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暁へ至る群青  作者: 遊月奈喩多
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春の夜の夢の如き…

こんばんは、万を持して(?)当サイトに復帰させていただきました遊月奈喩多です!

あれこれジャンルを問わず書いていると思われている遊月ですが、どうやら異世界(?)転生(これは間違いなく言える)もののお話を書くのは、未投稿時代も含めて初めてだったようです。

異世界に飛ばされた少女と、彼女を捜し続ける少女。

彼女たちが辿り着く結末とは……?


こちらも長い旅になりそうですが、お付き合い頂けましたら幸いです!

長くなりましたが、本編スタートです!!

「じゃ、またねー!」

「うん、ばいばい」

 明るい笑顔で橋を渡っていった幼馴染みを見送る。楽しそうにスキップをしながら遠ざかっていく後ろ姿が、夜の闇に溶けたのを確認してから。


「っあぁぁぁ~! だるい~」

 ちゃんと周りに人がいないのを確かめて、ようやく私は気を抜いた。



 私こと雨空(あまぞら)しずくは、今わりと疲れている。なんというか、たぶん全てに。

 この春、いわゆる女子大生というやつになった私を待っていたのはとにかく「人」だった。……まぁ、当たり前だけど。

 他はどうかは知らないけれど、私の通う大学には全国から学生が集まっているらしい。入学式のアナウンスで聞いたら、どうやら私の学年だけで1万人近くいるのだとか。

『大学でも一緒だね、しずく!』

 入学式の会場を出てすぐ、もう満開を通り越して散り始めている桜吹雪を背にそう微笑んでいたのは、さっき私と分かれて橋を渡っていった幼馴染み、朝野(あさの) (ひかり)だ。

 彩とは小学校のときから一緒の親友で、お互いの趣味とか私物とか、初めての相手くらいまでのことなら把握している。

 というのもそもそもは、小学校の頃にテンパりやすくてでおっちょこちょいだった彩の荷物を私も一緒になって管理していたことから始まったのだ。


 昔から保護者のようなポジションで面倒を見てきた流れで、つい高校や大学も同じところに進むのが当たり前になっていた。まぁ、彩もそれで嬉しそうにしてくれてたし、私も安心だし、いいことずくめなんだけど。

 

 彩のことを一言で紹介するなら、「とても可愛らしい女の子」になるんだと思う。全体的に平均より少し小さくて、元気よくて、素直で、たぶん私がしたらあざといの一言で片付けられるようなことも自然にできてしまう、言うなら本当に「とても可愛らしい女の子」だ。

 あと、彩はたぶん天性の甘え上手だ。幼い頃から世話を焼いていて、たまにはそれが面倒に感じることもあった。けど、いつも彩は『ありがとう!』とかの感謝の言葉を、その「とても可愛らしい」笑顔で伝えてくれるのだ。私もわりと単純だから、そんな笑顔で簡単に絆されてしまうのだ。わたしがいないとほんとにダメな子。というか、たぶん周りに助けてくれる人がいないとどうしようもない子。それが彩だ。

 たぶん、ありとあらゆることで世話を焼いたと思う。

 今付き合ってる彼氏だって私の紹介だし、初めてできた彼氏とのデートで何をどのタイミングでどうすればいいかという相談にも乗ったのを覚えている。果ては『今日外食したいんだけど、どこがいいかな?』というメールにも答えたことがある。

 そのくせ相談してほしいことは勝手に決めてしまうこともあったりして、高校や大学などの進学先は大体彩が先に決めて、私はというと後からそれを聞いて同じ場所を志望するというのが常だった(偏差値は私の方が少しだけ高いので、合わせようと思えば合わせられる)。


 で、つまるところそんな風にただ「彩の付き添い」という形で入った大学で、私はとにかく「人」に疲れ果てていた。

 まず、大学の正門から校舎に至るまでの道にズラッと並んだサークル勧誘の列。とりあえず愛想笑いをして通り過ぎられるところは通り過ぎて、勧誘がしつこいサークルに対しては適当に相手をしてからやんわりと曖昧な返事をして遠ざかる。

 それから同級生とのグループ作り。私にはとりあえず彩がいるけど、もちろんそれだけの狭い交友関係じゃやっていけないことは決して短くない人生の中で学習している。だから、興味ない話題でも相槌を打ちながらマジョリティに属しそうなグループを探って、そこの空気に馴染む。その辺りは彩も心得てくれているからまだ楽だ。

