抱擁
こんばんは、遊月です!
約3ヶ月ぶりになってしまいましたが、遂に更新することができました、暁9話です。ブリュッケンブルクで倒れてしまったしずく。目を覚ましてからパトを探すと、そこには……?
本編スタートです!
「しずく……?」
振り返ったパトの顔は、まるで親に置いて行かれるのを怖がる小さい子どものようで。次の瞬間その顔が綻んで、口元にとても嬉しそうな笑みを浮かべて「しずく!」と飛び込んできた。……といっても、パトの方が私よりもずっと身長が高いから、私は受け止めきれずに「お、おっ」なんて言いながらよろけてしまったけど。
でも、たぶんそんな私の状態を気遣う余裕なんて、今のパトにはない。
「よかった、しずく、よかった……! 目、開けない、ずっと開けない、思った……っ、怖い、だった……!」
嗚咽に紛れてしまいそうな声で必死に自分の気持ちを伝えながら、きつく私を抱き締めるパトの背中をポンポンと叩きながら、「ごめんね、もう大丈夫だから。私は、もう大丈夫。パトの傍にいるよ」とちゃんと伝える。
そこでやっと落ち着いた様子のパトがゆっくりと地面に下ろしてくれたとき、私は自分の身体がそれなりの高さに持ち上げられていたことに気付いた。う~ん、私もけっこう気が動転してたのかも。
だって、人(犬っぽい要素がだいぶ混ざってるパトをなんて言っていいのかちょっとわからないけど)が泣いているのを見るのなんて、久しぶりだったから。
泣き止んで、「おかえり、しずく」と言ったパトの顔はとても晴れやかで。
そっか、パトにとって「おかえり」っていう言葉すら、かける相手がいなかったんだ。彼がそう声をかけることのできた相手――少年時代の彼を自宅に閉じ込めて守っていた彼のお父さんも、この世界中にいる【災厄】に侵されて何年も前に死んでしまったのだから。
それなら、もう私は彼を不安にさせないようにしよう。
もちろんそんなこと約束できないに決まってる。私がここに来たのだって、いきなりのことだった。この先、何が起こるかなんてわかるはずもない。もしかしたら、こうして離れないなんて約束することは後でパトを傷つけてしまうかも知れない。
だけど、言いたかった。
「約束するよ、私パトのことひとりにしないから。ずっと傍にいるから」
落ち着いてもまだ少し震えていたその広い背中に、手を添える。無責任な言葉だけど、それでも今この時点では本当の気持ちだから……!
伝わってほしいと思いながら、「大丈夫だよ」と繰り返す。
やがて、どれくらいそうしていたかわからないくらいになって、ゆっくりと身体を離したとき。
「ありがとう、しずく」
そう微笑んでくれたパトの顔は、石造りの街に注ぎ込む太陽よりも眩しかった。それをまっすぐ見返すのが、少しだけ気恥ずかしくて。
「ぁ、えっと、戻ろ? カーラさん……さっきパトが私を届けてくれた人が、心配して待ってるから」
「うん」
そんなやり取りの後、カーラさんの家に戻った私たちは、そこで彼女の手料理をごちそうになった。
街のすぐ下に位置する海峡を泳ぐ魚と香辛料を使った料理は、しばらく森の中を携帯食料とたまに採れた――パトが採ってくれた――食べ物だけで歩いていた私たちにはまるで天国にいるような味で。
その最中に、カーラさんが口を開いた。
「そうだ、ねぇ天使様。ヴィンタヴァルドの王様にはお会いになりました?」
「……いえ、まだです」
そういえばお城を目指すなんて話をパトとしてたのに、こういうことになっちゃってるんだなぁ……。自分の不甲斐なさに顔が熱くなる。
「王様は天使の伝承にもお詳しい方です。きっと、あなたの旅のお役に立っていただけると思いますわ」
その笑顔と、隣でカーラさんの料理を夢中になって食べているパトを交互に見て、私は次の場所へと思いを馳せた。
もうこうやって、パトを泣かせるようなことがないように、強くならないと。天窓から見える月にそう誓いながら。
ようやくお城登場です! いや、城下町で終わりそうな予感も……(;A´▽`A 次回をお楽しみに♪
ではではっ!!




