが試合続行不可能と判断したときも同様です!
それでは決闘者入場です!
まずは本学園序列4位、エリス・フレイア!」
長々とした口上の後、司会者が示した入場口から一人の女子生徒が姿を見せた。途端に歓声はより一層大きくなった。
紺色の髪に二房の藍色の髪が混ざったロングストレートヘア、整った目鼻立ちなどが最初に目を引き、その次に彼女の体に目が泳ぐ。けっしてグラマーではないものの、ほどよく鍛えられた姿態は少しばかり官能的である。
エリス・フレイアその人は凛々しい顔つきをしており、例えるなら正道に生きる騎士のような存在だ。その姿は神々しくもあった。
「それでは続いて本学園序列8位、グレイ・ガリアス!」
続いて逆の入場口から今度は枯れ枝のような男が姿を表した。オシャレのつもりなのか、枯れ枝の分際で長い髪を束ねて、耳にピアスとかをしている。
制服もところどころ改造していて、絹地の色が白になっていた。オシャレだか知らないけど、まったく似合ってない。頭のてっぺんからつま先まで枯れ枝なのがなんとも痛々しい。もう少し脂肪をつければ、マシになると思いたいレベルだ。
8位様が登場したときは4位様のときほどの歓声は起きなかった。せいぜいが、4位の時の三分の一ぐらいの歓声だ実に寂しい。
「では、両決闘者はステージへ!私の投げたコインが地面に落ちた瞬間、決闘開始です!」
そう言って、司会者は二人がステージに上ったのを確認して天高くコインを投げた。数秒後にコインは乾いた音を立てて、地面に落ちた。
まず最初に動いたのは4位だ。周囲の瘴素を細い雷矢に変える。電気は空気を秒速150万キロで移動するとはいえ、矢自体は人の手で放つため、そこまでの速度は出ない。言ってしまえば普通の矢よりも少し早いかなー、ぐらいの速度だ。
しかし、4位が矢を生成している最中、分厚い防御用の障壁を作り出した。勢い良く放たれた雷矢も貫くことができずに障壁にぶつかり霧散した。
さすがに一撃で仕留められるとは思っていなかったのか、4位はすぐさま新しい魔法を発生させようとする。今度はさっきよりも多くの瘴素を使用しようとしていた。大量にんなもん使えばそのスキができる。バカだな、4位は。
「Tuono・et・spear!」
「Un・muro」
4位の雷槍を8位の障壁が防ぐ。雷矢よりも威力はあるが、その分だけスピードがない。よってより厚く防壁を張ることができたのだ。
「瞬間系の魔法ね。威力だけに特化しただけの単純な魔法」
ポツリとつぶやく。
魔法には大きく四つの系統があって、それぞれ瞬間系、持続系、即発系、遅発系とある。全部読んで字のごとくの効果を発揮する。多くの魔法は四系統の内前者二つと後者二つのいずれかを掛け合わせて使う。
「Tuono・et・arabarda・of・cento!」
「Un・muro」
無数の雷槌が8位に降り注ぐ。その様はまるで雷の雨のよう。8位は分厚い障壁を張ったが、さすがに防げなかったのか、雷が8位に直撃した。
ステージにヒビが入り、土煙が巻き上がる。俺を含めた観客の視界から一時4位と8位の姿が消えた。
そして、土煙が晴れる数秒前、酷い奇声が闘技場中に響いた。甲高く、耳を劈くような女性の声だ。土煙が晴れ、ステージの上の景色が全観客の目に入った。