 その2種類が延々繰り返される中での履修登録とかを済ませる。

「ねー何取るー?」

「まだ決めてなーい」

「じゃあこれにしない?」

「いいね!」

というやり取りを何回繰り返したか……。

 そして、これは今日あったことなんだけど、新入生歓迎会。

 新入生が来たということで舞い上がっているのか無理にテンションを上げているのか、とにかくうるさい上級生たちに誘われて、その場の空気に乗って居酒屋へ。「あれー? 未成年しょー?」とか言いながら、自分たちだって成人しているかどうかギリギリなのだろう新歓委員長がちゃんぽんしている。

 で、歓迎会の舞い上がった空気に乗じて「あのさ、しずくちゃんって今フリー?」とかナンパしてくる輩まで出てくる始末だ。鬱陶しいことこの上ない。

 ……………………。 

「あー……」

 思い出したら、疲労と一緒に余計なことまで思い出して吐き気がしてくる。

 ナンパ上級生をどうにか黙らせてから(酔っ払ってちょっとヤるくらい浮気じゃないよとか言われたときは神経を疑った)、彩の方を見たとき。


『彩ちゃんってかわいいよね』

『えー、そうですかー?』

『俺たち付き合わない?』

『え~、どうしよっかなぁー』


 たぶん場の空気に流されるまま多少お酒を飲んだのだろう、そういえば一緒に帰ってくるときもちょっと酒臭かったし、いつも高いテンションが更に高くなっていた。ただそれだけ。それだけのはずだけど。

 顔を赤らめて照れ笑いなんだか愛想笑いなんだかよくわからないヘラヘラした笑顔を浮かべている彩を見たとき、入学してから溜まっていた黒いモヤモヤが爆発しそうな、嫌な感触がお腹の底からこみ上げてきた。焦燥感にも似たそのモヤモヤに突き動かされるように、私は彩に駆け寄っていた。

『彩~! 何か酔っぱらっちゃったみたいで、私ちょっと風に当たりたいんだけど』

 あくまで酔っ払って舞い上がった幼馴染の顔をして。

 そうしたら、彩は私に付いてくるのがわかっていたから。

 案の定そのとき彩は私に付いて来て、何とか不快な流れを断ち切ることはできた。

 だけど、思い出してしまったらまた黒いモヤが込み上げてくる。

 心を燃やしていくその熱に耐え切れず、心が炭化していく。その痛みから逃れたくて、思わず口にしていた。


「いっそ、そういう気疲れとか一切ない世界に行きたいよほんと……!」

「じゃあ行けばいいじゃん」

 え?


 後ろからそんな声が声が聞こえて。

 振り向いたお腹が、何かがぶつかったような衝撃とともに熱くなってきた。

 何度も、何度も、熱が私のお腹で生まれる。うまく働かない聴覚の中でも、何か鋭いものが湿った肉を突いている気味の悪い――怖気おぞけのするような音は続いていく。


ざくっ、ざくっ、ざくっ、ざくっ、ざくっ、ざくっ、ざくっ、ぐちっ、ざくっ、ぎちっ、ざくっ、ざくっ


 時々どこかの繊維を引き裂いているのか、麻痺しかけた痛みが何度か鮮烈に蘇って体を貫いていく。それが繰り返されて、視界すらまともに保てなくなって。立っているのか倒れているのかも曖昧になった。だけど、体が橋の下に向かって落とされたのは急に冷たくなった感覚でわかった。

 あぁ、私、川に落とされたんだ。

 このまま死んじゃうのかな……。

 嫌だ。嫌だよ、そんなの。

 だってこのまま死んだら私、自分自身に何もしてあげられないままじゃない……。

 そんなの、いや……だ…………。




 春にしては、朝晩だとしても寒い。そんな寒すぎる空気に起こされたとき、私は木造の小屋の中で足首を鎖に繋がれていた。そして、目の前では。

「おぉ、天使様。目、覚ました」

 とても嬉しそうな顔で私を見ながら、長身の男がふさふさした尻尾を振っていた。

こんばんは、後書きはできるだけスマートにまとめたい遊月です!

もしかしたら「これ、異世界転生じゃなくない?」と不安に思われた方もいらっしゃるかも知れませんが、ご安心ください。たぶん次回以降異世界っぽさが出てくると思われます。そう、たぶん。

しずくちゃんの前に現れた謎の男性は一体何者なのか?

そもそも、彼女を襲ったのは誰なのか?

序盤から色々ぶっこんで大丈夫なのか、私!?


様々な思いを抱えつつスタートいたしました! よろしくお願いします!!

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