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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第2章 防衛部はじめました
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第27話 転換点

「クソ、ダメだ。完全に古精霊からの通信が切れた」


結われた鮮やかな金髪を乱暴にほどき、机を叩く『人界神』ウィルファナイン。

「落ち着きなさいよ、というかどうしてそこまで拘るのよ」

「そうそう!もうボクの弟子のことは諦めなさいよ?」


不思議そうに首をかしげる『獄界神』ヘンジと『魔界神』マイナ。

その2人に対し、苛立ちすら秘めた声でいい放つ。


「その少年は魔力を持っていない可能性が高いんだ!この稀有な人間を監視せずにどうする!世界が変わるんだぞ」


「「??????」」

「分からないのか……いいか、今でこそ魔力はあればあるだけいいと言われているが、本来はそうじゃない。」


さらさらと紙の上に図を描いていく。


「人間が持つ魔力は『生命活動で生じた余剰エネルギー』だ。もうここまで言えば分かるな」

「つまり…生命活動で無駄なエネルギーを生じさせてないということ?」

「?」


何やら理解した様子のマイナと、未だに状況が読めないヘンジ。

「最も簡単に言えば、『無駄のない完璧な人間』というわけだ」

「!!!!わかったわ」


「問題はどう監視するかだ…魔力による探知ができないからなあ…」


「ジン、テスラの調子はどう?」

モニターに映った文字をカリカリと紙に書き写していたジンに、ロゼが声をかける。

眼鏡を取って机に置き、カタカタと何かを手元の端末に入力すると、テスラの情報が現れた。


「ふむ、テスラ少年は18層を突破し、遂に最深部19層の攻略に入ったようだ。あと2層だな」

「はぁ!結構早いわね、1か月でそこまで到達するとは思わなかったわ」

ぽりぽりと頭を掻くジン。

「おかしいな、想定では現在11層攻略中くらいなんだが...ん?なんだこの反応は」

スッと指さすジン。16層に、大きな光の点が映っている。


「何この巨大な魔力反応!私、ほかの誰にも使用許可出してないわよ」

「早い踏破ペースを保っている理由はこれか?しかし説明がつかない」


二人して悩むジンとロゼ。しかし結論は出ないままであった。


「だらっしゃーーーーーーッ!!!まどろっこしい、全部ぶっ壊してやるわ!!」

『アナウンス、不正な破壊行為が発見されました。16層をリセットします』

「あああああーーーッ!!もうやだやだやだ!!!」


頭を乱雑に掻き、ペタリと座り込むヴェル。艶のある銀髪は好き放題に跳ね返り、頬はこけている。

「8時間じっとしてるだけの試練なんておかしいでしょ!力だけならどうとでもなるのにっ!!」


16層『忍耐の間』。2メートル四方の真っ白な部屋に8時間じっとするだけの簡単な試練である、はずなのだが...

「無理無理、大体そんな無駄なことなんでしなきゃいけないのよ!!おかしい、絶対テスラもクリアしてないわ。うん、きっとそうよね」

息を吸って落ち着くヴェル。着ている白灰色パーカーのファスナーを口元まで上げ、じっと目を瞑り耐え始める。


(...無理!!何か抜け出す方法はないかな、私ができることは...)

