第30話 克己②
「『≪疑似≫神罰の炎』?何だこのスキル?」
「まあ焦らないの、見てあげるから『情報』」
_______『≪疑似≫神罰の炎』_______
同一スキルの取得ごとにグレードアップされ、スキル後に+値が追加される。『≪疑似≫神罰の炎+5』に達すると、『神罰の炎』に進化する。
『神罰の炎』を持つものからスキルを奪取することでグレードアップし、『神罰の炎+20』になったものは、『炎神』への挑戦権を得ることができ、勝利した場合『炎神』を名乗ることができる(その際、年齢は停止状態となる)。
スキル効果:膨大な魔力を消費する代わりに、同一魔力で放つことができる魔法の数十倍の威力を持つ神属性の炎攻撃を放つことができる。(8時間に1度しか使用できない)
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「えっと・・・前半かなり不穏な雰囲気感じるんだが・・・スキルを奪取とかどういうことだよ?」
「なんかヤバそうなのに巻き込まれてる感じするけど、とりあえず今は後半が重要なんじゃないの?」
顔に苦笑を浮かべ、いつものように白い髪を指でくるくると弄りながらヴェルが言った。
「とはいえ、シーリン術式による変換は魔力にカウントされるのか?」
「即発動ってわけでもなさそうだし、やってみるだけやってみたらどうよ?」
一理ある。とりあえず集中して周辺の物質をどんどん魔力に変換してゆく。
普段のように一点に魔力を集中させることなく、全身に万遍なく魔力をなじませ、体内にさらに魔力を流し込んでいく。
「ちょ、ちょっとテスラ?大丈夫なの?なんか全身が蛍光色の黄緑になってきたけど!?」
目を瞑っていたため気づかなかったが、まさかそんな状況になっていたとは。
「別に体に異常はないぞ?むしろめちゃくちゃ快調だ」
「い、いや・・・見ててめっちゃ怖いんだけど。これじゃ足りなさそうなの?」
不安げに両手を合わせ見上げてくるヴェル。こういう顔をしてる時は可愛いのに・・・
ん?
こいつが素直じゃなかったときなんか存在したっけ?
「ちょ、ちょっと無視しないで!ほんとに大丈夫なの?」
「あ、ああ。特に問題はないよ。でも魔力は全然足らないわ、これの3倍くらいはいるかな」
「う~ん、それなら私の増強魔法でどうにかなりそうね。あとは発動までどれくらいの時間がかかるか」
「多分、3分は最低でもかかる。だからその間は耐えないといけない」
「う~ん、むずかしいわね・・・」
〇
ところ変わって、教会のオリガミ研究部。
ジンが一人でテスラのオリガミの再解析を行っていたころ。
「おつかれ!はいこれ、差し入れ」
手を挙げて入ってくる赤髪の女性。ロゼである。
「なにか面白いこと分かった?」
「ああ、わかったぞ。今までのチンケなオリガミとは格が違う。というかテスラ少年にはまだまだ多くの謎が隠されていそうだ」
「謎、ねぇ・・・確かに教会の管轄内に侵入した形跡はないし、まず第一に防衛部内機動隊も外機動隊も気づかないはずないしね」
ジンが作業する隣の机の上に座ると、足をぶらぶらさせながらロゼが言う。
瞬間、鳴り響くサイレン。
「敵襲?ジン、下がってなさい」
咄嗟に机から飛び降りると、全身の神経を尖らせ殺気を放つロゼ。
「そうピリピリするな防衛部長サン。これはただのオリガミ検知サイレン・・・で・・・」
「オリガミ検知ッ!!!????ど、どこでだッ!?」
机に頭を突っ込む勢いで着席すると、顔がめり込むほど近づけて鬼気迫った様子で装置を操作し始める。
「見えたッ!ロゼ、この位置どこか分かるか?」
印刷された紙を勢いよく突きつけるジン。あまりにも強く持ちすぎて端がクシャクシャになっている。
「う、嘘、この場所、『修羅の道』克己の16層よ…」
「少年が2つもオリガミを持ってるとは考えづらい、前に観測した巨大な魔力反応と何らかの関係があるとみて間違いないだろう」
「本当は利用中は入れないんだけど、仕方ないわね。回収に行くわよ」
「助かる・・・『転移』は俺が使おう」
〇
16層『忍耐の間』。
真っ白な部屋の隅に、橙色、四つ折りのオリガミがひっそりと落ちていた。
白い手袋を付けたジンがゆっくりと拾い上げ、透明な袋に丁寧と仕舞う。
瞬間、帰還。
そして数十分後。
顔面蒼白なジンが結果を印刷された紙を持ってやってきた。
「ちょ、どうしたのよ!?」
「このオリガミ、今まで見たもの中で最も格が高い。そして効果がマズい。今すぐ手を打たないと・・・」
「早く言いなさいよ」
「『現実改変』。なかったものをあったものにしたり、その逆を行う力だ、怖いのは俺らが変化を認識できない点にある」
「い、今すぐローザ姉の『不変』を起動して少しでも食い止めなきゃ・・・」
「その必要はない。もう既に手は打った」
赤い長髪の女性。教会長・ローザである。
「少なくとも、教会内でこれ以上改変が進むことはない、ただ、外の世界は・・・さすがの私も無理だ」
「いえ、十分ですよ。あとは万能防御魔方陣を起動させておきましょう」
「ジン、それは私がやるわ」
「ロゼがやってくれるなら助かる・・・分析を再開しなければ」
「ジン、ロゼ、ところでテスラ少年が20層のボスを追いつめているように見えるが?」
同時に椅子を蹴り、モニターを見つめる2人。
「待って、このボスって・・・」
唖然とするロゼ。
「確か、『その人が一番強いと思っている人間』だったか?ロゼが出てきてクリアできるのか?」
「ぜ、絶対無理よ!むしろ出力上限的に『致死判定』に不具合が出るかもっ!?」
慌てふためくロゼ。瞬間移動で20層へと向かう。
「ちょ、教会長すみません、俺も追いますッ」
残されたローザはひとり呟く。
「ふむ、私は確かに『少年が追い詰めている』と言った筈だが・・・」
〇
扉を開け、突入する二人。
見たものは、地面を覆う超巨大な虹色の魔法陣と、極彩色の翼をはためかせる白髪の少女。
「『形態;熾天使』!!キメなさい、テスラッ!!」
「『不浄の地に巣食う罪超越せし炎よ!斎戒沐浴、ここに神罰、顕現せり!『≪疑似≫神罰の炎』ッ!!!!」
炎の奔流が視界を埋め尽くしてゆく。それはさながらかの大洪水のようで・・・
そしてその光が収まると、そこにはボスとしてのロゼが立っていた。
「う、嘘だろ・・・これで倒せないのかっ!?」
絶望に満ちた声を出すテスラ。しかし、そのロゼはゆっくりと膝をつく。
『は、はは、私の負けよ。いくらオリジナルより数段弱いとは言え、私が負けるなんて思わなかったわ・・・』
地面に寝転ぶと、ゆっくりと青白い光となって消えていった。
「「やったッ!!これでクリアだ!!」」
手を叩いてはしゃぐテスラとヴェル。
これにて修羅の道『克己』コンプリートだ。
「あ、あの技を・・・テスラ少年が・・・?」
「わ、私の施設、強すぎ・・・?」
思わず声を漏らすロゼとジンであった。




