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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第2章 防衛部はじめました
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第26話 怠惰なヴェル

風呂から上がって(ヴェルは浴衣を着せて部屋に転がしておいた)部屋に戻ると、すでに料理が用意されていた。

ここにきてから一回も人を見ていないことに一抹の不安を覚えるが、まあおいしそうなのでいただこう。

刺身がメインの夕飯。いったいこの魚はどこで取れたものなのだろう?


一口運ぶ。

「う、うまッ!?」

魚がものすごく新鮮だ。炊き立ての白米とよく合う。


それから俺は無心で飯を貪り続けた。


しばらくして。

「ふぁー、満腹だ。これで明日からも頑張れる」

装備を整え、もう一度風呂に入るか寝るかを検討していた時。


バァン!

扉が強く開け放たれて、ヴェルが入室してきた。

「なんだ、明日も早いんだから休んだほうがいいんじゃないのか?」

「は?夜はまだまだこれからでしょ、トランプやるよ。やり方分かる?」


トランプ?聞いたことがない。なんだそれは?

「とりあえず神経衰弱でもやるわよ」


「う、負けた...ヴェル強すぎやしないか」

「ふん、私の記憶力を舐めないほうがいいわよ」


結果俺は最初のまぐれ当たりの2枚以外、すべてヴェルに取られてしまった。いったいどんな裏技を使っているんだ?

「じゃ、次はダウトでもやるわよ」


時間は経つ。

「も、もう一回!次なら勝てそうな気がするんだ」

「何回やっても結果は同じよ」


時間はさらに経ち...

「いよっしゃッ!!勝った!」

「わ、私が負けるだなんて...再戦よ、負けっぱなしじゃ黙ってられないわ」


そして空が明るみはじめ...

「…ぐぅ」

「………」


「はっ!!今何時だ」

時計を見ると午後2時を指示している。なんて時間まで寝ていたんだ。

今日こそ攻略に戻らなければ。ヴェルは...


『温泉に入ってきます。上がったら卓球するから準備してなさい』


書置きが残されていた。

「まあ、今日くらいはいいか」


次の日。

「カラオケがあるらしい、行くよテスラ!!!」

「ちょっ、手を引っ張らないで!あと攻略に戻りたいんだけど!」


その次の日も。

「今日は釣りに行くよ!!」

「ちょ、攻略」


さらに次の日も。

「今日は疲れたからゆっくりする」

「あの...攻略」


そして1週間が経った。

奴は攻略といってもついてこない。ならもうからめ手で行くしかない。


「ヴェル、今日はちょっと連れていきたいところがあるんだ。泊まり込みになるから荷物をすべて持ってきてくれ」

「全部?わかったわ」


よし。奴はもう頭がハッピーな状態なので正常な思考が残っていないのだ。この方法はいつか使えるかもしれんし覚えておこう。


「持ってきたわよ」

「よし、行くぞ。秘密にしたいから目を瞑ってついてこい」


うん、と頷き手を差し出してくるヴェル。

「目を瞑ってたら見えないから、連れてって」

「あ、ああ、うん」


落ち着け、たかが手を握るくらいだろう?そう、こいつは外見こそ最高だが性格が悪いから!

しかし今のヴェルはえらく素直だ。なんでこんなに変わったんだ!?


「ん?行かないの?」

「いいいい行くぞ!」

パシッと手を握って歩き出す。暖かくボヤボヤとした空気から一転、11層に入ると頬を刺すような鋭い風が吹いてきた。


「あっ、私は何を?」

「気づいたか。10層の休憩所に入ってから1週間、攻略に戻ろうとしないから無理やり連れてきてしまった。悪かったな」


目をぐるぐると回すヴェル。未だに状況が掴みきれていない様子だ。


「待って、私10層攻略してから………あぁぁっ!?」

「思い出したみたいだね」


頭を抱え叫ぶヴェル。こいつプライド高そうだし自分の醜態をさらしたと思っているんだろう。


「ああああーーっ!」

「ちょっ!やめろ!」


ヴェルは絶叫して激しく頭を壁に打ち付け始めた。額から流血している。

「…忘れなさい」

「はい?」


ズイッ。肩を掴まれひきよせられる。

「忘れて」

「はい?」


今度は胸ぐらをつかまれる。

「ちょ、ぐるしいうぐっ」

「忘 れ な さ い」

「あっはい」


こいつは怒らせてはいけない人種だな…死ぬかと思った。

「さあ、11層にいくわよ…ん?」


ヴェルが石の壁に張られた紙に気づいたようだ。


---------------

『11層・怠惰の間』クリアおめでとう。幻惑の魔法および最高の環境を出てくるとはなかなかの精神の持ち主だ、評価しよう。


しかし『克己』はここで終わりではない。ここからは一人で自分の内面に向き合ってほしい。


ここから下の層では戦闘能力ではなく、精神を鍛える物だ。

今まで腕っぷしのみで戦ってきた人間、精神が弱い人間は厳しい戦いになるだろう。


防衛部 ロゼ

---------------


「…まあ、魔法で操られてたならしょうがないわね」

ふんす、息をはき髪をかきあげるヴェル。目には光が戻っている。


「俺が操られていないという事実から目を背けるなよ…」

一人呟いた。しかし、精神を鍛えるか。


「どんな敵が来ても捻り潰してやるわ」

ドヤ顔でサムズアップするヴェル。

溜め息をつく俺。

(こいつが心配だなあ…)


虫に刺されて死ぬほど虚弱体質となった自分がいつしか他人を心配していることを、まだテスラは気づいていない。

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