「わかった!!!」

『アナウンス、不正な移動が発見されました。16層をリセットします』

「ふん、今はいくらでもリセットするがいいわ!せっかくの天界学校限定パーカーを失っちゃうのは勿体ないけど」


バッと両手を広げ、目をかっぴらくと全身が炎に包まれ、純白のワンピースに身を包んだヴェルが現れる。

「主席の実力見てなさい、「≪我は幽玄にして偏在するもの・肉体の頸木より解き放たれん・『幻体化ヴィード』≫」


体から光の粒子が溢れだし、透明度が上がっていき、最終的に視認できる限界まで薄くなるヴェル。

そのままゆっくりと摺り足で歩き出し、その白い壁を通り抜ける。


「『解除』」

一言呟くと透明度が元に戻る。踵からカタン、と着地すると静かにガッツポーズをとった。

そのまま17層へと消えていく。



白い部屋には、橙色の()()()()が残されていた。


腑抜けするほど簡単な11層以下を抜け、19層へと向かう。

「ここからは戦闘が再開されるらしいからな...気を引き締めていこう。ヴェルとの合流は...諦めるしかないか」


10層で感じた威圧感よりさらに肌に刺さる、棘々しい殺意。気を失いそうになるのを必死でこらえ、唾をのみ、右手に剣を構えてドアを開く。


『...来たようだな』

燕尾服に山高帽。右手にステッキをもった長身の男。

「...なんで俺の声なんだ」

震える声を押し殺し尋ねる。


『私は貴様のコピーとして調整されている。しかしすべて貴様より秀でている。具体的には20%くらい』

「最後の説明いるかな!?」

『そりゃ、どれだけ強いか分からなかったら戦いづらいだろう』

「案外優しいなっ!?」


ちっ、恐れて損した。こいつも教会の人間らしい匂いがプンプンするぜ。

『あ、ちなみにもう少し説明しておくとだな。私は挑むたびに貴様の1.2倍強くなるからレベル上げには最適』

「...自分で言っちゃうんだ...もう良い、戦おう」

『その自信、いつまでもつかな?』


「先手必勝、≪灰燼かいじんと帰せよ≫・シーリン術式・≪上位火球エピスタティック・ファイアボール≫!!」

『ふん、≪灰燼かいじんと帰せよ≫・シーリン術式・≪上位火球エピスタティック・ファイアボール≫』


ほぼ同時に呪文を唱え、相手にまっすぐ飛来するそれぞれの炎。中心でぶつかり合って大爆発を起こし、その爆風はテスラ側に大きく流れた。


「!?そ、そうか、1.2倍か...案外つらいな」

『もう音を上げるのか?恐ろしく軟弱よ、とくと≪見よ≫』

ステッキを振りかざし、現れる3本の閃光の槍。最後の2文字だけで呪文の詠唱を代用したのだ。


「シーリン術式・八画赤珠方...間に合わねえっ」

防御する魔法陣の展開を放棄し、素早く頭を下ろす。


『続けていくぞ!』

ステッキをたたくとテスラのものと同じ大きさの剣に変化する。右深くに剣を据え、鋭く突き出される剣。

だめだ、見切れない。内心で毒づき、大きく剣を左へ払ってなんとか弾く。


「その剣、重すぎるだろッ」

『剣ではなく、技が重いのだ。見切って俺を超えて見せろ』


ちっ、この手は通用するか?

「シーリン術式・『付与』<炎上>」

相手に聞こえないように剣に魔法を付与する。銀色の剣が紅色に染まる。

一気に地を蹴り、猛突進。


「はあああああああああああ―――――――ッ!!!」

『むぅッ!?馬鹿正直に突っ込んでくるだとっ!?』

一瞬反応が遅れたが、しっかりと剣で防いでくる。それが狙いだ。


「燃えろおおおッ...!!」

重なり火花を散らす剣。その瞬間、付与されていた炎が大きく立ちのぼり、炎の柱に取り込まれる相手。

よし、やったか!?


『...フハハ、劣化オリジナルの分際でよくやる。しかし貴様はどうやってもこの俺に倒される。なぜなら1.2倍貴様より強いのだからな』

無傷で手を振って登場する。ありえないだろ...あんな至近距離で当てたのに無傷とは...


「…だったら、お前との戦いで1.2倍以上成長して見せる!さあ、来いッ!」

一瞬驚いた表情を見せた男は、そのあと満足気に不敵な笑みを浮かべる。


『いい、良いぞ!俺もただで越えさせる気はないが、その意気は買ってやる』


複雑に連続で交錯する二つの剣筋。戦いはまだ続く。



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