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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第3章 防衛部外機動隊
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第35話 現実改変の傷跡②/リィの崩壊

若干の残酷描写があります。苦手な方はご注意ください。

部隊は大きく3つに分けられた。


遊撃隊のトップクラスを中心に構成された、突撃し火力を出す目的のA班。

残りの遊撃隊と後方支援隊で構成された、防御と回復のB班。

そして、すべて後方支援隊で構成された補給のC班。


総勢53人のメンバー。ヴェルはA班、ライラとフィンはB班、エルナはC班。

俺はロゼさんに別行動を命じられ、2人で行動中だ。

それにしても、あのリィさんが魔王?まったく意味が分からん。魔王や魔物を討伐するのが俺らの仕事と聞いたが…

後で詳しく話を聞くことに決め、装備品の点検を行う。


入隊時に買ってもらった装備だが、今でも全く問題なく使えている。

俺の準備はこんなものでよさそうだ。当然だがリィさんを殺さずに助けることが目的なので、俺の魔法攻撃無効も何か役に立てるかもしれない。


「ロゼさん、準備できました」

「うん、それにしてもテスラが頼りになる戦力になるとは思わなかったよ」

口の端を吊り上げ笑うロゼさん。彼女も虹色の布装備を着用している。

表面は銀色で、皮膜の様に薄っすらと虹色の光が浮かんでいる。どうやら特別製っぽいな…


「この防具はね、テスラの持っている特性みたいに体放射魔力を抑え、魔法の効きを悪くする効果があるのよ。普通に注文したら4000万イースはするわよ」

「高っ!?…そんなにキツイ戦いになりそうなんですか」

ロゼさんは肩をグルグル回してストレッチをしている。ぐんにょりとした顔でこちらを振り返ると、


「そりゃ、今までで一番きつい闘いになるでしょうね。『闇堕ち』のせいで何倍にも強力になっている上、神代魔法まで使ってくる可能性があるんだから…しかも今回の目的は消滅させる事じゃない、生きて助ける事。さらに言えば、第四遊撃隊の隊長という強大な戦力を失わないようにしなきゃいけないから、後遺症も残したくない」

「うわぁ…とんでもなくキツそう…」


一瞬の不安げな表情が嘘だったかのように、ロゼさんは直ぐに不敵な顔に戻ると俺に言い放った。

「まあまあ。それで、テスラの役割だけど…有り体に言えば肉壁ね。この中で火力を一番出せるのは私だから、テスラは私に付いて回避不能、防御不能の魔法攻撃を防御するのが役割」

「えぇ…まあいいですけど。そういえばローザさんも無敵スキルがあるんですよね?彼女はどうなんですか?」


「ローザ姉はダメ、『万能防御魔法陣』って言う、この間起きた『現実改変』の対処に必要な魔法陣の構築中だから今回の作戦には参加できない。そんな事より準備はいい?もう皆準備できたみたい」


リィさんは『修羅の道』の中で破壊の限りを尽くしているらしい。それでいて脱出できないあたり、『修羅の道』の恐ろしさを感じるが・・・


中からは確かに爆発音が断続的に聞こえる。…あれ?今悲鳴のようなものが聞こえたような気がする。

「ロゼさん、現実改変が起きた時、リィさん以外に『修羅の道』を使ってた人はいるんですか?」

「いないはず。現実改変が起きた後、リィが崩壊したのを検知するまでに3日かかってるし確実なことは言えないけど…なんで?」

「いや、中で悲鳴みたいな声が聞こえたので」


瞬間、慌てた様子で青い長髪の女性が走ってくる。防衛部の制服の上から長袖の上着を羽織っており、胸にはドでかい勲章が見える。

「ロゼ、中で生命反応が1つ。普通の人間ではないけれど、おそらく瀕死よ」

「え、とりあえず救出!慎重に行きたかったけど、この状況じゃそうも言ってられないわ!!」



時は数日遡り、現実改変が起きるほんの少し前。

リィは34層を突破し、35層へと到達していた。


「…あと15層……私にクリアできる気がしないんですが…」

壁にもたれかかり、荒れ放題の金髪をぐしゃぐしゃと搔く。


「師匠…」

死にかけるたびに脳裏にちらつく師匠、ウィルファナインの顔。

圧倒的な力で敵を滅し飄々と生きる様を頭に浮かべると、いつも得も言われぬ焦燥感が湧き上がる。

「こんな所で負けるわけには…!もう一度、あの悲劇を繰り返さない為に……!」


ロゼが防衛部へと入り、僅か6年で防衛部長まで登りつめた事で、防衛部は大きく変わった。

それまでの防衛部、特に遊撃隊においては死亡率がとても高く、5年で半分以上のメンバーが入れ替わるのが普通だったのだ。


20年前、は家族をすべて喪った。

聞くところによると、教会の記録に残る限り一番の大災害だったそうだ。


A400、つまり外機動隊の班長レベルの人間が400人集まってようやく倒せる、そのレベルの魔王が2体出現したのだ。

高い知能と残虐性を持つその魔王に、教会は歯が立たなかった。

遊撃隊は数人を除いて全滅。死者の数は2000人を超えた。人口の90%以上が殺されたのだ。


6歳だった俺は、いつまでも家の中で両親の帰りを待ち続けたが、幾ら時が経とうとも帰ってくることはなかった。


3日が経ち、家の外へと出て俺は言葉を失った。

内臓がくり抜かれた両親が、軒に逆吊りにされていた。


街の中では、残りの生き残りを探すべく魔王の眷属が闊歩していた。

もはや朧気だが、悍ましい見た目の化物は、ゆっくりと俺を殺すために近寄り、首を掴んで頭を砕こうとしていたことを覚えている。


俺はどうでも良くなって、死を受け入れようとしたとき、

師匠に出会ったのだ。


その後の記憶はほとんど残っていない。

しかし、多くの人間にとって遅すぎたことに悔しがりながらも、遺された人間を一瞬で救っていく師匠の横顔だけは鮮明に覚えている。


『闇堕ち』を安定化させてくれたのも師匠らしい。


だから、俺は師匠みたいに人を護る事ができるようになりたかった。

10年前、防衛部に戻ったが、俺の力では無理だということを知った。


また、部隊の仲間をすべて喪った。


そのときに誓ったのだ。

俺は、一人で全ての人間を護れるようになるまで邁進し続けると。

誰にも明かすことなく、ただ一人で訓練した。


ハイテンションの仮面で自我を守り、人と深い付き合いをしないようになるまでそう時間はかからなかった。


「35層、行くか…」

ぼろぼろの体を引き摺り、一段一段ゆっくり階段を降りてゆく。


その瞬間。

――――『現実改変』が起きた。

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